2011年6月11日土曜日

4 アギト・電王の世界 -魂のトルネード- その17







 虚勢で対抗しているのか、避けず構えずディケイド-クウガ悠然と立ち、カードをバックルへ装填。

『FORM RIDE KUUGA TITAN』

 ディケイドが紫、明らかに表面も生物感が失せて金属質に変化する。

 縦一直線に斬り込むデンガッシャー、
 火花散るディケイド-クウガ、

「だいなみっくちょっぷ」

 着地ザマ叫ぶネガ。

「クウガはそれほど甘くないぞ。」

 避けもしないで受け止めたディケイド-クウガはしかしその強力な防御力で堪えていた。
 折れたロッドの片側を破棄、残り半分が物質変換、刃幅の大きい段平へ変え、至近のネガ首元へ横薙ぎ。

「泣けるでぇっっっ」

 首を捻って骨が鳴る程打ち付けられ転倒し、アスファルトを転がるネガ。

『ガンフォーム』

 再び上半身の構成を変えるネガ。胸の装甲がV字に広がり、珠のようなフリーエネルギースラスターが両肩上にそれぞれ露出。多角的に力場を形成し、機動力を高くする。頭もまた東洋龍のようなシルエットと化す。憑依イマジンのフリーエネルギーが全フォーム中最大のそれが『ガンフォーム』。デンガッシャーも刃部と機関部が並列、軸部は機関部へ直列し、逆側斜めにグリップが接続、フリーエネルギーを制御し放出する為のそれが『ガンモード』。豊富なエネルギーを惜しげも無く光弾にして放出し続けるモード。

 連射、

「剣が」

 見るからに重たげな硬質の鎧のディケイド-クウガ、ゆっくり歩を進め近接するも、ネガの打って変わった俊敏なガン裁きに度肝を抜かれる形で剣を弾かれる。

「答えは聞いてない!」

 避ける必要も無いのだが、なぜか踊りながら得物の銃を片手で乱射するネガ。
 1動く間に10も20も動かれ、強力なフリーエネルギーの直撃に間合いを詰められず、後退りせざるえないディケイド-クウガ。

「おい、ちゃんコリン、いいザマだな。ええ。」

「黙ってろ!」

 トンネル出口の光を背中で感じる士だった。
 フリーエネルギーが直撃ごとにジリジリと圧され、その度に砂塵が舞って、トンネル内が上がった熱量と共に渦捲く。

「答えは聞いてない聞いてない聞いてない!」

 もはや視界が取れないにも関わらず、フリーエネルギーの弾幕で構わず圧倒しようとするネガ。

「おまえ、」

 その声は士。トンネル出口付近で砂塵と逆光で完全に姿が見えない。

『FORM RIDE KUUGA PEGASUS』

「答えは聞いてない?」

 士はいったい何を始めたか。動きを止め、視界が晴れるのを待つネガ。

「スペックで圧し、すぐに大技に頼る。勢いだけだ。」

 砂塵が収まり、徐々にその姿を現す緑のディケイド-クウガ。得物は無く、やや右の軸足に重心をかけ自然体で立つ。

「答えは聞いてない!」

 数発連射するネガ。
 その数発を研ぎ澄まされた知覚で正確に回避するディケイド-クウガ。

「聞いてない!聞いてないっ!」

 なお連射するネガ。

「フォームがネタギレらしいな。」

 駆けながら間合いを詰めるディケイド-クウガ。その間も十数発の光弾を平然と避けている。ついには拳が届く程の距離まで近接、それでもなお紙一重で回避し続ける脅威の超感覚。

「聞いてなっ」

 掴まれるデンガッシャー、同時に一撃したが、ディケイド-クウガの指先は正確に銃口を自身の左肩やや上へ外している。

「この武器が奪われればオシマイだ。」

 ディケイド-クウガの触れた先から、変形していくデンガッシャー、4つのパーツも何もかもが分子の段階から再構成され、同じ銃ながらも、銃口上下に弓のような反りのあるエッジが生える。『ペガサスボウガン』。

「聞いてない!」

 腹打ち一撃で武器を奪われるネガ、
 ボウガンをゆっくり構えるディケイド-クウガ、
 背を向けトンネルの反対側の光へ逃げるネガ、
 ディケイド-クウガ、ボウガン後ろのグリップを引く、大気が銃口より吸引される、

「おい、赤いの、ようやく出番が来たぞ。いいな。」

 ディケイド-クウガから朧気な光が発し、ボウガンへ注がれていく。

 シュート!

「いくぜいくぜいくぜ!」

 放たれた弾は朧気に赤い人型を実体となって突進、背を向けるネガに直撃、

「キサマ、」

 光の珠が1つ、変身を解きつつある夏海から飛び出す。夏海はそのまま萎れるようにアスファルトに倒れた。

「まずは夏みかん。」

 士はここに至って変身を解き、倒れる夏海の頬の汚れを拭ってやった。

「ええいこんちくしょー、おまえらも出て行け!」

「あれ、先輩じゃないですか」

「やで」

「聞いてない」

「お、思い出してきたぜ、なんでおまえらの事忘れてたんだろうな、まあそこに座れ、ひさしぶりだから今日は三日三晩飲み明かそうぜ、」

「私の中でゴチャゴチャうるさぁぁぁぁぁ」

 依然4体のイマジンが夏海の中でしっちゃかめっちゃかしている。

「関われば関わる程ややこしくなるだけじゃないか赤いの。」

 士はおもしろいのでしばらく放置した。

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