2011年6月11日土曜日

4 アギト・電王の世界 -魂のトルネード- その33








「ダメだよ、みんなの迷惑になっちゃ。」

 そして橋の上には少年、リョウタロウが立ち、その体内に球体を受け入れる。
 徐に『至高のトリアンナ』を振り上げる。河川にいるユウスケとショウイチの頭上に、巨大な光の十字架が出現降下、

 うぁぁぁ

 叫ぶ両者は石ころのように川の中を転がる。

「どうしてそんな風になっちゃうのさ。」

 リョウタロウから分かれて並ぶ3つの人の像、それは先に死んだはずの風のエルと地のエル、そして新たに出現したクジラの顔の『水のエルロード』。

「ボクが何をしたっていうんだ」

 リョウタロウはそう言いながら、トリアンナを水のエルへと渡す。水のエルの後方より迫り溶け込む暗い珠、それは、

「悪の組織は永遠だ。」

 水のエルの姿が、ユラユラと液状化し中から墨が吹いたように染まっていき、角が生え、牛の頭に変わる。もはや水のエルでもネガタロスでも無いものが誕生する。牛、鷲、獅子、そして人の顔が揃った。
 リョウタロウは倒れる2人の人間を指差した。

「人は力を得れば、必ず間違った道を選んでしまう。なぜなら、」

「なぜなら、人は愚かだから、か?」

「士、」

「おまえ、」

 革靴に水がはねる。悠然と現れたのその姿は郵便配達の衣装を着ていた。

「そうだよ!力を持ってこの世を間違えさせちゃダメなんだ!必要無いんだ!」

 リョウタロウは痛みを訴えるように叫んだ。

「ああ、確かに愚かだ。死んだ女の面影を追って全てを捨てようとしてみたり、大切な人を巻き込まない為に自分1人で逃げ続けたり、な。」

 その士の背を見つめるのはユウスケ。

「その友達の為に体を張ってみたり、な。」

 ショウイチの腰からバックルが浮かび上がってくる。それはギルスのそれと酷似しているものの、より金属質の光沢を帯びている。その中央の『賢者の石』より取り出すのは、白いバックル。

「な。」

 受け取る士の顔は卑屈に笑っている。

「愚かだから、転んで怪我してみないと分からない、時には道に迷い、間違えたとしても、それでも旅をしている。おまえに道案内してもらう必要はない!」

 士の左右に並ぶユウスケ、ショウイチ。だがこの世界にはもう1人いる。

「お~っい、オレを忘れるなぁ~!」

 ピチャピチャ音立てながら河川を走ってくる赤水着の光夏海。

「全部ぶち壊しだな。」とショウイチ。

「夏海ちゃん、ここまであの恰好でずっと走ってきたんだ。」とユウスケ。

「見るな、無視しろ、いくぞ!」

 士はライドブッカーを開いて何枚かカードを取り出す。士の手に握られた瞬間、その全てが輝き放って図柄が浮かび上がってくる。

「変身!」

 ショウイチ、左拳を腰に充て、右手刀を突き出す。一旦構えたそこから、腰に巻いたベルト左右に掌を充てる。すると肉体が光放って変貌していき、ギルスのそれではない、雄々しい仮面の姿になる。『仮面ライダーアギト』。

「おまえら揃ってシカトしてんじゃねえ!変身!」

 赤水着の夏海が小器用に片手だけでベルトを捲く、さらに無空よりパスを出す、パスを翳す、ベルトからファンファーレが鳴り響く、夏海の肉体から浮き出てくるアーマー、肉体に覆い被さり、最後に逆ハートの面がマスクとなって張り付いて左右に先割れ、釣り上がった巨大な複眼のようになる。『仮面ライダー電王』。

「釣られてみる~」

「泣けるでぇ~」

「答えは聞いてない~」

 その電王に向かって背後より迫る光珠3つ。

「おまえら来たか、これからが、クライマックスだぜ!」

 次々電王に向かって憑依する珠、再び鳴り響くファンファーレ、電王のアーマーがさらに変形し、両肩と胸に、『ロッド』、『アックス』、『ガン』の各フォームのマスクが浮かび上がる、仕上げに、あの釣り上がった複眼が花びらが開くように4枚に展開、

「剥けたぁ!」

 これが『クライマックスフォーム』。他と違って一段パワーアップした姿。

「赤いのの最大の強みは、チートな事だな。」

「赤いの言うなっ、偉そうに、ナニモンだてめえ!」

 その電王を冷酷な眼差しで眺めながら、カードを翻す士。

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ赤いの。変身!」

『KAMEN RIDE DECADE』

 9つのシンボルが縦横に走り士に重なる。マゼンダの輝きが眩しい『仮面ライダーディケイド』。

 銃撃で威嚇するG3-X、その後背に並び立つライダー達。計4人の仮面の男が、同じく4人の敵と対峙する。

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