2011年6月11日土曜日

4 アギト・電王の世界 -魂のトルネード- その10







「ねえねえ、ねえってばユウスケ。本当に出て行くの?」

 忘れてはいなかったよホント。洗面所からマイ歯ブラシを持って出てきたユウスケを。
 あの白いワッペンみたいなコウモリ、キバーラが、手荷物纏めたバックを下げたユウスケの周りを必死に飛んでいる。この子もユウスケにだけは本当に懐いてるみたい。

「G3-Xの装着員に選抜されたからね。」

 私は態とユウスケと目を合わせなかった。チラチラと見たけど。ゆっくりとお爺ちゃんの用意してくれたりんごジュースを口から放さない。

「この体の主がよ、おめでとう、補欠合格だとよ。」

 じゃあ自分で言えよ。士クンは左の方の頬だけユウスケに向けた。

「オレさ、分かった気がする、オレが旅してたのは、もう一度姐さんに逢うためだったんだって、多分、ここが終点。居場所を見つけたんだよ。」

「たかだかクリソツな女の為に残るとはお人好しだねえ、おめえ、言ってただろ、他に男がいるかもってな。そんな女に尽くしても見返りなんかねえぞ。おめえバカだろ。」

 赤イマジン空気読めおまえ。

「ずっと一緒に旅するものと思っていました。」

 私はそれだけ言ってまたりんごジュースを含んだ。
 私も、キバーラも、そしてお爺ちゃんもユウスケを見つめていた。

「夕食だけでも食べていかんかね?いい野菜がここでは手に入る。」

「ごめんなさい。何時出動になるか分からないので。・・・・お世話になりました。」

 ユウスケはあっさりと私達に背を向け、写真館を後にした。キバーラが追いかけようとしたが、閉じられたドアに遮られ床に落ちたた。この子、どこまで本心なんだろう。

「いっちめえいっちめえ、オレ達がこんなに困ってるツウのに、自分のだけ事考えて辛苦を共にした仲間を平気で見捨てるヤツなんか、要らねえってな!」

 左の頬を向けた士クンが叫んだ。士クンなんで何も言ってくれないの。卑怯よ。

「困ってるのはイマジン、アンタだけです!アンタはユウスケと辛苦を共になんかしてないです!!」

 私はKYに堪えきれず立ち上がって外へ飛び出した。

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