2011年6月11日土曜日

4 アギト・電王の世界 -魂のトルネード- その6








 ドライバーを腰に宛がう、
 ドライバーはベルトとなってブッカーと共に士の腰に固定、
 ドライバーの両端を握って拡げると、トリックスターを軸に中心バックルが回転、カード挿入口が上向きに顕れる、

「変身」

 士はDECADEのロゴと姿のデザインの入ったカードを翳し、装填、
 左右から両手を交差させるようにドライバーを元に戻す、

『KAMEN RIDE DECADE』

 士の周辺に光のロゴが浮かんで士に交錯、マゼンダを主体のスーツと化し、最後にその頭部に10の光のスリッドが入る。

「変身した・・・?」

 芦河ショウイチにとってそれはひさしぶりの感情の起伏だった。
 変身したディケイドに、その頭部の尾を伸ばして首に絡ませる蠍の異形。引きずり出して荒廃していた畑を踏みにじって柵を跳び越え、川岸に踊り出た。

「ゾボボゲバギバサビダ」

 ディケイドはグロンギ語を発しながらブッカーで蠍の尾を斬る。

「ヒトハヒトデアラネバナラナイ」

 蠍の異形の頭上、空間を割くように渦状の平面、ハイロゥが現出、手を差し込む蠍の異形、掴むのは得物、小振りの斧と蠍の文様の入った盾。

「光輪、グロンギじゃない!」

 何かに気づいて敵が無防備に近いにも関わらず自分から飛び退くディケイド。

「アンノウン、あれがアンノウン。そうか、アギトの世界、思い出してきたぞ。」

 自分の迂闊さに気づいたディケイド。眼前の対手は『レイウルス・アクティア』の名を持つスコーピオンロード。ディケイドは気づいていないが、左肩の一枚の羽根と、背中に2つ突起がある。
 蠍は距離を置いた対手に『冥王の斧』を投擲、
 回転しながら飛んでくるそれを、捻って躱しカードを1枚取り出すディケイド、

『ATTACK RIDE BLAST』

「後ろ、ウシリョ!」

 ガニ夏海がイラ立ってシャクれ顎になりながらディケイドへ罵声を浴びせる。

「分かっている。」

 ブッカーを連射するディケイド、
 その後方より避けたはずの斧が回転しながら折り返してくる、重心を振り回し軌道を描くというよりは、自ら意志を持っているよう、
 撃って即横転するディケイド、
 光の弾幕がスコーピオンに迫る、

「グロンギならこれで終わったぞ。」

 弾くスコーピオン、
 『冥王の盾』寸前で無数の光弾が制止、盾を振りかざし上空へ流す。そうして弾いた上で回転しながら戻ってきた斧を受け止めるスコーピオンは、得物を高々と上げ突進。

「教えてやろうか。」

 夏海が畑を踏みしめながら眺める隣に、あの熊髭だらけのショウイチが立つ。おそらく何日も日の光を浴びてなかったのだろう。まだ目元に手を翳しながらディケイドに向かって、その干からびた声を発した。

「知ってるのか?!」

 いままで対手にしてきたどの等身大の敵よりも膂力の差を感じるディケイド、対手の片手の斧を両手持ちのブッカーで祓うものの、時に打ち付けてくる盾に後退を余儀なくされる。

「奴は、動物だ。習性で動いている。」

 隣の夏海がドスを効かせた声で、なんだオメエ、まず名前名乗れ、もっと分かりやすく言え、動物が武器使う訳ねえじゃんバカじゃねえの、などと怒鳴りまくっている。

「大体分かった」

 背を屈め足払いするディケイド、
 だがスコーピオン転倒する事は無い、アンノウンの身体能力は対応して跳躍、後ろに退いて距離を置く、
 だがディケイドにとって転倒しようが距離を置こうが、カード装填の隙さえできればそれで良かった。

『KAMEN RIDE RYUUKI』

 光と共に龍騎へと姿を変えるディケイドに、遠間から回転する斧が襲い来る。

「なにやってんだバカヤロ!」

 まともに胸に食らう龍騎、
 後方へ転んで起き上がった時には既にスコーピオンの肉迫を許してしまっている。打たれまくるディケイド-龍騎。

「さっきより一方的じゃねえか!」

 夏海の叫ぶ通り、今度は得物すら無く受け流すだけになったディケイド-龍騎、仮面と胸プレートは歪み、肩アーマーは欠け、バイザーなどはもはや欠落している。
 ディケイドのスペックは、パンチ力4トン、力キック8トン。一方龍騎のそれはパンチ力2トン、キック力4トン、単純に身体能力は半分にダウンしている。分かっているはずの状況だ。

「ぐわっ」

 案の定川に落とされるディケイド-龍騎。
 光輝く水面に波紋も無く落とし込まれる。
 川に膝の下を浸してなお追い打ちをかけようとするスコーピオン。だが斧でどれだけ川底を攪拌しても、龍騎の姿が発見できない。

「オレは鏡の世界だ!」

『FINAL ATTACK RIDE ryuryuryuRYUUKI!』

 水面より波も無く現れるディケイド-龍騎、 炎を纏って蹴撃、
 盾でガードするスコーピオン、
 しかし川から押し出され、なお水平方向に圧迫され拮抗、

「仕上げだ!」

 蹴撃で盾と拮抗する態勢のままディケイド-龍騎は次のカードを装填。

『ATTACK RIDE DRAGREDER』

 同じく水面より現れる紅き龍、全長6メートルの超大な身で天空を泳ぎ、スコーピオン横合いに回り込む。

「頭の差だ。」

 ドラグレッダーの口が大きく開く、
 吐き出される爆炎、
 タイミングを計ってスコーピオンから反転離脱するディケイド-龍騎、
 盾を翻すも間に合わず呑み込まれるスコーピオン、
 呑み込んだ爆炎は、アンノウンを跡形も無く消し去った。
 龍騎の最大の特徴はとどのつまりモンスターの使役に限る。

「オレは信じてたぜぁ!」

 単純に男声で叫んで抱きついてくる夏海に、苦い顔をしながらされるままのショウイチ。
 ディケイド-龍騎は一度だけ手を交互に祓い、バックルの左右を引いた。

「習性を繋いでるだけの動きで、オレの頭に勝てるわけは無いさ。それより、」

 2対1で頭もクソもねえだろ、という夏海の言葉を無視して互いに視線を合わせる士とショウイチだった。

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