印象的な眼光の少女だった。
泥で汚れた頬と唇の柔らかさは、見ているだけで十二分に伝わってくる。
黒く長くまっすぐ伸びた髪の艶は、荒野の砂塵に塗れても褪せる事がない。
ウェディングドレスに隠れた四肢は、いっそ折ってしまいたい程に細い。
人間味から隔絶した人形のような、だからこそ魅了されないでは済まない少女が、戦場のド真ん中に立っていた。
爆破する大地、
爆破する車両、
入り乱れ吹き飛ばされる数十の人影、
しかし、炎に焼かれ、爆煙に数十メートル吹き飛ばされながら、全ての者達が立ち上がってなお、ある一つの光目指して駆け抜けていく。
抉れる荒野、
粉砕する崖、
圧倒量の砂塵に日の光が隠れる、
この生身の人間ならばとっくに激死している状況を駆け抜けるタフな奴等。昆虫の複眼のように巨大な両眼、金属の光沢を帯びたフルヘルメット、いやあえてマスク(仮面)と呼ぼう、に同じ光沢のスーツを纏った無敵の存在。「ライダー」と呼ばれる者達。
無敵な奴等が集まって、少女を光から守ろうと爆走し爆撃し爆蹴する。
二輪に跨る者、
宙を舞う者、
駆ける者、
巨大な龍の頭に乗る者すらいる。
だがそれら全てが光の前に達した直後、一条のビームを喰らい、
撃破され、
撃沈され、
撃墜される。
見渡す限り満ちていたライダー達が、瞬時の内になぎ倒され、代わりに荒野には見渡す限りライダーの死体が折り重なり、あたかも沼か海のようにうねりのある大地が広がる。
いやぁぁぁぁぁぁ
荒野に立つのは少女1人、
その圧倒的な命の喪失に絶叫した。
「オレと共に行こう。」
少女の眼前にマゼンダの光、
光が逆光となってその者のシルエットだけが見える、
少女を誘うシルエット、
少女は、なぜかその恐るべき虐殺者の姿に、凛々しさを感じた。
「ディケイド」
少女は、その者を知っていた。
(続く)
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