2011年2月22日火曜日

3 ファイズの世界 -夢の狩人- その4









「ベルトの罅も消えて、もう意識もはっきりしている。」

「キバーラが咬んで命を吹き込んでくれたおかげで、ユウスケもだいぶよくなりました。あの子も本気でユウスケが大好きみたいですね。泣きついてましたもん。」

 峠を越えたユウスケを置いて士クンはこの世界を撮ってみるという。私は多少安堵したのか、士クンのその格好が気になり出した。玄関から出ると士クンはその世界の役割を与えられるのが毎回の恒例。

「ニタニタするな!」

 私の顔つきが士クンには気に入らないみたい。ざまあみろ。20歳にもなって高校生の格好させられてるんだから、もういびついびつ。どのお店の方って感じ。

「その格好なんですか~」

 攻められる時には徹底的に、は士クンがよくやる手だ。この際イジメてやろう。

「全く、オレという奴は何を着ても似合っちまうな。」

 と強がる士クンが、クソ、と舌打ちもした事を私は聞き逃さない。思い切り笑ってやるよりも、抑えて失笑してやった方がダメージが大きいだろう。

「騒ぐな、周りが見るだろ。」

「だって、そんな格好するのは反則です~。」

 士クンは背を見せているが、もう顔の赤みが手に取るように分かる。この次の世界ではランドセルでも背負って欲しいな。

「と、とりあえず、この学校にいってみるぞ。いいか夏みかん、おまえは、おまえはユウスケを見てるんだいいな。」

 赤い顔を最後まで見せずに、セントスマートブレインハイスクールと書かれた生徒手帳をチラつかせた士クンだった。

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