2011年2月22日火曜日

3 ファイズの世界 -夢の狩人- その22









「ムム、素晴らしい、士君随分腕を上げたね。」

「イヤイヤお爺ちゃん、これは由里って子が士クンのカメラで撮ったものです。」

 どうせそういう事でしょ。

「どっちでもいいだろ。」

 あ、ズボシだったんだ。
 士クンはどうやらこの世界でやるべき事を済ませて帰って来たようだ。またまたあのCOMPLETEのカードを眺めて、シンボルが1つが増えた事に喜んでいる。
 ワタシは、ずっと倒れたユウスケを看病していた。今も前髪を逆向けて絞ったタオルをデコに充てた。もうこの世界に来てから何回やった事だろう。最初は唸って汗が引かなかったが、今はようやく落ち着いて、ワタシも適当に目を離して家の事ができるようになった。

「これは、士クンの写真ですね。これからも2人、同じモノを見ていくんでしょうか・・・」

 もし大好きな人がこの世界で怖れられている怪物になって、それでもってこの世界で一番頼りになるヒーローだったら。
 ワタシなんでこの写真をずっと眺めてるんだろう。ワタシいったい何を考えてるんだろう。

「ユウスケ、」

 !

「・・・・・、ここは・・・」

 唐突にベットで寝ていたユウスケが起き上がった。お爺ちゃんがまず驚いて、振り返ったワタシは声も出なかった。士クンは、まるで敵意の眼差しだった。
 あまりにもオカシなユウスケの姿。
 何がオカシイかって、飛び起きたユウスケの眼は血走ってるにも限度がある程赤くて、髪の毛なんか逆立ったままピンピンで寝癖どこじゃなくて、序でにこんな事まで言い出したところだ。

「オレ!参上っっっ!」

 一同、愕然。

 静まりかえった写真館に、背景ロールの音が今日はヤケに大きく聞こえた。

「曼荼羅・・・」

 士クンはその風景画をそう言った。
 再び降りてきた背景は遠近法で描かれた絵だった。子供が書いたような素朴な動物や人間が、海を割った中央の大地を次から次へ手前に歩いてくる。その奥には光の中で神っぽいモノが歩く生き物達を見守っている。これはここまでなら聖書の縮図で、士クンが言うなんとかにもなんとなく構図が似てる。でも、それを一切合切台無しにするのは、人々が歩いて出てくるのは普通なら舟のはずが、カモノハシに似た電車だ。

「オレっっ!参上ぉぉぉぉ!」

 次の世界への旅が始まった。

0 件のコメント: