2011年1月3日月曜日

2 剣の世界 -進化の終点- その2







 クハ



 と白目で羽黒レンが息を吹き返す。ユウスケは頭を抱き起こす。



「レンさん!」



 レンは皮肉な笑みを浮かべる。



「まだ性懲りもなく、生きているのか。」



 やや曲がった腹部の痛みで呻き、逆にその痛みのおかげで失神しないで済んでいるレン。



「あの鏡の中で、2人が戦っています。」



「そうか、お互い、パートナーには苦労させられるな・・・見せてやろう・・・」



 レンは自身の『カードデッキ』を取り出しユウスケにそれを掴むように指示した。



「これが・・・・ミラーモンスター・・・士、後ろを見ろ!」



 ユウスケの見た光景は圧倒的だった。ディケイドの姿、それを囲むように何十という金属質でカラフルな体皮を持つ巨大な化け物が呻いている。



「シンジは・・・・」



 そのモンスターめがけて、2匹の、全く同じ龍の姿をしたドラグレッダーが口から炎を吐く。圧倒的な火力の合力がモンスターの半ばを焼き尽くした。

 その炎の壁を突っ切って、巨大な鮫、アビソドンがディケイドに迫る。

 だが次の瞬間、ユウスケは目を見張った。



「オレの姿・・・・・・」







 なにか聞こえたような気がする。



「分かっている」



 ディケイド、迫る疾風を背後に触覚しながら、2枚ブッカーよりカードを取り出す。



『KAMEN RIDE KUUGA』



 その姿はユウスケの変身したクウガ、先の龍騎と同じ、バックル以外その姿になり、その能力を行使できる。キックもブッカーも補助的な装備に過ぎない。これがディケイドの本来の力。



「サメは銛を打ち込むのが一番。」



『FORM RIDE KUUGA PEGASUS』



 カードを挿入し、姿がさらに変わる。クウガの緑の力へ。変身しつつブッカーを展開、クウガの分子再構成の力でペガサスボウガンへと変貌させる。こうして幾種類の姿と攻撃をカードによって使い分ける。これがディケイド。



 疾風を一旦聴覚だけで回避、

 前転しつつ、腕はボウガン背部レバーを引く、

 ボウガン銃口に大量の空気が送り込まれ、内部で圧搾、ディケイド-クウガのエネルギーと相まって一塊の弾丸と化す、

 反転するアビソドン、今度は地上1メートルを滑空し迫る、

 ディケイドの胸を切断かというスレスレ、転ぶようにスウェー、いやバック転のように両足は宙を舞い、その銃口は真上、至近でアビソドンの腹を狙っている、

 発射、

 反動で地にたたき付けられるディケイド-ペガサス、

 上から突き上げられる衝撃に触角が上向くアビソドン、

 そのアビソドンの横腹めがけて、ドラグレッダーの尾が叩きつけられ両断、

 爆破、



「やったな。」



 ドラグレッダーから姿を戻し、地に降り立つ龍騎。



「当たり前だ。」



 その龍騎の手を掴み起き上がるディケイドは既に元のフォームに戻っていた。



「私に勝てるライダーはいませんよ!」



 アビス、ディケイドに踊り掛かる。歩調を合わせて残り9体のライダーと契約モンスターもディケイド1人群がった。



「ああ、みんなそう言うんだ!」



 しかし上空よりドラグレッダーが吐く炎の渦が、ディケイド周辺のライダー達をことごとく駆逐していく。



『FINAL ATTACK RIDE ryuryuryuRYUKIii!』



「はぁ!」



 跳躍するディケイド、

 それを取り囲むように舞う2匹の紅い龍、

 渦が起こり、その気流に錐揉みするディケイド、

 2匹の龍がディケイドの背面に回り込む、

 ディケイド、蹴撃の体勢、

 ディケイドに向かって火を吹く2匹の龍、

 炎を纏って対手に向かって降下急襲、



「うぁぁぁぁぁ」



 アビスに直撃、

 炎は『ガイ』に移り、

 『ライア』は炎圧で転がり、

 『王蛇』は地面に転がりながら摩耗、

 モンスターは全て光の珠となり、10人いたライダーは全て地に伏した。



「やったな。パートナー。」



「また言わせるのか?当たり前だ。」



 頷き合う2人のライダーはしかし、地に倒れ、ライダーの姿を除装した10人の人間が立ち上がる姿を見て愕然とする。



「全て、鎌田・・・・」



「緑の血、」



 鎌田という中年から老年に差し掛かり、頭髪の寂しさを右側のまだ伸びる髪を強引にセンターに寄せて隠す痩せた男が立つ。

 また1人、頭髪の寂しさを右側のまだ伸びる髪を強引にセンターに寄せて隠す痩せた男が立つ。

 さらに1人、頭のハゲを隠す男が立つ。

 ナイトに倒されていた男もまたハゲ。

 それら全て、11人全てが同じ鎌田という男の顔だった。11人の鎌田が同時に負傷に呻き、11 人の鎌田が同時に嘲笑った。

 それらの姿が全て半透明になって折り重なっていく。11人の鎌田が今1つに。



「紹介しよう。私の友人、パラドサキアンデッドっっっ!」



 1つになった鎌田の背後より現れ絶叫する別の男が1人。縒れた帽子とコートを纏った中年。鳴滝だ。



「アン、デッド?」



「アンデッド、地球の生物それぞれの種の始祖、互いに戦い合い、最後に人類の始祖が勝って地球の支配者が決まった。緑の血を流す・・・・なんでオレは知っている。」



 士達は既に変身を解き、対面の奇っ怪な2人を唖然と眺めていた。



「この世界の実験も終わりだ。そろそろ行くとしよう。」



 鳴滝がそう言って手を振り上げると、例のオーロラの壁が彼と、鎌田を透過していく。ちなみに鳴滝が何をこの世界で実験していたか、終生士が知る事は無かった。



「ディケイド、この世界もおまえによって破壊されてしまったぁ!」



 そう、なぜか大笑いして姿を消す鳴滝と鎌田だった。

 唖然とするシンジと士。



「誰だ、あの中年。」



 士の疑問に答える者はもはやいない。

 もう既に、次の世界への旅は始まっていた。

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