2011年7月10日日曜日

5 カブトの世界 -クロックアップ- その16







「風に逆らうと、全てを剥ぎ取られる。いわゆる一つの、えっ・・と」


 2,5次元の顔立ちをした長身の、とりわけ足の長さ、いやへその高さが尋常じゃない男が立っている。その腕には、トンボを模した銃型のゼクターが握られている。


「寝た子を起こす、かな?」


 もう1人の女はそれに負けていない劇画調のメリハリあるボディにやはりスレンダーな足を網タイツで強調している。右腕には銀のリストバンド、そしてそれにいずこからともなく現れ付帯するヘラクレスオオカブトを模したゼクター。


「そう、それ・・・・かな?」


「ご託はいい、オレは急いでいる。」


 そのお似合いの2人の前に立つのは既に変身したあのカブト、ソウジだった。


「名前を聞いておこう。ボクはアナベル加藤。彼女はボクにメイクアップされる為に生まれてきたチリだ。」


『CHANGE DRAGONFLY』


 イケメン加藤の変身した姿、トンボをモチーフにし、左胸から右肩へ流れる銀の羽根が光るその名も『ドレイク』。


「おまえがカブトだな。ライダーを次々と倒してゼクターを集め、また“時空渦”を起こしたいのか!」


『CHANGE BEETLE』


 パーフェクトボティチリの変身した姿、ヘラクレスオオカブトの頭部そのままの銀マスク、その名も『ヘラクス』。


「名乗りというのは、対等と認め合って始めて交わすものだ。おまえ達に名乗る名前など無い。」


「ほざけ!」


 カブトと同じ形状のクナイガンをガンモードに連射しながらヘラクスが突進、


「それを奪ってまだ間もないな。」


 跳弾に微動だにしないカブトは、対手のチャージを眼で計っている。

 ヘラクスは連射を止め、アックスへ変形させながらそのまま突進、

 カブト、動かない、

 ヘラクス、アックスを前腕のかぎり振りし切る、

 カブト、片腕で受け止めると同時にヘラクスを柔軟に流す、

 ヘラクス、カブトの後背まで傾れ込んで美脚をすり上げカブトの頭へ、

 カブト、上体だけのスウェーで躱す、

 なお縋り付くヘラクス、

 なお躱すカブト、


『1、2、3』


 もみ合うカブトとヘラクスに、銃口を向け、後部グリップを引くドレイク。


「ライダーシューティングっ」


『RIDER SHOOTING』


 ドレイクゼクターから紺碧の巨大光球が放たれる。質量感と速度を兼ね備えた破壊力がカブトに迫る。


『CLOCK UP』


 カブトが同時性を破綻させ、姿を消す。


「させん!」


『CLOCK UP』


 やや腕絡みのヘラクスもまた超速の彼方へ追う。

 砂塵の粒の流れが一つ一つ目視できる世界、ドレイクの放った光球が亀のように近づいて、ゆっくりとヘラクスに影を差していく。

 超速にしてなお対手より優位な俊敏さをもって一撃離脱を繰り返すカブト、

 その場から動かず上体の動きだけでその連続攻撃を裁き、ついにカブトの右拳を掴むヘラクス、

 左をフック気味にリバーへカブト、

 その左を脇で挟み込み、身動きが取れない状態にした上で脚をすり上げカブトの頭へ巻き付ける、そうして軸足をも浮かせ、全体重でカブトを押し倒し、右腕を両足で固めに入る、


「そうやって男を落としてきたのか?」


「煩い!首をへし折ってやる!」


 そのゼロ距離での柔軟なボディにしてやられたカブトは、左腕が外されても身動きがもはや叶わない。


「ボクを忘れないで欲しいな。」


 それは光球迫る逆サイドからの声だった。既にクロックアップの域に入ったドレイクが立ち、絡む両者に向けてゼクターを構える。


『1、2、3』


「ライダーシューティング」


『RIDER SHOOTING』


 同じ紺碧の光球の前後挟撃、それがドレイク最大の技だった。


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