カブトが運んできた人達の様子を見ていたお爺ちゃん、あの姿を見て急に私の元にやってきて、なにかわめいて私の手を引っ張っている。
あの時、ユウスケと士クンがはじめて出会った時、私はイヤな予感のまま叫んでいたっけ。
今、イヤな予感がそのままの姿で私の前に現れた。
どうしてだろう、声が出ない、
こんなに震えているのに、こんなに涙が出ているのに、喉の奥が詰まって声にならない、
もうどうしようもない、
私は、絶望しているの?
「ぉうわ」
私の膝に中折れ帽が当たった。眼前にカジュアルなスーツを着た士クンと同い年くらいの子が転がってきた。ライダーだった人。 私、咄嗟に帽子を拾っていた、そして起き上がるその人に渡していた。
「ねえ、アナタ!ライダーなんですよね!あの2人、士クンを、士クンとユウスケを戦わせないでっ!あの2人が戦ったら、戦ったらっ」
「落ち着けそこのかわいい子、あの下品なピンクが門谷士、ユウスケはあのオレの顔入れた奴か?」
私は黙って、あの黒いクウガを指した。
「2人が戦ったら、世界が破壊される!」
私の動悸も脈の乱れも止められなかった。たぶん大声で叫んだんだと思う。士クンが、一度だけ私を見た。
その人は私の唇に一本指をあてがった。
「落ち着けってかわいい子、とにかくここは逃げろ、そこの爺も。確認だが、そりゃ依頼だよな?」
このガキ何言ってんだろ。
「依頼?」
このガキ逐一かっこつけて怒らせたいんかい、
「オレゃこう見えても、探偵、なんだ。依頼なら受ける、ぜ。」
なんでもよかった、肯いた。
「世界の破壊者を倒す事が世界の破壊・・・メンドくせぇ、フィリップに聞くしかねえ。スタッグフォン通じんのかよココ。」
ガキはブツブツ言いながら中折れ帽を被り直した。そのキザったらしいポーズが癇に障る。大きすぎる衣着てるガキ。でも私、依頼?してしまった。
「夏海、危ないよ。」
そういえばずっと隣にお爺ちゃん、いたんだ。私、ひさしぶりにお爺ちゃんの顔を真正面から見た気がする。
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