2011年2月22日火曜日

3 ファイズの世界 -夢の狩人- その9









「ディケイド、今日こそおまえを、」

 そのコートを網の外から傍観する1人のみすぼらしい男がいた。みすぼらしいと言えば鳴滝以外無い。猛り狂ったように何かを為そうとしたが、それはもはや永久に為す事は無い。

 背後から音も無く駆けてくる青年、
 跳躍、
 鳴滝頭上で宙を前転、
 立ち塞がった時、ようやく鳴滝が気づいた。

「海東大樹・・・・」

 たじろぐ鳴滝だった。

「やぁ、」海東は指先で銃を作って鳴滝に向ける。「鳴滝さんじゃありませんか。」

 その声はあえて爽やかだ。

「君は・・・」

 巨大な校舎は、いつも日差しを遮って学園に巨大な影を作る。鳴滝も海東も日の光の下にいない。

「貴方も、ボクの邪魔をするつもりじゃないでしょうね?」

 海東は鳴滝と横並びする。

「君の恐ろしさは知っている。止めておこう。」

 やや背後に回って鳴滝の視界から外れる。
 振り返る鳴滝。
 既に背後に人の姿は無い。

「ねえ、変な奴でしょ。」

 その代わりというべきなのかなんなのか、一匹の白いコウモリのような、ワッペンのようなものが飛んできた。ユウスケをクウガの世界から転移させたあのキバーラだった。この登場は決して偶然ではない。
 掴む鳴滝。

「奴め、何を考えている・・・」

 周囲を見渡し慌てて藻掻くキバーラを、コートのポケットに押し込んだ。

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