路上に溢れるのは人が変貌したグロンギと、そのグロンギに殺された死骸の山。元々極めて秩序的な存在であるグロンギはその無秩序な増大と餌より同胞が多いという稀な状況にほとんど戸惑っている。
「リントもグロンギも、全ては一つの美しい闇に包まれる。」
それをはるか上空、10階層のビルのさらに上空で浮いて眺める『ン・ガミオ・ゼダ』は箱庭の完成をただ眺めるだけが感情の行き場であった。
エンジン音、
「来たか。」
ガミオの耳にかすかに聞こえる秒単位の連続内燃焼による駆動音。グロンギの群れをマシンディケイダーが突っ切って行く。ガミオは彼の登場を待ち構えていた。
「おまえはクウガでもリントでも無い。お互いこの世界には居てはならない者のようだ。」
このグロンギはオレよりはるかに強い、
「知るか。」
宙に浮くガミオを見上げる門矢士。既にディケイドライバーを腰に装着し、バックルを回転させ、カードホルダーを開けている。
「消えよ。リントは全て殺し合うグロンギと化す。力を求めたそれが宿命だったのだ。」
やるとすれば一撃で倒すしかない、
士は既にディケイドのマスクが描かれたカードを手にしている。
「似てるな。オレも、アンタと同じような事を考えた気がする。人間とは戦い合うしか無い、全てを破壊する、そんな存在だと。変身!」
でなければもう勝てないだろう、
『KAMEN RIDE DECADE』
装着されるマゼンダのスーツ。
賭けてみるさ!
『FINAL ATTACK RIDE dededeDECADE!』
勝負に出たディケイド、即座に最強の技をライドし、地面から宙へ向かって蹴撃を敢行、ディケイドとガミオの間に等身大のトランプが列を成してディケイドの軌跡を描く。
ダメか、
「フォ!」
それはガミオの右腕の一振りに過ぎない、 跳ね返されるディケイド、衝撃は落下の重力加速に大きく力を加味し、ディケイドを地面に打ち付ける、アスファルトに蜘蛛の巣状の亀裂が走った。
この程度でオレがか、
変身が解ける士。四方八方に十数体のグロンギが取り巻いている。
1体が首を掴んできた。抵抗できない士。
1体が背中を押した。押されるままの士。
1体が腹打ちする。呻く士。
もしかしてグロンギはこの1人残った獲物の殺害をゆっくり楽しんでいるのかもしれない。
オレの死に場所か、
「ふざけるな!」
想像を絶する衝撃を何度も食らい、やっと立っている状態の士。蹌踉けて前方にいるグロンギに無闇に拳を食らわす。しかしそんなものは対手に効いていない。しかも反撃はその前面の対手ではない。背後にいたグロンギの蹴りである。
ボロ雑巾のように転がる士。そこに蝙蝠型のグロンギの牙がよだれを垂らしながら迫ってくる。逃げようとするも、両手両足をいつのまにか十数体のグロンギに掴まれている。
うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ビルの谷間、グロンギのうめき以外が聞こえない路上で、ただ1人、人間としての叫びを発する士。その叫びに応える者を、士は自分の視界に捉える事はできなかった。
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