うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ビルの谷間、グロンギのうめき以外が聞こえない路上で、ただ1人、人間としての叫びを発する士。その叫びに応える者を、士は自分の視界に捉える事はできなかった。
「どうした、門矢士!」
それは『ン・ガミオ・ゼダ』へ斜め下方からの『マイティキック』。
「力が」
ガミオは寸前で回避、しかしそのまま蹴撃は放物を描いて降下、その先には士を中心に渦のように群がるグロンギの大軍団。
「来たか」
その全てのグロンギが天敵の姿を自失して見上げる。隙を狙ってしがみついていたグロンギを振り払う士。士の待っていた小野寺ユウスケがついに来た。
「あの人が笑ってくれる為にっっ!」
一体に蹴りが入る、
勢いのまま推し倒し、
地面に亀裂、
一体に浮かんだクウガの刻印、
刻印が地面に浮かぶ、
浮かんで地から足を伝い、
周辺グロンギのベルトへ伝達、
「人間は強さを求める、」
ガミオは路上グロンギの一斉爆破を、恍惚しながら眺めていた。
「違うな。」
その声は士。
「違わない。グロンギになるのも宿命だ!」
ガミオを見上げる形で、ビル屋上ヘリポートに立つ、クウガの肩に掴まってようやく立っている。
「オレはこの男を知っている、この男が戦うのは、誰も戦わなくていいようにする為だ!」
ユウスケもまた全力を出し切ったのか息切れのように姿を戻す。
「なに、」
吠えるガミオに、士はユウスケを指差した。
「自分1人が闇に落ちたとしても、誰かを笑顔にする、そう信じてる!こいつが人の笑顔を守るなら、オレは!こいつの笑顔を守る!」
唖然としたのはむしろユウスケだった。
「さっき守ったのはオレの方だ。」
士の頬を手の甲で小突くユウスケ。士はなおガミオに向かって不敵な笑みを浮かべた。
「知ってるか。こいつの笑顔、悪くはない。」
士とユウスケ、なんの力か、いつのまにか息を吹き返した。
「キサマは何者だ!」
ガミオの世界の外にいる男を、ガミオは知った。
「通りすがりの仮面ライダーだ!いくぞ!」
士、ディケイドライバーを腰に回す。ブッカーが出現する。ドライバー両端を左右に引くとトリックスターを内蔵した中央バックルが90度回転しカードインスペースが顕れる、ブッカーからライドカードを1枚取り出した。
「おう!」
ユウスケ、念じてアマダムを腰に露出させる。左手を腰に据え、右手を伸ばし、右の指先を視線の高さのまま左から右へ流す、
「変身!」
士がドライバーにカードを装填、纏わるマゼンダのスーツ。仮面ライダーディケイド。
「変身!」
回した右腕と左拳を繋ぐ、変質する炎のボディ。仮面ライダークウガ。
「ならば、私を倒して闇を晴らしてみせろ!」
ガミオがビル屋上、2人と同じ土壌に立つ、両腕に力を込める、迸るアマダムの光が掌から放出、
「ぐぉぉぉ!」
クウガは跳躍してガミオに突進、
「戻った」
ディイケドは側飛びして回避、その手にはブッカーから飛び出してきた何枚かのカードが。手にする全てのカードの曇りが晴れ、クウガかそのシンボルの画を取り戻す様を眺めていた。
ぐぉぉ!
ディケイドの足下に転がってくる者、それはクウガ。ガミオの力に返り討ちにあったようだ。
「来たのは、あの人の為か。」
手を差し伸べるディケイド。
「おまえ1人で戦わせたら、あの人は笑ってくれない。」
その手を取り並び立ちするクウガ。
ディケイドはバックルを開いて1枚のカードを挿入した。
『FINAL FORM RIDE kukukuKUUGA!』
「ちょっとくすぐったいぞ。」
クウガの背中に手を伸ばすディケイド、
「え?お、お、ォ・・・アウ」
迂闊な声で応えるクウガの背中に虫の背のような装甲が出現、クウガの頭がありえない後方に折れ曲がり、脚ががに股、腰から第3の肢が左右に伸びる、
宙に浮いた姿はまるで金属質の巨大なクワガタムシ。
「これは・・・・」
自らの姿に驚愕するクウガにディケイドが応える。
「これがオレとおまえの力だ。」
ファイナルフォームクウガ、それが『クウガゴウラム』。
「フン!」
再びアマダムのパワーを腕から迸らせるガミオ、その破壊エネルギーを眼前に避けない両者、
はぁぁ、
切り裂く、
クウガゴウラムの2本の角の突進、ガミオの闇のエネルギーを切り裂いてなお突進、
一撃、
「ぉぉぉぉぉ!」
ゴウラムの突撃を食らって落下するガミオ、
反転上昇し、円を描いてディイケド上空を舞うクウガゴウラム、
ディケイド、上空のゴウラムの脚を一本掴んでぶら下がる、
『ATTACK RIDE BLAST』
宙をゴウラムと共に飛翔するディケイド、ガミオに向けて光弾を連射、
ぐぉぉぉぉぉぉぉ!
上方からの直撃に路上に伏すガミオ、
「これが、」
「オレ達の力か。」
着地する両者。クウガはゴウラムから戻ってその何層も滲むような濃厚な紅いアーマーを輝かせる。
「闇は不滅だっっっ!」
立ち上がるガミオ、突如そのベルトのアマダムが輝く、呼応して悲鳴をあげる路上のグロンギ達、それら全てが悶え苦しみながら黒い煙と化す、煙は全てガミオの体内に吸収されていく、
路上だけではない、四方八方、あらゆる方向からガミオに向かって煙が集まってくる、ガミオのアマダムがまばゆい光芒を放つ、
ぉぉぉぉぉぉぉ!
迸るエネルギー、
アスファルトを蒸発させ、露出した大地を蒸発させ、地の底を深く抉り、2人を紅蓮の炎で推し出し、小石かなにかのように弾き飛ばした。
ぉぉぉぉぉぉぉ!
ビル屋上に向けてエネルギーを迸らせるガミオ、爆砕し、ヘリポートが一面全て、倒れる2人の元に落下。
「士、任せろ」
クウガ、再びゴウラムへと変身、落下するヘリポートと真っ向対峙して突撃、その2本の角で両断。反転錐揉みしながら降下、ガミオ頭上を強襲。
ォォォォォォォ!
ガミオの黒い渦のような衝撃波がゴウラムと真っ向勝負、
「うぁぁぁぁ!」
一度は推し返した対手だった、引力すら味方し、太陽を背にした全てにおいて優位な攻撃だった。しかし結果は紙ペラのように弾き返され、炎をあげるビルを突っ切り、隣のビルに激突、100メートル平方のビル20階より上が粉々に砕け消失炎上した。
「言わばグロンギの総力だからな。」
ディケイド、いつのまにかマシンディケイダーに跨り、カードを1枚取り出す。その絵柄はクウガのマスクを象形化したシンボルマークが描かれている。
『FINAL ATTACK RIDE kukukuKUUGAaa!』
上空から一転降下し、ディケイダー直上で頭と胴が分離するクウガゴウラム、ディケイダーの前後にそれぞれ被さるように合体。
エンジン音を轟かせ猪突、
「はぁぁぁぁぁ!」
「やぁぁぁぁぁ!」
ゴウラムの角にマゼンダの光が灯る、
構えるガミオ、
激突、
圧倒され吹き飛ぶのはガミオ、
だがそれだけでは終わらない、
クウガゴウラム分離、
宙に浮いたガミオに追いつき2本の角で拘束、
天高く上昇、
燃えさかるビルの炎を突っ切ってなお飛翔するゴウラム、
太陽に向かって点になる、
小さかった点が大きくなる、
反転し急降下してくるゴウラム、
ガミオを掴んだままだ、
「士っっっっ」
ライドブッカーを剣にするディケイド、ブッカーを地に差し待ち構える、
ゴウラムとディケイドの間、下から上へ浮かぶ光のカード、
1枚1枚くぐり抜けていくのはゴウラム、その都度光彩が増していく、
「ユウスケ!」
柄頭に片掌だけ体重を預けて倒立、それは天空に向けての蹴撃の体勢になる、
爆破っ!
頭、胴、手足、そしてアマダムと粉々に砕け、それぞれが炎に塗れた、
「キサマもかつて、人だったのかもしれないな。」
ディケイドとクウガは既に着地し、ガミオのアマダムの珠が燃え尽きるのを眺めている。
「ならば・・・・おまえは・・・・どこから来た・・・・」
アマダムから呻きが聞こえた。
「悪い、忘れた。」
ディケイドの、それが似た者に対する手向けだった。
「リント・・・・闇が晴れるぞ・・・・・」
爆砕するアマダム。闇が炎に呑まれた。
吹き飛ぶ黒い圧風にさらされ踏ん張る若者2人。
風が突如病む。
「やったな。」
クウガが視界を取り戻した時、青空が広がっていた。
そのクウガの左の手の甲を、ディケイドの手の甲が打った。
「当たり前だ。このオレが協力してやったんだ。病院へ急ぐぞ。」
「お、おう。」
ディケイドの背中を追い、トボトボと歩き出すクウガ。
「ベルトの翳りが消えてない・・・・」
だがユウスケは、その姿を戻した後も俯いて、自分の腹のあたりを眺めていた。
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