2011年6月11日土曜日

4 アギト・電王の世界 -魂のトルネード- その14








 戦場の設定は警備課の総力を以て完了している。半径200メートル以内の民間人は避難完了しており、通路という通路もパトカーで塞いでいる。前回と違って丸棒がG3-X周辺の援護に立たないのは、それこそ前回の問題点を単独行動という解決策で改善したからである。全責任を未確認対策の八代に押し付ける形な訳だが。

「パワーが足りない。」

 突進する『ガードチェイサー』。そのハーレーダビットソンよりも大きくパワフルなボディが、グロンギの片腕で押し止められる。なおエンジンを吹き上げるも、地面を空回りし煙を吹き上げる後輪。搭乗するG3-Xは即座に飛び退いてガードチェイサーを放棄。

「八代警部、敵グロンギ48、49号と交戦開始。」

『G3からのモニターで見えている!イチイチ報告する必要はないぞオノデラ!』

 警視庁呼称48号は『メ・ギノガ・デ』、49号は『ズ・メビオ・ダ』。共にユウスケが他の呼称で倒した事がある。

「止まらない」

 一方のG3-X海東。GM01をアクティブに連射。彼の肉体が何を差し置いても先制の銃撃を選ぶ。ギノガとメビオに確実にヒットする弾幕。しかし2体のグロンギはまるで何事も無いかのように悠然と間合いを詰めてくる。

『武器に頼らないで、海東君。』

「ウザイな雑音、」

 物足りない火力にグチりながら、次の海東のドクトリンは動きを選択している。相手の攻撃を間一髪で躱して至近からの弾圧で翻弄する。しようとする。

「鈍い」

 だが最初の一歩を踏み出した時点でギノガの拳を腹に受けてたじろぐG3-X。続け様メビオの回し蹴りが海東の肉体を飛ばし意識を飛ばしかける。アーマーの防御力が辛うじて海東を救っている。

『防御を固めて、テストでの動きはどうしたの?!頭を揺すられなければ、活路は見い出せる、海東君、聞いてる!』

「本当に、ウザイ女。」

 海東が選定で見せた動きは、G3としては最大限の軽快さである。しかし海東がいつも求める域のフットワークには程遠いのである。
 装甲からエアの抜ける音がする、
 それは頭部マスク、
 前後に割れて、左腕でマスクをもぎ取り、海東が素顔を大気に晒す、
 次いで胸部アーマーが背と左右の胸の計3つに割れ、腕が外れ、足を脱ぎ、ついにはアンダースーツだけとなる海東、

「海東さん、何を?」

 ユウスケは通信しようかためらい、反射的に自分の素性まで語らなければならない事まで思い巡らせ留まる。海東は既にディエンドライバーにカードをセット、高々と掲げている。

「変身」

『KAMEN RIDE DIEND』

 3つのシンボルが縦横に駆け巡り、海東に折り重なると、G3-Xよりも圧倒的にスリムなスーツへと具現化、締めに頭頂からシアンのスリッドが10枚仮面に刺さる。着脱されたG3の転がるコンクリートにディエンドが立つ。

「うむ、こっちの方がしっくり来る。」

 まずギノガに向けてドライバーを斉射。先と同じくまともに受け止めるギノガだが、先と違うのは圧倒的な火力。進む事も堪える事もできずたじろぐ。
 その間メビオが側面から急接、先と同じように回し蹴りを入れる。しかしディエンド、ワンステップで躱し、ゼロ距離から連射。メビオが吹き飛び、背後で立ち上がりつつあったギノガに衝突。

『KAMEN RIDE DRAKE GYAREN ZOLDA』

 ディエンドでは聞き取れない言葉で叫びながら突進してくる2体のグロンギ。
 フットワークだけで躱して駆け抜け、対手と立ち位置を入れ替える形に。振り返ると召還した3体のライダーが眼前に見える。ディエンドのカメンライドは姿を変えるものでなく、ライダーを召還できる。
 ドレイクゼクター、ギャレンラウザー、ギガランチャー、そしてディエンドライバーの4門の銃口が一斉射、
 全身に圧倒的火力を食らうのはギノガ、爆散、メビオは持ち前の敏捷さで辛うじて躱した。

『現場、どうなってるの!映像が来ない!?』

 着脱した直後からG3-Xのマスクよりかすかに八代の無線が続けられていた。この段になって、それを拾い上げるディエンド。

「接触不良ですね。現在、グロンギを確実に殲滅中。」

 ディエンドの言う事は事実である。グロンギを確実に殲滅はしている。接触は自ら不良にした。

「一体あなたは・・・G3-Xを馬鹿にするんですか?」

 そんなディエンドの僅か十数センチのところまで近づくのはユウスケ。

「黙っていてくれるね?別に、誰が損するわけでもない。」

「士なら、どんな姿でも熟しますよ。」

 執拗な敬語を言うユウスケだった。

「ボクのように繊細じゃないのさ。それより、ほら、もう終わりだ。」

 ディエンドが指差す先にいるのは銃撃を逃れたメビオ。そのメビオが攻撃を受けている。ディエンドにでは無い。攻撃を受けたメビオは、押し倒され、陸に揚げられたマグロかシャケのように泥に塗れて悶え、ピックのような得物を左右から一撃、絶命、爆死した。

「グロンギ?違う、何だこいつら、人間の味方・・・」

 こいつら、即ち2体。ユウスケの記憶に無い、アリの触角を頭に生やした漆黒の異形がグロンギを始末した。

「セカイヲミダスナ」

 2体のアントロードが、ディエンドとユウスケに襲いかかってきた。

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