2011年6月11日土曜日

4 アギト・電王の世界 -魂のトルネード- その32








 ガードチェイサーが高架下から日の光に晒されると、大量のアントロードを手当たり次第に片付けているエクシードギルスを視界に入れる。

「こい!」

 ユウスケは即叫んだ。

「何処へだ、」

 獲物の殺害に野生が収まらないギルスはそれでもユウスケという男に答えた。

「G3ユニット、そこがアンタの居場所だ。」

 歩み寄るG3-X。

「馬鹿な、オレは戻れない。絶対に!」

 自らの変化した両掌を眺め答えるギルス。
 その言葉を遮るようになお語りかけるユウスケ。

「八代の姐さんが、アンタを待ってるんだ!」

「ショウイチ・・・・」

 G3のモニタは、八代の乗るトレーラーに送信されている。彼女は何かを語りかけようとしてマイクを自分の元に向けたが、あまりの言葉が記憶と共に脳内を駆け巡り、結局マイクから手を放した。

「オレの呪いが分かってたまるか!」

 突如G3に組み手して共に河川に落下するギルス。河川の水位は数センチ程度。体内の細胞に水が染みこんでいくのを実感するギルス。

「アンタは!」

 ギルスの左拳を払い除けたG3の右掌は、全くユウスケの動態反射の賜である。

「ぐぉ!」

 払って仰け反るギルスをその流れに逆らわず押し倒し、頭を押さえ込むG3-X。ユウスケ1348番めの技だ。

「自分がアンノウンに追われてると知って、八代さんを巻き込まない為に、姿を消した、」

 八代さんと姐さんが統一できないユウスケ。

「それしか無いだろ!オレが逃げるしかぁ!」

 この声はG3を介してトレーラーに全てモニタされている。

「八代の姐さんはとっくに気づいていたよ。」

 だが2人は他に気づかなければならない事があった。間近に数匹のアントロードと、そして獅子の顔を持つ『地のエルロード』。

「チリカラウマレシモノドモヨ、チリニカエルガイイ。」

 アンノウンが同じ河川の上で対峙する、今まさに地のエルが握り拳に顆粒状の物質をわき出していた。

『小野寺君、GX-05、アクティブ。』

 だがG3-Xの方が早い。

『解除シマス』

「はぁ!」

 既に重機関銃を腰裏から取り出してパスワードを入力、稼働させるユウスケ。120もの弾幕が一斉にアンノウンに捲かれ、水飛沫と硝煙と爆音に塗れながら破砕。

「このパワーは、」

 アンノウンを圧倒したG3に唖然とするギルス。

「オマエハアギトデハナイ、ナゼコレホドノチカラヲ。」

 そして唯一耐えた地のエル。

『GXランチャーアクティブ!』

「姐さんは、もっと強くしようとしている!」

 撃ち出されるロケット弾、まともに喰らった地のエルが為す術も無く爆散する。残ったのは、地のエルのコアである球体。フワフワと宙を漂い、河川の上、橋の袂まで舞い上がる。

「なぜか?アンノウンを倒す為だ。」

 ユウスケはギルスに夏海から貰った手紙を手渡す。人の姿へ戻って受け取る事無く呆然と見つめる芦河ショウイチ。

「姐さんは強いんだよ、オレや、アンタが思っているよりずっと。守って欲しいなんて思っていない。それどころか、アンタを守るつもりだ。」

 モニタ越しにそれを聞いていた八代淘子は、トレーラーの中に自分しかいない偶然に感謝した。一息だけ置いてマイクを近づける。

「芦河ショウイチは、決して逃げた事の無い男よ。」

 G3-Xのスピーカー越しに、懐かしい声がショウイチの耳に届く。

「おまえ・・・・、姐さんって言うな、」

「なに?」

「アレは、オレの作った朝飯でしか起きん女だ。」

 ショウイチは手紙を手に取った。

「おまえじゃない、小野寺ユウスケだ。芦河ショウイチ。」

 ユウスケの表情を、G3-Xのマスクは隠している。

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