2011年6月11日土曜日

4 アギト・電王の世界 -魂のトルネード- その3









「G3-Xを出したのかぁ!」

「またAIの暴走がぁぁ」

「こぅらぁぁぁぁぁ」

「すいませんっっ、パワーが抑えられなくて、」」

 倉庫立ち並ぶ街道。
 この人気の無い一帯まで追い込んで、廃屋と10台のパトカー、そして40丁のリボルバーで全包囲するのが未確認対策本部のセオリーである。未確認に対しての決定的打撃力が極小の質量しか所有できない本部にとって、いかにこの囲い込みの為のストッピングパワーに知力を尽くすかが戦局を左右する。

「あれは、グロンギ・・・・オレは、帰ってきたのか・・・・」

 『メ・バヂス・バ』、公称『未確認47号』は、警官4人を負傷させてパトカーの包囲を突破し、今伏したまま朦朧としている小野寺ユウスケに、その針先を向ける。幻覚だろうか、それとも他に未確認がいるのだろうか、なぜかユウスケの頭をパトカーが一台今飛び越えていったように見えた。

「なぜこんなところに倒れている!」

 ユウスケの眼前に立ち塞がり、47号の腕を天に向けた青い影が1つ。たとえユウスケが五体満足であったとしても、それが何者なのか理解する事ができなかっただろう。

『G3-Xが最高傑作だという事を証明して。』

 ユウスケの耳に妙に籠もった音の女声がその青い影から聞こえた。よく見ると影は金属の鎧のようであり、車やバイクの外装に近い質感は近未来的なロボットのようにも見えた。

「ライダー・・・・」

 金属の鎧が振り返り、ユウスケに逃げるよう促す。振り返ったマスクは、なぜだろう、自分の変身した姿を彷彿させた。

「なんでこんなところにいる、避難勧告が聞こえなかったのか!」

 ユウスケは立ちくらみを覚えながらも、腕だけで上体を起き上がらせる。いったいどこまで飛ばされればクウガの肉体にここまでのダメージを負わせられるのだろうか。眼前のロボットはそんな事情が分からずただ闇雲に逃げるようユウスケ眼前のトレーラーを指差している。だがユウスケは逃げられなかった。右の足が動かない。明らかに折れている。

「GX05アクティブ!」

 トレーラーから飛び出してきた紺の制服が凛々しい婦警が見える。ユウスケに向かって一直線。

「いいんですか!前回もこっぴどく上から叱られて・・・」

「前を見て前を!発砲許可します!」

「知りませんよ!」

 おそらく先程ロボットの方から声が出ていた主だろう、ユウスケは時にそういう錯覚をよくするが、今向かってくる婦警はユウスケの知っている顔のように見えた。
 青いロボットが中折れ式の銃を取り出す、
 銃どころではない、それはガトリング式の機関砲であり、人間の両腕で抱えられる容積ではない、
 まさにそれは乱射だった、照準をまっすぐ向け発射したものの、あまりの威力にロボットの全身が安定せず機関砲の銃身があらぬ方向へ踊る、
 パトカーを半数爆破、廃倉庫の柱を打ち抜いて半壊、電信柱が倒壊、歩行者用信号がユウスケ眼前に倒れてきた、
 発射と同時に危機感を覚えた未確認47号、咄嗟に振り返って逃げたが、左から右へ両サイドのパトカー共々弾幕を受けた挙げ句左右からの車体の爆破で肉片も残さず撃滅した。

「退避っっ!」

 このロボットの傍迷惑な挙動に血相変えたのは、味方の警官40名。そしてユウスケの足を押さえて即座に警棒と自分のシャツで手当した婦警。
 結果として負傷者は出たものの、奇蹟的に動員警官全て無事であり、咄嗟にユウスケに被さった婦警も跳弾は免れた。

「すいません、すいません、ホントすいません!」

 ユウスケが聞こえたのはそんなロボットの悲鳴に近い恐縮した謝罪だった。

「アナタ、民間人?立ちなさい、折れてると思うけど、今立たないと火に捲かれて死ぬ事になるわ。立ちなさい!」

「ハイ・・・・さん」

 ユウスケは折れた右脚に重心を置いて無理に起き上がる。動けない足を軸にするしかない。激痛はユウスケの神経を再び断ち切ろうとし、未だに婦警の顔が、ユウスケのごく近しい人間の顔として映る。

「よし、私に思い切って体を預けて、あのトレーラーに行けば、ひとまず安心だから、そこまで歩きます、良いわね!」

 触れた肌の感覚から匂いまでもが記憶とダブっていくユウスケは、その後自分がどういう行動をして病院までいったか覚えていなかった。

「アネ・・・・・さん」

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