2010年8月18日水曜日

1 クウガの世界 -超絶- その2

警察が対策本部総員かけて車両によるバリケードを作る。


未確認はこの警察車両を片腕で持ち上げる事ができる。油断は出来ない。拳銃で威嚇しつつ誘導するしかない。拳銃を撃つという事は市民がいない事が前提となる。避難させつつ、対手を誘導しなければならない。決定的な打撃力を警察自身が持っていない事が悔やまれる。端的に言えば、現場責任者の臨機応変な判断力が問われる。そのポジションを任されている者こそが、長野より対策本部に引き抜かれた八代藍である。



「4号が現れた。例の場所は、封鎖してある?」



「はい八代警部補。しかし4号が我々の思う通りに動くとは、」



丸棒の警官に気まずい顔をする八代は、切り返して威圧的な態度になった。



「彼は味方よ!それより7号はどうなの!」



7号と呼ばれる未確認「メ・ギャリド・ギ」は、女性警官を1人絞殺、同行婦警の通報を受け対策本部と所轄が包囲して車両で進行を妨害、誘導し、廃倉庫にまで追い込む。

八代は、ここまでのお膳立てをして、「クウガ」に後を任せるつもりだった。







未確認7号は最初の婦警を含めて警官3人を殺害、12人に負傷を与え、パトカーを1台大破した。



「姐さん」



ユウスケ、は警官の中心にあって陣頭を指揮する八代をそう呼んだ。

警官全員7号の方に注視して、ユウスケが駆けてくるのに気づかない。



「変身!」



ユウスケの腰に「アマダム」が浮かぶ。体組織が変貌していき、胸、脛、腕、肩などが紅く硬質化、クワガタのようなマスクが纏われ、ここに「仮面ライダークウガ」=未確認4号へと変身する。



一跳躍、



「4号だ!」



「紅い2号だ!」



「クウガ!」



バリケードを飛び越えるクウガ。7号に踊り掛かり対手の腕を放さず拘束、ジリジリとある方向に背を向けさせ、手を離して即座にドロップキック。壁に穴を空けて7号が飛ばされたのは倉庫の中。今は所有者がおらず、荷物もない、泥と埃が充満する日の差さない倉庫。



「上にも敵がいるわ!対手に付き合わないで、身軽に動いて!」



その権限で自分以外の警官全てを倉庫の外の包囲に回した八代は、クウガへも変わらないテンションで命令を与える。クウガは序盤のキックで優勢に立ったものの、突進した途端逆撃を食らい、ギャリドの攻撃に圧されている。

八代は、クウガと7号の頭上には別の未確認、即ち8号が様子を伺っているのを見逃していない。八代もクウガも、そのカラスの翼を持ったグロンギを「ラ・ドルド・グ」という事を知らない。



「分かってるよ姐さん!」



そんな八代の言う事に素直に応じるクウガは、コンクリート上に落ちているモップを一本、脚で掬い上げて手に掴む。



「超変身!」



『クウガドラゴンフォーム』、青い姿にチェンジしたクウガは、モップも又『ドラゴンロッド』に変形させた。

足腰を強化した青の力で素早く回り込み、得物のロッドでやや開いた間合いから伐つ。

そんな戦いを頭上から眺めていた7号、クウガドラゴンのロッドが伸び切った瞬間を狙って急降下してきた。

だがクウガは既にそのタイミングを読んでいる。7号を推し飛ばしたロッドで一旦地面を叩き、反動で頭上から降ってくる8号を横薙ぎする。



「あれがクウガ。」



100メートル四方の広大なコンクリートの屋内。2体の怪物の戦いを、クウガが空けた鉄板の穴から眺めるのは警官-士。警官の姿になってもなぜかあの2眼カメラを首からぶら下げており、さっそく戦いを撮り始める。



「それは何?私物?後退しろと命じておいたはずよ!」



誰が見ても怪しい警官-士に気づいて当然のように怒声で反応する八代。



「仮面ライダークウガ、戦闘に合わせてフォームチェンジ、周囲の物体を武器に出来る・・・、ところで1枚。」



と八代を煙に巻こうとする警官-士。

八代はこの手の男に慣れているのか、やや怒気を納めて無言で対手のペースに巻き込まれないように務める。優先事項のクウガへと視線を向けた。



「おりゃ!」



横飛び一撃、

ロッドのリーチで2体のグロンギを翻弄していたクウガ、囲まれた状態から抜け出るや否や7号に一足飛びでロッドを突く。クウガを象形した‘刻印’が7号、メ・ギャリド・ギの胸に浮かび、エネルギーが腰の丹田、捲かれたベルトのバックルまで達し爆破。



ゴドゲデギソソ



至近にあった8号がその爆破に巻き込まれ血を流して負傷。不利を悟ってか飛翔し、倉庫の天井を突き抜けていく。



「ユウスケっ、使いなさい!」



八代は携行していた拳銃をクウガに投げた。



「サンキュー姐さん!」



7号が空けた天井の穴を自慢の青の跳躍力でひと飛び。



「超変身!」



青空の元へ踊り出たクウガ。体色を青から緑、『クウガペガサス』へフォームチェンジ。そして八代から貰った拳銃もまた『ペガサスボウガン』へ。



「拳銃を投げた。つまり奴は民間の人間か。」



「言いふらさないでよ。」



八代はそう士に警告し屋上へ階段から回り込んでいった。やや八代の目つきに威圧された警官-士は余裕を装って口元を綻ばせ、空いた穴を眺めやり、そしてある方向の人影へと視線を向けた。



「君はクウガと同じ臭いがする。ドブ臭い。」



人影、白いスーツに身を固めた青年も子供じみた笑顔を警官-士に向けた。いつのまにか倉庫内に立ち尽くしていた青年は、あるいは実体の無い陽炎のようなものなのではないかとすら思える。



「そう言うおまえもグロンギの臭いがするぞ。」



警官-士も白いスーツの男も、不敵な笑みで互いを威嚇する。



「‘ゲームの為のゲーム’で、つまずく事はできない。」



「取りあえず1枚、」



警官-士はふざけて2眼を向けた。ファインダーから覗いて、白いスーツの男を被写体に捉える。ファイダーをシャッターが塞ぐ。再び開くと、既に白いスーツの男の姿は無い。



「ゲームの為のゲーム、か。」



事態に置いていかれている感の士、それでも余裕を保っていた。少なくとも体裁は。







射貫く!



「ギャ」



爆破!



八代が屋上に上がった時には既に決着がついていた。飛翔し逃亡を図る8号ラ・ドルド・グの逃げ足はマッハを越えていた。しかしそれを射貫いたペガサスボウガンの刻印エネルギーは、音速を凌駕していた。



「姐さん、ごめんよ!」



7号とクウガ等の距離は数百メートルを越えていた。しかしその7号の爆圧は、廃倉庫全体を炙り、八代の細身の肉体を枯れ葉が舞うように吹き飛ばす。吹き飛ばされコンクリートに頭を打ち付けた八代は、クウガペガサスが抱き起こす腕の中で失神した。

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