2011年7月10日日曜日

5 カブトの世界 -クロックアップ- その24









 ソウジがデニムに両手を突っ込んだポーズで乗るエレベーターが止まる直前、上方で爆音と立っていられない程の震動が迸った。ソウジが目指す最上階ではない。そこは、3つある展望台の最下の位置。エレベーターの中から見える風景は、一面鉄格子の床を敷き詰められたグレー一色の展望台だった。ところが一歩踏み出した瞬間、まず皮膚に飛沫を感じる。次に荒々しく流れ落ちる滝が見え、耳がイカれる程の曝音がする。大気の流れは多量の湿気で体温を奪い、足元の震動はそこが大地でなく、吊り橋の上である事をソウジに教えた。


「6、7人か。」


 既にジョウントしてやってくるカブトゼクター。

 ソウジの前後は切り立った崖に、照葉樹が密生している。その恐怖心を呼び起こす程の闇の中に見え隠れする影が7つ。


「キックホッパーっ」


「パンチホッパーっ」


「チョップホッパーっ」


「ヘッドバットホッパーっ」


「スープレックスホッパーっ」


「サミングホッパーっ」


「ヨンノジホッパーっっ!」


 それは全て同じ、リペイントであるものの全てが同じ頭に3つの角、その角と同じ形状のショルダーアーマー、ベルトにはそれぞれのペイントのバッタを模したゼクターが装着されている『ホッパー軍団』であった。


「変身」


 そのテンションに冷や水を差すようにカブトへと変身するソウジ。


「ライダージャンプ」


 翠のホッパーがバックルを操作した後跳躍、他のホッパーも全く同じ動作で追随し空へ。


「お婆ちゃんが言っていた。手の込んだ料理ほど不味い。」


 カブト、即座に黄金剣パーフェクトゼクターを召喚、さらにドレイクゼクターも周回しながら宙でパーフェクトゼクターと合体、カブトの腕に収まる。


「ライダーキックっ」


「ライダーパンチっ」


「ライダーチョップっ」


「ライダーヘッドバットっ」


「ライダースープレックスっ」


「ライダーサミングっ」


「ライダーヨンノジっっっっ!」


 全ホッパーが跳躍頂点に達した時、一斉に叫んでカブト一点に向けて降下、


『DRAKE POWER』


 直上高々と剣を掲げるカブト、モードはガンモード。


『HYPER SHOOTING』


 天高く放たれる一撃の光球、ホッパー軍団を一旦すれ違い上昇、


「なにっっ」


 1人のホッパーが叫んだ、

 光球が上方で分裂、7本の歪曲した光となってホッパー全てを追尾、

 爆破爆破爆破爆破爆破爆破爆破、

 火達磨になりながら吊り橋のさらに下へ落下していくホッパー軍団、

 火の粉降り注ぐ中悠然と吊り橋を渡って行くカブトであった。


「・・・・・・・・、おのれ、オレの4の字さえ極まっていれば・・・・」


 渡り切った先の崖に、落下してきたホワイト地にスカイブルーのドット柄ホッパーが、俯せのまま起き上がれず、ただ震えた指でカブトを差す。


「一つ聞いておきたい、いったいジャンプしてからどうやって固め技に入るんだ?」


 やや精神が高揚しているソウジだった。


「時空渦を起こし、世界を滅ぼし、そして自らを孤独に貶めて、呑まれるがいい・・・・・、黒い、カブト・・・・」


 事切れるホッパー。誰が変身したかソウジはついに知る事が無かった。


「黒い・・・・・」


 そう言われ初めて、自らの掌から二の腕、そしてボディを眺めたカブトは、先程の爆炎のせいか、ボディのところどころ黒く染まっている事に気づいた。気づいて、何を悟ったのか天を仰ぐカブト。


「いいだろう、その洗礼、受けよう。」


 彼の身に夕日が差す。


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