2011年1月3日月曜日

2 剣の世界 -進化の終点- その3








『メタル』



 紫紺の『仮面ライダーブレイド』、ラウズカードを刀剣の得物『ブレイラウザー』にスラッシュリードする。光と化すカード、胸プレートに吸引され、それはブレイドの力へと還元される。

 月に吠える異形、

 対するは『ウルフアンデッド』。目にも止まらぬ動きで左から爪を立てたかと思いきや既に背面に回り込んで強烈な蹴りを食らわせてくる。

 しかし、ラウズカードによって防御力を強化した不動のブレイドにはビクともしない。予めウルフの能力を熟知してその攻撃に対抗したブレイドは、続いて対手が攻めあぐねている間隙を見いだし、次のカードを繰る。



『マッハ』



 今度はブレイドの姿がウルフの視界から消え失せる。ウルフの右に突風、刹那右肩が抉れ、緑の血を吹いて倒れようとする前面にブレイドが現れたかと思いきや見えない刃の連斬でウルフを傷だらけに推しやり、振り返って逃亡を図ろうとするウルフの脚の腱を一閃、ウルフはあえなく転倒する。



『キック』



『サンダー』



『ライトニングブラスト』



 ウェェェェェェェ



 跳躍するブレイド。その蹴り脚の先に稲光が煌めく、

 必死に起き上がるウルフが頭上を見てしまう、

 ウルフの胸部に衝撃が走る、

 絶叫、

 アンデッド特有のエネルギーの瞬間放出、大気の爆裂が起こる。中心になお立つブレイドとなお五体満足なウルフ。しかしウルフのベルト、特有の青銅の光沢を帯びた楕円のバックルが、縦半分に裂ける。



「バトルファイトを・・・・終わらせる。」



 無地のラウズカードをウルフに投擲するブレイド。ウルフの肉体が光粒子のレベルにまで分解し、見る間に薄い1枚のトランプカードに吸引されていく。ウルフの肉体はラウズカードの図柄と化し、その力は、ラウズするものの為に引き出されるのみ。生きる事も死ぬ事も、生かされる事すら許されないそれがアンデットの『封印』だった。

 闇夜。人知れぬ公園の出来事。



「分かっているぞぉ。APは限界だとな!変身!」



 男のベルトのバックルが表裏逆転しダイヤの紋章が顕になる。



『ターンアップ』



 ビルの屋外非常階段から飛び降りる男がいた。



「サクヤ、おまえがギャレンになったのか。」



 サクヤと呼ばれた男は、飛び降り様『オリハルコンエレメント』、光の壁を透過し、戦闘スーツを身に纏う。濃紅の『ギャレン』だ。



 撃つ、

 ギャレンはその得物であるSMG『ギャレンラウザー』を連射、

 もろに受けるブレイドは、怯まず、棒立ちのままギャレンを直視していた。



「・・・・」



「先輩!なぜ黙っているんです!」



 ギャレンは叫ぶ。しかしブレイドは黙して動かない。その態度がギャレンのプライドを傷つけた。



「オンドルuregy&!>JKaaaa!(本当に裏切ったんですか!)」



 3枚のカードを取り出すギャレン。



『ドロップ』



『ファイヤ』



『ジェミニ』



『バーニングディバイド』



 ZAYOKoooooooouuuuuu!



 3枚のカードがギャレンの胸板に光となって張り付く。跳躍するギャレン、その軌跡は鋭角的な放物線、跳躍頂点に達した時、腰を捻って錐揉みし、蹴り落としの体勢でブレイドに直下降下、その踵には炎が吹き上がり、しかもギャレンはその体勢のまま2体に分離した、どちらかが虚像ではない、



「サクヤ、もっと勉強しろよ。」



 ブレイドはそう言って、先程封印したばかりの狼のカードをラウザーにスラッシュした。



『チャージ』



 続けざまに次のカードをスラッシュ、



『タイム』



 ギャレンの蹴り脚が激突、

 亀裂が走る、

 炎が巻き上がる、



「いない?」



 だがギャレンには手応えが無かった。

 地面に亀裂を走らせても、大気と緑を炎上させても、その中にブレイドの姿は無かった。

 ラウズカード『タイム』。時を止める効果。







「エースにしてやったのに、失敗ね。」



 今1人。サクヤのいた非常階段のさらに上、ビルの屋上に佇むライダーがいた。2本の反り返った長い角、ハート型のアイマスク、漆黒の『カリス』。その細く美しい四肢の佇まいは優雅ですらある。



「降格しちゃいなよ。みゆきお姉ちゃん。」



 その背後に学生服を着た少年がいた。襟を何度も触って落ち着かない。



「ムツキ、社長とお呼び。一度くらい私との勝負に勝ったからって図に乗るんじゃないわ。ライダーは全て、私が雇う社員なんですからね。」



 そのブレイドとは違うハート型のベルトバックルを取るカリス。水飛沫のようにその姿が弾け、1人の、鼻のラインと顎のラインがパーフェクトな美貌の女性が表れる。その姿はスーツ。細い四肢にやや小さめのサイズを着こなして、男装でありながら実に見事にその女性を演出している。みゆきと呼ばれた女性は、緩んだネクタイを絞め直す。その動作は首筋の細さを注目させる演出かもしれない。



「僕用のエースのカード、早く欲しいな。社長。」



 ムツキと呼ばれた少年は、少年らしい不敵さで社長の眉の動きに気づかない。



「その為にもまだギャレンには働いてもらわないとね。貴方も、今日から我が社の社員になるわけだから、ムツキではなく、キングと呼ばれる事になるわ。」

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