2011年2月22日火曜日

3 ファイズの世界 -夢の狩人- その13











「なにしてるのタクミ、」

「カ、カメラ、士君のカメラ、ボクが飛ばしちゃって、」

「飛ばす?アンタなにしたの?いいわ私も捜すから!自分のカメラが手元に無いって、私なら不安で死んじゃう!」

 本当に草叢で捜すタクミ。そのタクミを見つけて由里もいっしょになってあのショッキングピンクを目印に草叢をかき分ける。
 そんな由里の眼に学校指定の革靴が入った。もちろん白い靴下もそうだ。スカートやスーツの柄も色も由里と全く同じだった。しかし顔が違った。いやもはや皮膚の質感が変貌した灰だった。由里の眼前に立つ女生徒は力無く倒れると同時に立体を失い灰となって平面に崩れる。絶叫する由里はしかし、その背後にいる朱川になお驚きついに声が出なくなった。

「由里、いっしょに遊んだ昔のまんまね。幼いまま。でも私はもう、昔のまんまの私じゃないの。」

「貴方がやったの・・・・」

 喉の渇きを覚えた由里に背後から悲鳴が聞こえた。知らない男子生徒の首をあのメガネの城金が掴んでいた。

「ラッキークローバー!」

 城金の掴んでいた男子もまた砂になって地面に蒔かれた。そうして城金は執念深い眼差しで由里を見止め、手にした詩集で間に立ったタクミを叩き飛ばす。

「タクミっ!」」

 由里の絶叫が木霊した。朱川はそんな由里を黙らせる為に頬を打つ。地面を伏す由里に朱川は1枚の、インスタントの写真をチラつかせる。それは海東が持っていた地面の敷石の隙間から芽吹いた黄色い花のそれだった。

「これをファイズが持っていた。なぜかな?」

「知らないわそんな事!」

「やめろぉぉぉ!」

 困惑する由里を助ける為、這いつくばっていたタクミが起き上がり再び城金に向かっていく。

「ガヤAは引っ込め!」

 城金手にする詩集にその拳を受け止められ、詩集の角をこめかみに叩きつけられもんどり打って転ぶタクミ。拍子にアタッシュから手を放し、放れたアタッシュはどこまでも敷石を転がった。

「問題は写真を持つ者は友田由里の交友関係にある人物だという事だ。そしてその中で士とも接触のあった人物。となるとただ1人しかいない。」

 ゆっくりと拍手しながら現れた男がいた。ちょうど由里とタクミをラッキークローバーの2人と挟み打ちする形に。なぜだろう。その素朴な笑顔は、素朴な程に害意を醸し出さずにはいられない。
 黒のやや草臥れたウォーキングシューズが、転がるアタッシュを踏みつけて止める。そこからスラリと長く伸びた足、同じく細身の長い身長は、細面の顔立ちと相まって威圧の無いものの圧倒的な存在感を柔らかくわき出している。

「返せ!お願いだ!」

 タクミは血相を変えてアタッシュを取り返そうとする。

「イヤだね。これはボクの獲物だ。」

 ワンステップでタクミの伸ばした手を躱すのは、海東大樹だった。

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