「士クンが、ディケイド。」
壁を取っ払って夏海に近づくディケイド。なぜか夏海は後退りした。
「どうした、」
ディケイドは消え去りながらも気配を消していないワームの存在に警戒して右腰に装着されたブッカーを取り出す。ブッカー底面に折りたたまれているグリップを伸ばし、ブッカー斜め方向に畳まれているアンテナのような細い突起もまた伸ばす。剣状になった。これが「ソードモード」。
刃側を掌にのせて流し、その金属の響く高音を堪能するディケイド、夏海の不可解な態度に戸惑う。
クロックアップするワーム、
つむじ風がディケイドを横切ったかと思いきや、ディケイドの胸装甲に真新しい傷が。3体のワームが見えない速度、正確には自身の相対的な時間を遅らせて攻撃を仕掛けてきた。ディケイドはしかし、その見えない敵を捕らえ切っている。
「ちょこまかと。」
ディケイド、カードを1枚取り出す。先のディケイドカードと同じ『カメンライド』の『カブト』のカード。やはり同じくバックルへ装填。
『KAMEN RIDE KABUTO』
ディケイドの姿が、頭部の一角が特徴的な真紅の「仮面ライダーカブト」の姿になる。さらに1枚取り出すディケイド-カブト。
『ATTACK RIDE CLOCKUP』
ディケイド-カブトもまた見えなくなる。いや自身の時間を遅らせて高速運動に入る。
ビルの壁が壊れる、
街路樹が倒れ葉が拡散する、
だが時間が遅滞する世界では、その落下はスローモー、
ゆっくりと落ちかける瓦礫と葉を掻い潜ってカブトとワームが火花散らす、
高速で動くワーム、それよりもさらに疾く動くディケイド-カブト、瞬く間にブッカーソードで3体のワームを切り倒していく。
爆裂する緑の炎、
それはワームの命が尽きた証、
確実に3つの炎を起こしたディケイド-カブト、先と同じくブッカーの刃先を掌でなぞって金属同士の擦れる音を出す。
「なんで、オレ」
事が終わるとバックルより射出される『カメンライド-カブト』カード。手に掴むディケイド。
「このカードを選んだ・・・、オレは戦い方を、こいつの使い方をどうして知っている・・・」
カードのカブトのマスクが朧気に消える、
「ん?」
カードから力が失われた現象だと直覚するディケイド。が故になぜ力を失ったのか訝しんだ。
「ディケイド・・・」
背後にいつのまにか立っている夏海。
「さっきから、なんでその名を知っている?」
首を横に振る少女。少女自身何が何だか分からない気持ち、不安だけをディケイドも察した。
そこへ新たなオーロラ、
「夏海!」
咄嗟に手を掴むディケイド、
共に壁を透過する2人、
今度の世界は、元いた公園のなれの果てだった。今は親子連れも、鳩も、あの3人組の死体までも転がり、車が横転し、煙が吹き、家屋も崩れ落ちている廃墟そのものだった。ただ1つ、1台のバイク、士の愛用のDN-01が真新しい質感でスタンドがけして停車していた。
灰となって崩れる兄貴味噌、
「ひどい・・・・」
「この世界の終わりという奴だ。」
だが弟塩と愛人は立ち上がって、目元が青白く輝きながら異形『オルフェノク』へと姿を変えた。
「こないで、」
咄嗟に逃げる夏海はしかし、変身したラビットオルフェノクに捕まる。
『KAMEN RIDE FAIZ』
その時ディケイドはカードを装着、ディケイド-ファイズへ変身。
『ATTACK RIDE AUTOBAZIN』
ディケイド-ファイズ、愛車のDN-01に前から後ろへ光が流れて超変形、バイクより人型になる強力な自立AIロボ「オートバジン」へ。
変形したオートバジンは飛翔、オルフェノクを払いのけ、夏海を抱えて空へ逃げる。
『ATTACK RIDE SPARKLE CUT』
夏海を追おうとするラビットオルフェノクとオクラオルフェノク、
ディケイド-ファイズが未だ手にしているライドブッカーソードが、ファイズエッジへと姿を変え、クリムゾンの光を帯びる。
「やあ」
2条の軌跡が2体のオルフェノクに重なる、
浮かぶファイズマーク、
一瞬で灰になって崩れる2体のオルフェノク、
「破壊者・・・・」
ディケイドに戻り、夏海を掴んでいたオートバジンもまたDN-01に戻る。
ディケイドは、またしてもファイズのカードが力を失うの様を眺めながら、変身を解こうとする。しかし、
巨大な怪獣、
それは「魔化魍」オオアリ、
民家に突進し、電信柱を切断してガススタンドに火災、
飛来する同じく巨大な寸法のイッタンモメン、
ビルに突っ込んで倒壊させ、仰く翼の風圧で民家をめくり上げていく、
「これもライダーの世界なのか。」
ディケイドは新たなカードを取り出す。
『KAMEN RIDE HIBIKI』
『仮面ライダー響鬼』の独特の光沢に全身を包むディケイド-響鬼。
『ATTACK RIDE ONGEKIBOO REKKA』
その両腕には既に特有の『音撃棒』が2つ握られている。
「はぁ」
火の玉を吹く音撃棒、
ガガガガガ
キィィィィ
カードに封じ込められた音エネルギーの火の玉は、十メートルあるという魔化魍群を一瞬で消し去る。
「どうしてだ。力が長く続かない。」
響鬼のカードもまた力を失い、ディケイドは元の姿に戻る。
「それは、君がかつて全てを失ったからだ。」
あの時の、影の男の声が突然ディケイドの耳に届く。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿