2010年8月18日水曜日

1 クウガの世界 -超絶- その9





「ディケイド、おまえはこの世界にあってはならん。」

‘鳴滝’がディケイドとクウガが戦うさらに上の路線に萎れた帽子を被り萎びたコートを着て立っている。
腕を動かすと、例のオーロラのカーテンが2体のライダーの左右から迫り、ある間隔で立ち消える。運んできたのだ。
何を運んできた?それはディケイドでもクウガでも、またこの世界に属する者でも無いライダーを3体。

「アニキ、ここにもいたよ。ライダーが。」

「ああ、いくぜ相棒。」

クウガの背後に立つのは『パンチホッパー』と『キックホッパー』。

「ベルトを貰う。」

ディケイドの背後には『カイザ』が立っていた。

「これもおまえの仕業か!」

「冗談じゃねえ、知るかあんな辛気くさい奴等。」

ディケイドとクウガ、互いを見合って状況の激変に戸惑った。

「汚してやる、ライダーなんて!」

パンチホッパーがクウガに殴りかかる。そのラッシュに一旦は戸惑ったクウガだが、ドラゴンフォームに変身した途端、その俊敏さで逆に翻弄する。

「おまえいいよなぁ、オレなんか趣味の悪さを人から罵られる事もない。ピンク野郎!」

キックホッパーがディケイドに足技だけで格闘を挑む。それを見切って防御するディケイドだが、足技で挑む対手には上手くカウンターをかけるポイントを見いだせない。胴が遠くなる。

「おまえ、記憶が無いんだってな!」

そんなディケイドに『カイザブレイガン』が連射される。しかしディケイド、そんなカイザの動きを見切って、咄嗟にキックホッパー後背に回り込む。
キックホッパーは吹き飛んで悶絶、
なお続くカイザの銃撃、
横に躱しながらディケイド、ソードのブッカーを畳み、グリップを半開きにする、これが『ガンモード』、ブックの背軸がバレルとなるこれを使って撃ち合いに応じる、
撃ち合いながら近接する両者、
至近の間合いに詰め寄り、互いの胸に互いのノズルが接着、

「なぜオレと戦う?」

ディケイド、ブッカーをソードに切り返し、カイザを斬り上げ、

「邪魔なんだよ、オレの思い通りにならないものは全て!」

カイザ、ブレイガンをソードモード逆手に、擦り上げられた腕を戻し刃を合わせる、
拮抗するライドブッカーとカイザブレイガン、

「おまえら、オレを笑ったなぁ!クロックアップ!」

そこへ悶絶していたキックホッパーが立ち上がり、超高速運動を仕掛けてくる。

「なんのつもりだ、おまえら!」

カイザはキックホッパーの見えない蹴りに倒れる、

「クロックアップ、自分の時を速め、高速で敵を倒す。だが、」

ディケイドはどの方向からやってくるか分からない鎌鼬のごとき攻撃に翻弄されながらも、1枚カードを取り出す。

『ATTACK RIDE BLAST』

ブッカーガンのノズルがいくつも分裂して見える、それは眼の錯覚、しかし撃ち出される無数の光弾は実威力がある。

「ぐおっっっ!」

3つの方向に手当たり次第にブッカーの弾幕を敷いたディケイドが、見えない対手をついに捉える。実体を顕したキックホッパーが銃弾の横雨を食らいながら崖に押し付けられ、最後は爆破した。

「よくもアニキを笑ったな!」

ドラゴンクウガに圧され気味のパンチホッパーが叫んで突如姿を消す。いやキックホッパーと同じクロックアップの領域に入った。

「なんだっ」

4態変化の中でもっとも素早いはずのドラゴンクウガが成す術も無く、一方的な見えない打撃を食らう。ドラゴンの動きが仮令追随出来たとしても、対手は自身が知覚して脳に伝達するまでの間に既に次のモーションに入っている。

「おいユウスケ、おまえがなんとかしろ!」

ディケイドも又同じである。知覚できない打撃を被り踊らされるままクウガと背中合わせになる。

「さっき貴様なんとかしてたろ!」

「ああオレは強いからな。だがもうダメだ。あれ1枚しかカードが使えない。」

「どうすん、イテ!」

とクウガがディケイドに振り返るとブッカーの銃床で眉間を打った。

『RIDER JUMP』

『RIDER PUNCH』

ぐぉ!

吹き飛ばされたのはディケイド、いままで右腕に握られていたブッカーが無い。

「おまえなら動きを捉える事ができる!」

ディケイドの叫びに、その手に握られたライドブッカーを眺めるクウガ。

「超変身!」

緑に体色が変化、ペガサスクウガへチェンジすると共にブッカーがペガサスボウガンへ。

『RIDER JUMP』

挙動が止まるクヴカ。

「ユウスケ!」

ディケイドが叫んでも全く動かない。

『RIDER PUNCH』

「この世界にライダーはオレ1人で十分だ!」

その声を、クウガは捉えた。ボウガンのトリガーを引き絞った。

「そこだ!」

発射、

真正面に出現制止するパンチホッパー、ペガサスクウガが狙った位置、そこはベルト、爆裂するパンチホッパー。

再び現れるオーロラ、
3ライダーの姿が役割を終えたように跡形も無く消失する。

「なんなんだあれは。聞いてるのか!悪魔!」

戸惑い叫ぶクウガに答えず、腹を押さえてかがみ込むだけのディケイド。

「よくやった、本当に出来ると思ってなかった。」

「なんだと!」

「なぜオレを助けた?」

クウガは黙ってブッカーをディケイドに返した。

「一応、あんな形でも、姐さんを助けてくれた。それだけは感謝している。」

視線を合わせないクウガだった。

人の良さでバカを見るタイプだ、

ディケイド-士は、そんなクウガ-ユウスケを見直した。

「なぜだ・・・ベルトが・・・・」

クウガのベルト、アマダムはなぜだろう、いつのまにか暗い影を差していた。

「これからはオレの事を門矢様と呼べ。オレの強さに嫉妬しないで身の程を知るんだ。いいな。」

ディケイドはそのクウガをただ項垂れているだけだと思った。

「おまえ、実はガキだろ。」

嫉妬?そういう事か・・・?。

ユウスケの旅が始まったのは、実はこの時からかもしれない。





「ディケイド、これがはじまりだ。」

‘鳴滝’はじっと眺めていた。
その腕も動かず、その足も1ミリとズレず、ただ自分が用意した3体のライダーの失態を眺めていた。カラスがその萎びた帽子に糞を落としてもただじっとしていた。

「次はこうはいかん。」

だがその眉間は痙攣していた。

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