2011年1月3日月曜日

2 剣の世界 -進化の終点- その12

12




 フハッハッハッ・・・・・



 高笑いをあげながら宙を舞う鎌田。もはや髪の毛の乱れなど気にならない自信に満ちた姿に、路上で見上げる人の群れが唖然としている。いや違う意味で唖然としているのだろうが。



「見つけたぞ。」



 路上を疾駆するトライチェイサーの2人乗りを見下ろす鎌田。急降下し、車の流れに並行して人の目線の高さで飛ぶ。



「アマネちゃんは渡さないぞ!」



 既に並走されている事に気づいたユウスケは仰天しながらも、トライチェイサーを傾け遠ざかる。鎌田との間にセドリックを一台間に挟んで機を見て左折しようとした。



「幼女は逃がさん!」



 めくれ上がるセドリック、宙を回転し、ユウスケのメットを掠って路上左のビルに激突炎上する。鎌田が片手でハネ上げた。



「なんて奴」



 振り向くユウスケの眼には既に1メートルと無い間合いに並走している鎌田、そして鎌田が持つ『ケルベロス』のカードが認識された。



「幼女を封印、」



 翠の光が『ケルベロス』より発せられる。中てられる少女は手で眼を守り、その年頃独特の高い悲鳴を上げたのが最後の発声だった。



「アマネちゃん」



 腰に手を回している感覚が失せたのに気づいたユウスケ、直感でアマネがカードにされた事に気づいてトライチェイサーを寄せて鎌田を威圧。



 ファハッハッハッハッ・・・・



 加速して躱し数百メートル先で翻って立つ鎌田。その左手には『ギャレンバックル』が握られている。



「ハートの13枚のカード揃った、」



 鎌田の右の指先に扇状に掴まれたハート12枚+ケルベロスのカード。鎌田の手の中で融合していき、大きな円の石盤のような図柄となる。『ワイルド』。



「人であるブレイドが13枚のカードを使ってジョーカーになった、」



 バックルに差すワイルドのカード、腰に巻かれるバックル、



「ではアンデッドである私が使えば、どれほどの力を得られると思う?変身!」



 展開するオリハルコンエレメント、鎌田を透過、蒸着するギャレンスーツ、しかし安定しない、むしろ変化していく。それは白いスーツ、いや白い皮膚、その姿はカズマの変貌したそれと体色が違うだけで似ている。



「くそぉぉぉ」



 ウィリーしながら突っ込むユウスケ、その姿は既にクウガのそれに変化しつつある、しかし、



 掴まれる前輪、

 胸に刺さる爪、

 光へと還元していくユウスケ、



「ぅそぉぉぉぉぉぉぉぉ」



 絶叫がカードの形と化していく、

 白いジョーカーの手には、少女の図柄のカード、そして青年の顔とクウガの顔が半面ずつ入ったカードが握られていた。



 ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ



 内の力の沸騰が白いジョーカー、『アルピノ』を絶叫させた。



「遅かったか」



 ウィリーで中央車線を飛び越えてくるバイクが一台。『ブルースペイダー』に跨る『仮面ライダーブレイド』。戦いの気配を隠す事無く発散する鎌田を感じてやってきた。



「どうやら囮は必要無かったようだな。今ここで最強のアンデッドを決してやる。」



 2枚のカードをチラつかせる『アルピノ』。

左右の車線は既にアルピノを中心として空白の路面だけになり、車両は倒れたトライチェイサーとブルースペイダーがあるのみ。そのブルースペイダーより降り立つブレイド。



「種族を捨ててジョーカーとなったか。その姿で勝利した時、どうなるか承知の上か。」



「一つの種族にこだわっていればいつまでもバトルファイトの完全勝利者になれない。全てを超越したこの姿こそが勝者だ!」



 ブレイド、カードを一枚取り出している。



「全てを超越?全てを捨てた者の姿だ!」



『スラッシュ』



 ブレイドラウザーの刃が輝く、一足で間合いを詰めスレ違い様切り裂く、



「イタイイタイ。だが通じない。」



 確かに胸を切り裂いている。緑の血が吹き飛んでいる。だがすぐに塞がる。



「たかだか回復が速い程度、」



「スラッシュ!」



 アルピノの爪が輝く、振り返り様のブレイドの脇から胸装甲を一閃、



「他のカードの力を、」



「全てのアンデッドの力を持つ、これがアンデッドがライダーシステムを着るという事だ!」



 アルピノの爪が切り返し振り下ろされる、逆手でラウザーを合わせるブレイド、スラッシュ同士の閃光がまぶしい、



『ATTACK RIDE BLAST』



 背後から数十の光の連射、



「やはり組んでいたか、ロック!」



 アスファルトの一部がアルピノ背後にせり上がる、光弾ことごとく四散、



「今日は調子がいいな鎌田、鍼でも刺してもらったのか。」



 背後に現れる縦縞のマゼンダカラー、

 ディケイドの奇襲すらも防ぐアルピノ、

 しかしディケイドに注意が向いた刹那間合いを取るブレイド、



『キック』



『サンダー』



『マッハ』



『ライトニングソニック』



 Ueeeeeeeee!



 アルピノ頭上、蹴撃が迫る、



「フロート」



 跳躍、いや飛行、

 上に躱すアルピノ、その破壊力でアスファルトを破壊して下水管表面を露出させるブレイド、



「ライトニングソニック!」



 宙返りして足裏をブレイドに向けるアルピノ、ブレイドが頭上を見上げた時、もはやタイミングが遅い。



 貫突、

 はじけ飛ぶブレイド、

 背後のディケイドもろとも持って行かれ、転がり転がり停車したプリウスのバンパーに激突、両者の装着が解け、両者のバックルが路上に転がる。



「やはりな。同じジョーカーでもこれほども力が違う。それとも、おまえもそろそろ本気を出してみるか。決着をつけよう。」



 アルピノは少女の図柄の入ったカードを片手に、悠然と近寄ってくる。



「おい、一旦立て直すぞカズマ、」



「全てが通じない、ならば、」



 立ち上がるカズマ、口元の緑の血を拭って顔がこわばる。肉体の周りに薄く翠のオーラが湧いてくる。

0 件のコメント: