ソウジがデニムに両手を突っ込んだポーズで乗るエレベーターが止まる直前、上方で爆音と立っていられない程の震動が迸った。ソウジが目指す最上階ではない。そこは、3つある展望台の最下の位置。エレベーターの中から見える風景は、一面鉄格子の床を敷き詰められたグレー一色の展望台だった。ところが一歩踏み出した瞬間、まず皮膚に飛沫を感じる。次に荒々しく流れ落ちる滝が見え、耳がイカれる程の曝音がする。大気の流れは多量の湿気で体温を奪い、足元の震動はそこが大地でなく、吊り橋の上である事をソウジに教えた。
「6、7人か。」
既にジョウントしてやってくるカブトゼクター。
ソウジの前後は切り立った崖に、照葉樹が密生している。その恐怖心を呼び起こす程の闇の中に見え隠れする影が7つ。
「キックホッパーっ」
「パンチホッパーっ」
「チョップホッパーっ」
「ヘッドバットホッパーっ」
「スープレックスホッパーっ」
「サミングホッパーっ」
「ヨンノジホッパーっっ!」
それは全て同じ、リペイントであるものの全てが同じ頭に3つの角、その角と同じ形状のショルダーアーマー、ベルトにはそれぞれのペイントのバッタを模したゼクターが装着されている『ホッパー軍団』であった。
「変身」
そのテンションに冷や水を差すようにカブトへと変身するソウジ。
「ライダージャンプ」
翠のホッパーがバックルを操作した後跳躍、他のホッパーも全く同じ動作で追随し空へ。
「お婆ちゃんが言っていた。手の込んだ料理ほど不味い。」
カブト、即座に黄金剣パーフェクトゼクターを召喚、さらにドレイクゼクターも周回しながら宙でパーフェクトゼクターと合体、カブトの腕に収まる。
「ライダーキックっ」
「ライダーパンチっ」
「ライダーチョップっ」
「ライダーヘッドバットっ」
「ライダースープレックスっ」
「ライダーサミングっ」
「ライダーヨンノジっっっっ!」
全ホッパーが跳躍頂点に達した時、一斉に叫んでカブト一点に向けて降下、
『DRAKE POWER』
直上高々と剣を掲げるカブト、モードはガンモード。
『HYPER SHOOTING』
天高く放たれる一撃の光球、ホッパー軍団を一旦すれ違い上昇、
「なにっっ」
1人のホッパーが叫んだ、
光球が上方で分裂、7本の歪曲した光となってホッパー全てを追尾、
爆破爆破爆破爆破爆破爆破爆破、
火達磨になりながら吊り橋のさらに下へ落下していくホッパー軍団、
火の粉降り注ぐ中悠然と吊り橋を渡って行くカブトであった。
「・・・・・・・・、おのれ、オレの4の字さえ極まっていれば・・・・」
渡り切った先の崖に、落下してきたホワイト地にスカイブルーのドット柄ホッパーが、俯せのまま起き上がれず、ただ震えた指でカブトを差す。
「一つ聞いておきたい、いったいジャンプしてからどうやって固め技に入るんだ?」
やや精神が高揚しているソウジだった。
「時空渦を起こし、世界を滅ぼし、そして自らを孤独に貶めて、呑まれるがいい・・・・・、黒い、カブト・・・・」
事切れるホッパー。誰が変身したかソウジはついに知る事が無かった。
「黒い・・・・・」
そう言われ初めて、自らの掌から二の腕、そしてボディを眺めたカブトは、先程の爆炎のせいか、ボディのところどころ黒く染まっている事に気づいた。気づいて、何を悟ったのか天を仰ぐカブト。
「いいだろう、その洗礼、受けよう。」
彼の身に夕日が差す。
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