2010年5月14日金曜日

0 見初められた女 -旅立ち- その6

「士クンが、ディケイド。」




 壁を取っ払って夏海に近づくディケイド。なぜか夏海は後退りした。



「どうした、」



 ディケイドは消え去りながらも気配を消していないワームの存在に警戒して右腰に装着されたブッカーを取り出す。ブッカー底面に折りたたまれているグリップを伸ばし、ブッカー斜め方向に畳まれているアンテナのような細い突起もまた伸ばす。剣状になった。これが「ソードモード」。

 刃側を掌にのせて流し、その金属の響く高音を堪能するディケイド、夏海の不可解な態度に戸惑う。



 クロックアップするワーム、



 つむじ風がディケイドを横切ったかと思いきや、ディケイドの胸装甲に真新しい傷が。3体のワームが見えない速度、正確には自身の相対的な時間を遅らせて攻撃を仕掛けてきた。ディケイドはしかし、その見えない敵を捕らえ切っている。



「ちょこまかと。」



 ディケイド、カードを1枚取り出す。先のディケイドカードと同じ『カメンライド』の『カブト』のカード。やはり同じくバックルへ装填。



『KAMEN RIDE KABUTO』



 ディケイドの姿が、頭部の一角が特徴的な真紅の「仮面ライダーカブト」の姿になる。さらに1枚取り出すディケイド-カブト。



『ATTACK RIDE CLOCKUP』



 ディケイド-カブトもまた見えなくなる。いや自身の時間を遅らせて高速運動に入る。

 ビルの壁が壊れる、

 街路樹が倒れ葉が拡散する、

 だが時間が遅滞する世界では、その落下はスローモー、

 ゆっくりと落ちかける瓦礫と葉を掻い潜ってカブトとワームが火花散らす、

 高速で動くワーム、それよりもさらに疾く動くディケイド-カブト、瞬く間にブッカーソードで3体のワームを切り倒していく。



 爆裂する緑の炎、

 それはワームの命が尽きた証、



 確実に3つの炎を起こしたディケイド-カブト、先と同じくブッカーの刃先を掌でなぞって金属同士の擦れる音を出す。



「なんで、オレ」



 事が終わるとバックルより射出される『カメンライド-カブト』カード。手に掴むディケイド。



「このカードを選んだ・・・、オレは戦い方を、こいつの使い方をどうして知っている・・・」



 カードのカブトのマスクが朧気に消える、



「ん?」



 カードから力が失われた現象だと直覚するディケイド。が故になぜ力を失ったのか訝しんだ。



「ディケイド・・・」



 背後にいつのまにか立っている夏海。



「さっきから、なんでその名を知っている?」



 首を横に振る少女。少女自身何が何だか分からない気持ち、不安だけをディケイドも察した。



 そこへ新たなオーロラ、



「夏海!」



 咄嗟に手を掴むディケイド、

 共に壁を透過する2人、



 今度の世界は、元いた公園のなれの果てだった。今は親子連れも、鳩も、あの3人組の死体までも転がり、車が横転し、煙が吹き、家屋も崩れ落ちている廃墟そのものだった。ただ1つ、1台のバイク、士の愛用のDN-01が真新しい質感でスタンドがけして停車していた。



 灰となって崩れる兄貴味噌、



「ひどい・・・・」



「この世界の終わりという奴だ。」



 だが弟塩と愛人は立ち上がって、目元が青白く輝きながら異形『オルフェノク』へと姿を変えた。



「こないで、」



 咄嗟に逃げる夏海はしかし、変身したラビットオルフェノクに捕まる。



『KAMEN RIDE FAIZ』



 その時ディケイドはカードを装着、ディケイド-ファイズへ変身。



『ATTACK RIDE AUTOBAZIN』



 ディケイド-ファイズ、愛車のDN-01に前から後ろへ光が流れて超変形、バイクより人型になる強力な自立AIロボ「オートバジン」へ。

 変形したオートバジンは飛翔、オルフェノクを払いのけ、夏海を抱えて空へ逃げる。



『ATTACK RIDE SPARKLE CUT』



 夏海を追おうとするラビットオルフェノクとオクラオルフェノク、

 ディケイド-ファイズが未だ手にしているライドブッカーソードが、ファイズエッジへと姿を変え、クリムゾンの光を帯びる。



「やあ」



 2条の軌跡が2体のオルフェノクに重なる、

 浮かぶファイズマーク、

 一瞬で灰になって崩れる2体のオルフェノク、



「破壊者・・・・」



 ディケイドに戻り、夏海を掴んでいたオートバジンもまたDN-01に戻る。

 ディケイドは、またしてもファイズのカードが力を失うの様を眺めながら、変身を解こうとする。しかし、



 巨大な怪獣、

 それは「魔化魍」オオアリ、

 民家に突進し、電信柱を切断してガススタンドに火災、

 飛来する同じく巨大な寸法のイッタンモメン、

 ビルに突っ込んで倒壊させ、仰く翼の風圧で民家をめくり上げていく、



「これもライダーの世界なのか。」



 ディケイドは新たなカードを取り出す。



『KAMEN RIDE HIBIKI』



 『仮面ライダー響鬼』の独特の光沢に全身を包むディケイド-響鬼。



『ATTACK RIDE ONGEKIBOO REKKA』



 その両腕には既に特有の『音撃棒』が2つ握られている。



「はぁ」



 火の玉を吹く音撃棒、



 ガガガガガ

 キィィィィ



 カードに封じ込められた音エネルギーの火の玉は、十メートルあるという魔化魍群を一瞬で消し去る。



「どうしてだ。力が長く続かない。」



 響鬼のカードもまた力を失い、ディケイドは元の姿に戻る。



「それは、君がかつて全てを失ったからだ。」



 あの時の、影の男の声が突然ディケイドの耳に届く。



(続く)

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