2011年2月22日火曜日

3 ファイズの世界 -夢の狩人- その8









 コートでは誰も1人きり。
 と偉大なる古人が言った。

「このラッキークローバーに挑むとは、生意気な。」

 校内に作られた特設のハードコート。ネットの片側に立つのは門矢士。しかし反対側に立つのは2人。ラッキークローバーの玄田と城金。残りの2人はコート外で傍観している。ラッキークローバーは卑怯というわけではない。

「1人じゃ物足りないな。2人がかり、いや3人がかりでも構わないぜ。」

 城金玄田を共にストレートで破った士が言い放ったからである。士にはなお息の乱れすら無い。

「あの力、やはりあいつがファイズ・・・」

 そう城金が叫び、玄田と同時にサーブを放つ。放った2つのボールは炎を纏って4つに分裂し、大きくカーブを描きながら、士を狙う。注主観イメージ。
 城金も玄田も士を抜く事を考えていない。その命を狙っている。これだけは事実。

「この技、」己の急所を逸らしつつもラケットで軌道を塞ぐ。「やはりこの中にファイズがいる。海東、オレの勝ちだ。」

 と意地の悪い笑みを浮かべる士に向かってラッキークローバーの火の玉サーブが再び放たれる、
 2つのラケットを持つ士、
 体ごとスピン、
 2つのサーブを竜巻と化して弾き返す、
 弾き返した弾はそれぞれ正確に打った者の心臓の位置に直撃。
 無様に転倒する城金と玄田。

「とうとう我々の前に現れたな。ファイズ!」

 ツッコミどころが違うだろう、というのはさて置いて。

「ファイズ?」

 士、犯人捜しをしていた者が突如犯人扱いされる衝撃。

「しらばっくれるな。正体を見せろ!」

 玄田が吠えた。吠えたと同時にその像が人のそれから彫刻の怪物のように変化する。その像は伝説の龍。『ドラゴンオルフェノク』。城金もまた変化している。 ムカデの『センチピードオルフェノク』。

「そうか、どうりで気にくわなったはずだぜ。」

 事態を即座に呑み込んでバックルを取り出す士。

「変身!」

『KAMEN RIDE DECADE』

「ファイズじゃない?」

 そのショッキングピンクのボディにどよめくオルフェノク達。

「お互い、見当外れをしていたな。」

 最初に、一般人はファイズを警戒する必要が無い事を士は見抜くべきだったろう。

「ファイズで無かろうと、我々の正体を知ったぁ!」

 玄田だったドラゴン。その骨格に対して大きすぎる膨れすぎている硬質の前腕を地面に叩きつけた。裂けるハードコート、裂け目がディケイドの足下まで伸びる。足場を崩すつもりだ。しかしディケイドの方が速い。

『FINAL ATTACK RIDE dededeDECADE!』

 既に跳躍、光のカードは縦列でドラゴンまで伸び、斜め上方からディケイドが突っ込んでいる。

「ぐぁ」

 爆砕、

 ドラゴンがディケイドの一撃で、立体を構成する力を失い爆発的なエネルギーを発しながら灰と化す。

「うぁぁぁぁ」

 それを眼前で目撃したセンチピード。即座回れ右してコートから出ようとする。

「大丈夫だ、大した奴じゃない。」

 そのセンチピードの眼前に立ちはだかるのは同じラッキークローバーの百瀬だった。

「しかし、見てみろ、玄田を瞬殺だぞ!」

「おまえが言ったんだ、奴は、ファイズじゃない。」

 青白い炎をあげるドラゴンだった灰の照り返しを受けながら、百瀬は笑った。

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