2010年8月18日水曜日

1 クウガの世界 -超絶- その15

うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ビルの谷間、グロンギのうめき以外が聞こえない路上で、ただ1人、人間としての叫びを発する士。その叫びに応える者を、士は自分の視界に捉える事はできなかった。

「どうした、門矢士!」

それは『ン・ガミオ・ゼダ』へ斜め下方からの『マイティキック』。

「力が」

ガミオは寸前で回避、しかしそのまま蹴撃は放物を描いて降下、その先には士を中心に渦のように群がるグロンギの大軍団。

「来たか」

その全てのグロンギが天敵の姿を自失して見上げる。隙を狙ってしがみついていたグロンギを振り払う士。士の待っていた小野寺ユウスケがついに来た。

「あの人が笑ってくれる為にっっ!」

一体に蹴りが入る、
勢いのまま推し倒し、
地面に亀裂、
一体に浮かんだクウガの刻印、
刻印が地面に浮かぶ、
浮かんで地から足を伝い、
周辺グロンギのベルトへ伝達、

「人間は強さを求める、」

ガミオは路上グロンギの一斉爆破を、恍惚しながら眺めていた。

「違うな。」

その声は士。

「違わない。グロンギになるのも宿命だ!」

ガミオを見上げる形で、ビル屋上ヘリポートに立つ、クウガの肩に掴まってようやく立っている。

「オレはこの男を知っている、この男が戦うのは、誰も戦わなくていいようにする為だ!」

ユウスケもまた全力を出し切ったのか息切れのように姿を戻す。

「なに、」

吠えるガミオに、士はユウスケを指差した。

「自分1人が闇に落ちたとしても、誰かを笑顔にする、そう信じてる!こいつが人の笑顔を守るなら、オレは!こいつの笑顔を守る!」

唖然としたのはむしろユウスケだった。

「さっき守ったのはオレの方だ。」

士の頬を手の甲で小突くユウスケ。士はなおガミオに向かって不敵な笑みを浮かべた。

「知ってるか。こいつの笑顔、悪くはない。」

士とユウスケ、なんの力か、いつのまにか息を吹き返した。

「キサマは何者だ!」

ガミオの世界の外にいる男を、ガミオは知った。

「通りすがりの仮面ライダーだ!いくぞ!」

士、ディケイドライバーを腰に回す。ブッカーが出現する。ドライバー両端を左右に引くとトリックスターを内蔵した中央バックルが90度回転しカードインスペースが顕れる、ブッカーからライドカードを1枚取り出した。

「おう!」

ユウスケ、念じてアマダムを腰に露出させる。左手を腰に据え、右手を伸ばし、右の指先を視線の高さのまま左から右へ流す、

「変身!」

士がドライバーにカードを装填、纏わるマゼンダのスーツ。仮面ライダーディケイド。

「変身!」

回した右腕と左拳を繋ぐ、変質する炎のボディ。仮面ライダークウガ。

「ならば、私を倒して闇を晴らしてみせろ!」

ガミオがビル屋上、2人と同じ土壌に立つ、両腕に力を込める、迸るアマダムの光が掌から放出、

「ぐぉぉぉ!」

クウガは跳躍してガミオに突進、

「戻った」

ディイケドは側飛びして回避、その手にはブッカーから飛び出してきた何枚かのカードが。手にする全てのカードの曇りが晴れ、クウガかそのシンボルの画を取り戻す様を眺めていた。

ぐぉぉ!

ディケイドの足下に転がってくる者、それはクウガ。ガミオの力に返り討ちにあったようだ。

「来たのは、あの人の為か。」

手を差し伸べるディケイド。

「おまえ1人で戦わせたら、あの人は笑ってくれない。」

その手を取り並び立ちするクウガ。
ディケイドはバックルを開いて1枚のカードを挿入した。

『FINAL FORM RIDE kukukuKUUGA!』

「ちょっとくすぐったいぞ。」

クウガの背中に手を伸ばすディケイド、

「え?お、お、ォ・・・アウ」

迂闊な声で応えるクウガの背中に虫の背のような装甲が出現、クウガの頭がありえない後方に折れ曲がり、脚ががに股、腰から第3の肢が左右に伸びる、
宙に浮いた姿はまるで金属質の巨大なクワガタムシ。

「これは・・・・」

自らの姿に驚愕するクウガにディケイドが応える。

「これがオレとおまえの力だ。」

ファイナルフォームクウガ、それが『クウガゴウラム』。

「フン!」

再びアマダムのパワーを腕から迸らせるガミオ、その破壊エネルギーを眼前に避けない両者、

はぁぁ、

切り裂く、
クウガゴウラムの2本の角の突進、ガミオの闇のエネルギーを切り裂いてなお突進、

一撃、

「ぉぉぉぉぉ!」

ゴウラムの突撃を食らって落下するガミオ、
反転上昇し、円を描いてディイケド上空を舞うクウガゴウラム、
ディケイド、上空のゴウラムの脚を一本掴んでぶら下がる、

『ATTACK RIDE BLAST』

宙をゴウラムと共に飛翔するディケイド、ガミオに向けて光弾を連射、

ぐぉぉぉぉぉぉぉ!

上方からの直撃に路上に伏すガミオ、

「これが、」

「オレ達の力か。」

着地する両者。クウガはゴウラムから戻ってその何層も滲むような濃厚な紅いアーマーを輝かせる。

「闇は不滅だっっっ!」

立ち上がるガミオ、突如そのベルトのアマダムが輝く、呼応して悲鳴をあげる路上のグロンギ達、それら全てが悶え苦しみながら黒い煙と化す、煙は全てガミオの体内に吸収されていく、
路上だけではない、四方八方、あらゆる方向からガミオに向かって煙が集まってくる、ガミオのアマダムがまばゆい光芒を放つ、

ぉぉぉぉぉぉぉ!

迸るエネルギー、
アスファルトを蒸発させ、露出した大地を蒸発させ、地の底を深く抉り、2人を紅蓮の炎で推し出し、小石かなにかのように弾き飛ばした。

ぉぉぉぉぉぉぉ!

ビル屋上に向けてエネルギーを迸らせるガミオ、爆砕し、ヘリポートが一面全て、倒れる2人の元に落下。

「士、任せろ」

クウガ、再びゴウラムへと変身、落下するヘリポートと真っ向対峙して突撃、その2本の角で両断。反転錐揉みしながら降下、ガミオ頭上を強襲。

ォォォォォォォ!

ガミオの黒い渦のような衝撃波がゴウラムと真っ向勝負、

「うぁぁぁぁ!」

一度は推し返した対手だった、引力すら味方し、太陽を背にした全てにおいて優位な攻撃だった。しかし結果は紙ペラのように弾き返され、炎をあげるビルを突っ切り、隣のビルに激突、100メートル平方のビル20階より上が粉々に砕け消失炎上した。

「言わばグロンギの総力だからな。」

ディケイド、いつのまにかマシンディケイダーに跨り、カードを1枚取り出す。その絵柄はクウガのマスクを象形化したシンボルマークが描かれている。

『FINAL ATTACK RIDE kukukuKUUGAaa!』

上空から一転降下し、ディケイダー直上で頭と胴が分離するクウガゴウラム、ディケイダーの前後にそれぞれ被さるように合体。

エンジン音を轟かせ猪突、

「はぁぁぁぁぁ!」

「やぁぁぁぁぁ!」

ゴウラムの角にマゼンダの光が灯る、
構えるガミオ、
激突、
圧倒され吹き飛ぶのはガミオ、
だがそれだけでは終わらない、
クウガゴウラム分離、
宙に浮いたガミオに追いつき2本の角で拘束、
天高く上昇、
燃えさかるビルの炎を突っ切ってなお飛翔するゴウラム、
太陽に向かって点になる、
小さかった点が大きくなる、
反転し急降下してくるゴウラム、
ガミオを掴んだままだ、

「士っっっっ」

ライドブッカーを剣にするディケイド、ブッカーを地に差し待ち構える、
ゴウラムとディケイドの間、下から上へ浮かぶ光のカード、
1枚1枚くぐり抜けていくのはゴウラム、その都度光彩が増していく、

「ユウスケ!」

柄頭に片掌だけ体重を預けて倒立、それは天空に向けての蹴撃の体勢になる、

爆破っ!

頭、胴、手足、そしてアマダムと粉々に砕け、それぞれが炎に塗れた、

「キサマもかつて、人だったのかもしれないな。」

ディケイドとクウガは既に着地し、ガミオのアマダムの珠が燃え尽きるのを眺めている。

「ならば・・・・おまえは・・・・どこから来た・・・・」

アマダムから呻きが聞こえた。

「悪い、忘れた。」

ディケイドの、それが似た者に対する手向けだった。

「リント・・・・闇が晴れるぞ・・・・・」

爆砕するアマダム。闇が炎に呑まれた。
吹き飛ぶ黒い圧風にさらされ踏ん張る若者2人。
風が突如病む。

「やったな。」

クウガが視界を取り戻した時、青空が広がっていた。
そのクウガの左の手の甲を、ディケイドの手の甲が打った。

「当たり前だ。このオレが協力してやったんだ。病院へ急ぐぞ。」

「お、おう。」

ディケイドの背中を追い、トボトボと歩き出すクウガ。

「ベルトの翳りが消えてない・・・・」

だがユウスケは、その姿を戻した後も俯いて、自分の腹のあたりを眺めていた。

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