2011年6月11日土曜日

4 アギト・電王の世界 -魂のトルネード- その1











「オレ、参上っ!」

 外へ出ると光写真館はログハウスの外観でなにもかもが静まりかえっていた。

「大体分かったから、ユウスケから離れろ、このイマジン。」

 見渡す限り人家は無く、のどかな畑と生い茂る林と呼び合う野鳥が散在している。やや肥料の臭みが鼻につく。
 その静寂をかき乱し、柔らかな土を踏みしめる赤目のユウスケが叫び、

「てめえ、何モンだぁ!」

 なぜか郵便配達の制服を着込んで速達用のバックを釣り下げた士がそれに呼応する。
「聞きたいのはオレだぁ!」

「今時俺を知らねぇたぁ恥ずかしい野郎だな!」

「・・・・、御託は面倒だ。」

 『イマジン』と士が呼んだユウスケのズボンの袖からどういうわけか砂が大量にこぼれていた。
 士は、もうこんな事にはある程度慣れてしまった。世界に到着し把握する間も無く向かってくる脅威に対処する。今回もそれしかない。
 士はドライバーを腰に充てた。

「変身」

『KAMEN RIDE DECADE』

 9つのシンボルが縦横に走ってディケイドが姿を現す。

「おめえも変身できんのか、オレがパス持ってねえと思ってイキがりやがってぇ。だがなオレもちゃ~んとこの体の事は分かってんだゼ。いいか何とか野郎、最初からクライマックスだせ!」

 赤目のユウスケ、左腕を前へ伸ばしくの字を作るように右腕をやや後ろへ伸ばす。すると腰から『アマダム』が出現。ユウスケの肉体が変質していき、赤い体皮が露出する。『仮面ライダークウガ』が、出会って以来ディケイドの眼前に対峙した。

「自分の解説が多い!」

 ディケイドはその変身を黙って見ていない。既に近接し、右ストレートをその特徴的な胸筋に打ち込む。

「色もオレとマッチングぅ、ついでに角が2つあらぁ、こりゃちょうどいい。ん?てめえ、弱えぇな。」

 だが微動だにしないクウガ。頭部の触角を両手でなぞって受け身すらとっていない。

「こいつまさか」

 数撃の拳を食らわせるもののまるで意に介さない敵、一旦飛び退くしかないディケイド。

「いくぜいくぜいくぜぇぇぇ」

 だが反対にがに股で急接近するクウガ、突進と拳の合力が、やや重心を崩したディケイドの顔面にヒット。

「精神体か」

 転倒し、大地に拓を作るディケイド。だが打ち付けられた勢いを殺さずバック転で立ち上がろうとする。

「もっといくぜいくぜいくぜぇぇぇ」

 だがクウガも追い打ちをかけ手と足を何度も繰り出してくる。それをさらに転じて回避するディケイドだったが、

「なら前の世界と同じだ。」

 拳と拳が組み合って制止、

「急に止まるなぁ」

 前のめりで姿勢を崩すクウガを尻目に立ち上がるディケイドは、カードをバックルに装填した。

『FORM RIDE KIVA DOGGA』

 オルフェノクと同じと踏んだディケイド、前回と同じくキバのフォームを取る。巨大な拳の形状をしたハンマーを持つ『ドッガ』に。

「容赦しないぞ!」

 背を向けた態勢のディケイド-キバ、向かってくるクウガめがけて、振り返り様ドッガハンマーを180度の遠心力を込めて撲つ、

 神様ぁぁぁぁ

 と一撃腰のベルトに食らって数メートルもっていかれ大の字で型を作るクウガ。全身からハンマーのエネルギーなのかそこらじゅうに漏電している。

「容赦しねえって分かっただろ。早く出てこい。」

 ハンマーを引きずり土を盛り返しながら威圧的に近づくディケイド-キバに、飛び起きてガニ股のまま指差すクウガ。いつのまにかその体色とバックルが青に変わる。ドラゴンフォームだ。

「ここからは徹底的にクライマックスだからな!」

 ドラゴンクウガがスタンディングスタートで構え視界から消失、ディケイド-キバの背面に回り込んでスレ違い様頭をハタいた。振り返るディケイドの背面をまた今掌で打たれる衝撃が走る。

「光る~光るとぉしばぁ~」

「お!」

「回る~回るとぉしばぁ~」

「げ!」

「走る~走るとぉしばぁ~」

「唱う~唱うとぉしばぁ~」

「輝く光」

「光」

「強い力」

「力」

「みん~なみんなとぉしばぁ~」

「とぉしばぁ~のマぁク!」

 ポーズを決めるクウガ。

「なんて凄い技だ・・・・」

「ナニ、やってんですか!」

 唖然とするディケイド-キバに向かっていつのまにか外へ出ていた夏海が背後からツッこむ。

「ん・・・・・」

 しばらく頭を抱えて内省の世界に没入したディケイド-キバだったが、夏海の顔を見てなんとかため息をつく程度にまで回復する。

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