2011年1月3日月曜日

2 剣の世界 -進化の終点- その14

14




 遅いです。

 士クン達が朝出て行って、夕方まで誰も戻ってこないです。

 私は大変怒ってるのです。いったい全体あのクズ野郎どもは何をやっているんでしょうか。テレビでニュースにもなってないし、まさか3人でフケたんじゃ。



「お爺ちゃんごめんね。手伝わせる事になっちゃって。」



 お爺ちゃんは写真館の方の店終いを始めていた。



「いやいやいいんだよ夏海。私もね。ちょうど時間を持て余してたところだから。それより、そろそろディナーのお客が来る頃だ。早くお店の方へ行こう。お店が終わったらおまえの大好きなケチャップオムレツをこしらえてあげよう。」



 お爺ちゃんにまでこんな迷惑かけて。士クン達、絶対お尻ペンペンしてやる。お爺ちゃんに頼んだの私だけど。ちなみにお爺ちゃんのケチャップオムレツは中と外の両方にたっぷりのケチャップが入っている小さい頃からの大好物なのです。体がケチャップオムレツでできていると言っても過言ではないのです。



「帰ったぞ。このオレの為にメシを用意してくれてるだろうな。」



 門矢士!あいつ日が沈むまでなにやってた、笑いのツボ三段返ししてやる。

 士クンの手には一枚のカード、例の士クンが気にしてるCOMPLETEのカードがある。士クンによるとなぜかもう印が付いちゃったらしい。じゃあナニ?アタシゃ全部カヤの外かい。



「士君、大変だったねえ。もうニュースはその話題で持ちきりだよ。」



 お爺ちゃん何言ってんの?



「こいつら何したの?テレビはなんにも言ってないよ。」



「何、赤子の小指を曲げるより、易しいさ。」



 士クンは私の混乱した頭の中などどうでもいいみたいです。ひどい奴だと思いませんか。



「テレビは規制が入ってるからね。インターネットで君達の写真が飛び交ってたよ。」



 なんなの、それ私聞いてないけど、



「ハルカさんの涙綺麗だったな。オレ熟に目覚めたかもしれない。」



 なによユウスケ、それは私1人しか知らなかったって事じゃない、



「おい、夏みかん、これをアルバムに保管しておけ。」



 偉そうに士クンが一枚の写真を渡してきた。写真はすごくよかった。相変わらずピンボケでダブってる。でもあの會川カズマさんが料理しながら向ける枯れた笑顔と、いくつもの豊かな表情で微笑み返すアマネって子の顔は本当にいい。

 写真じゃない、それを渡した士クンの態度、士クンの目つきが私の心を見透かしているようで意地汚いのだ、

 分かって言ってるな、腐れ外道め、



「笑いのツボ!」



 倒れる腐れ外道、お腹を抱えて絨毯を転げ回る。私は3時間のツボを押した。



「こいつ、おまえ、なぁ、なんと、なんとかぁぁぁぁ」



「まあ無事でなによりだ。それよりみんなでハカランダの方へ行ってあっちでお食事にしよう。こっちの店じまいは終わったよ。」



 ユウスケの人なつっこい笑顔がそれに答え、おじいちゃんの性格の表れた笑顔が受けて、そして私も腐れ外道の無様な姿を眺めながら、みんなの無事を喜んだ。

 その時だ。写真館の背景スクリーンが降りたのは。

 いままで巨大なトランプカードが幾枚も舞った絵だったのが、幾匹もの青い蝶の舞う絵になっていた。



「次の旅か。もう少しこの世界を撮りたかったが。」



 笑い収まった士クンは呆然とそれを眺めている。

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