2011年6月11日土曜日

4 アギト・電王の世界 -魂のトルネード- その37









「ご免なさいは?」

 見下ろす少年の目は冷めている。

「リョウタロ・・・」

 頭を抑え込まれ動けない電王は、首が痙攣する程に回してみたが、視界に入る事が無く、それでも何度も振り返って見えない少年の声を聞く。

「ご免なさいは?」

「以前のオレだったら、おめえとの根比べに付き合ってやったかもしんねえ、けどな、」

「けどこいつはもう、外を見ちまった、キサマのところでは決して見られなかった外をな、こいつはおまえの頭の中だけの存在ではもう無いんだ。」

 ディケイドが叫ぶとライドブッカーが光り輝くのを感じた。

「汚れたコレはもう、要らない!」

 光が厚みを増し、少年の姿を覆い隠す。

「ふざけるなぁ!」

 バッファロー転倒、

「ぉわ」

 強引にバッファローを撥ね除けて、電王は立ち上がった。

「おめえがじゃねえ、オレが、このモモタロス様がいらねえっつうんだ!」

『FINAL FORM RIDE dededeDENOO!』

 電王が叫ぶ。ディケイドがカードを装填する。

「ようやく自分の名前思い出したな。おい。」

 背後から電王の頭を殴りつけるディケイド。

「てめえ!」

「ちょっとくすぐったいぞ。」

「くすぐったいどころかイテえ、あワワ」

 ディケイドが電王クライマックスに触れると、全身の仮面が剥がれてディケイドの四肢の先にそれぞれ張り付き、剥がれる序でに人間の肢体がいずこかを小石を飛ばしたように飛んでいく、仮面の取れた電王の頭が胴へメカニカルに落ち込んで、前部アーマーが2つに割れて紅く禍々しい胸板が出現、腕もまた金属質の装甲から有機質の紅い甲羅に変わり、胴が回転、再び首がメカニカルに上がってきて、額に2本の角が生えた、1匹の赤鬼がその身を晒す。『モモタロス』の姿が最終フォーム。

「なんか飛んでったな・・・、オレはこいつに肩車でもしろというのか?」

 自分に張り付いた右前腕のソード、左前腕のアックス、右足首ロッド、左足首ガンのそれぞれの仮面を眺める。

「ようし、オレもクライマックスだぜ!」

 とデンガッシャーを合体させ、ソードモードにしようとするも、勝手にロッドへチェンジし、しかも刃が出るどころか1枚の布が纏わり付き、風になびく。

「旗持ってどうすんだよ、」

「オッかしいなぁ~」

 と頭からクエスチョンマークを出しているモモタロスに、迫る影が1つ。

「ふざけすぎだキサマら!」

 それは『至高のトリアンナ』を振りかざす水のエル=バッファローロード。デンガッシャーで受け止める電王だったがしかし、

「なんでぁぁぁ」

 あっさり薙ぎ飛ばされる電王。

「弱っ」

 腰に手を当て電王の描く放物線を追うディケイド。その彼にもあの黄金の杖が振りかぶられる。

 折れる、

「ぁ!おまえ、・・・・これ、主の借り物なんだぞ、ナニしてくれてんだコラ。」

 『至高のトリアンナ』、あっさり折れた。

「オレのせいか、オレガードしただけだぞ・・・」

 ディケイドはただ左前腕で頭を守ったに過ぎない。ただそれだけで『至高のトリアンナ』が真っ二つに。バッファローロードは威厳もなにもかもかなぐり捨てて動揺し、受け止めたディケイドもまた唖然とした。

「ええい!」

 バッファローの拳がディケイド胸元にヒット、しかしリキみもなく微動だにしないディケイド。ディケイドの方が首を傾げている。

「これはまた、チートな。」

 拳を繰り出すディケイド、バッファローの鼻先を撲つ、小石のように吹き飛ぶアンノウン。吹き飛んで橋を粉砕し飛沫を上げて落下。

「なんだ、おまえは、何者だ?!」

 水面から起き上がると鼻から水が滴るバッファロー。

「二度は言わん。」

『FINAL ATTACK RIDE dededeDENOoo!』

 右脚を前に中腰で構えるディケイド、四肢の先にあった仮面が全て右脚の腿から足首に集結縦一列に並ぶ。

 ブフォ、

 起き上がって飛沫を飛び散らせ向かってくるバッファロー、一直線にディケイドへ。

 ハァ、

 ディケイドの上体が浮く、突進するバッファローの眉間に打ち込まれる蹴り脚、両者の運動量全てがバッファローに注ぎ込まれる。

 ぉぉぉぉぉぉ、

 推し返され、仰け反り、光輪を頭上に浮かべて絶叫、爆殺するバッファロー、ディケイドの目に炎が映る。

「いかんよな。命のやりとりにイジメの要素入れちゃ。」

 ディケイドはそう言いながらも平手を交互に2回叩いた。

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