2011年6月11日土曜日

4 アギト・電王の世界 -魂のトルネード- その21







 私は囚われのか弱い光夏海。
 体の自由が効かない恥辱にこのまま塗れるなら舌を噛んで死にたい。でも舌すら動かせない。ああなんて哀しい私。

「夏みかん・・・・」

「夏海ちゃん、どうしたのその格好。」

 どういう訳か私、頭の先からヒールの踵まで黒のボンテージでボディラインピッチピッチ。こいつらに私の豊満ボディを晒すなんて勿体ない。出してるのは顔とへそだけ。髪の毛すらボンテージの中。
 私の意志に反して警察の検問を突破して、士クン、ちょっとかっこいい服装のユウスケ、知らない水色のライダー、そして緑の怪人の前で、恥ずかしい格好を披露してる。死にたい。

「ボクに釣られてみる?」

 ちなみにこのちょっと気取ったオッサン声が私。
 見るな門矢士、生まれ変わっても笑うぞこいつ!

「イ、イマジンに憑かれ易い体質だな。あれはきっと、ひ、貧相なものを見せられても誰も喜ばねえぞ。」

 声がうわずってるぞ門矢士、

「夏海ちゃん・・・・雰囲気違うね・・・」

 ユウスケの笑顔が辛い・・・、雰囲気違うどころじゃねえ。

「今度はワシやで!」

 私、どういう訳か3人くらいの声色使って独り言言ってる。そして何故かクルリと一回転して違う姿に変わった。
 今度は振り袖袴、柄は熊とかすみ草が彩られピッカピカの金、髪は後ろ一本で束ねてる、帯には短刀を一本差し、右手に高々と京和傘、何故か紐で鞠がついてる。

「泣けるで!」

 そして裾をまくり上げ、素のままの両足を大きく開く。やっぱりオッサンの声で私しゃべってる。ああ神様、なんで私が褌なのよ!

「ユウスケ、見るな。」

「白いな、夏海ちゃんの腿・・・・・」

 ユウスケ鼻血を出してる、イヤ、これだけはあのキバの世界の屈辱を上回るわ。

「ボクもボクも、」

 また一回転する私。
 今度は白いブラウス、紫の吊りスカート、三つ編み、そして紫のランドセル、両手と素足にテディベアがしがみついてる。やっぱり若いオッサンの声でしゃべってる。若いオッサンなのよ。でもでもなんでこんなにスカート短くて褌が露出してるのさ!

「答えは聞いてない、ババン!」

 もうイヤ、もうイヤ、生まれ変わったら何も考えない玉虫になりたい。

「なんでぇ、おまえら、オレも混ぜろよ!」

 唖然と立っていた怪物から珠が飛びだしてくる。あいつモモタロスじゃねえか、来るな、これ以上私を苦しめるな疫病神共!

「オレ、参上!」

「先輩じゃないですか。」

「モモの字、あかんで、順番や、並んでんやから。」

「てーかおまえら、正気をようやく取り戻したな。カメ公にクマ公にええと。」

「王子だよ。」

「そうそう、ん?なんか違和感。」

「バカでぇ~、ボクはリュウちゃんだよ。頭悪~い。」

「キサマ!小僧、忘れてただけでぇ。」

「忘れるって頭悪いっ事だよ~」

 ああごちゃごちゃ頭の中で煩い!

「それよりこりん星の王子駅、なんでそいつら倒れてるんだ?」

「こいつらか、1人はおまえが抜けてダメージキツくて失神した。1人は、オレが殴って気絶させた。それより、いいかげん格好を直せ。なんだそのビキニは。」

 私、ついに赤い鬼面で胸2つと下の大事なところを隠した最悪ビキニ。もう、私は限界・・・・。

「おい、王子駅の隣は赤羽、この体のヤツ失神しちまったぞ。こっち向けよ!」

「正視に耐えん。」

 ここからは後から聞いた話になる。
 このややこしい中、あの八代さんそっくりな人が現場に駆けつけたそうだ。

「ショウイチ、ショウイチよね。」

 倒れているユウスケと、転がっているライダーの鎧を差し置いて、この世界の八代さんはホームレスのような男にまっすぐ歩み寄ったそうだ。
 八代さんが救急車の手配を取る緊迫した状況の中、私はただ鬼面3つのビキニで立ち尽くしていたという。勘弁してくれ。

「貴方、もう1人の、このG3-Xを装着していた彼を知らない?」

「海東なら、とっくに逃げてるぜ。」

 士クンは、誰から逃げたかは、言わなかったそうだ。

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