恐れるだけの歴史をゼロに巻き戻す
英雄はただ独りでいい
今、あの崖を飛び越えて
クウガ 声無き声が
クウガ 君を呼んでる
クウガ 強さの証明
No Fear No Pain
壊す者と護る者
No Fear No Pain
答えは全てそこにある
頂上疾走、オレが変えてやる
超変身 仮面ライダークウガ
黒い影がユラユラと力無く立つ。複眼にもアマダムにも精気が無い。
アルティメットクウガ。
その名を対峙するカブトはまだ知らない。
「お婆ちゃんが言っていた。人が歩むのは人の道、その道を拓くのは天の道。」
「待て、触れるな!」
ディケイドの制止も聞かず、既にモーションに入り消えるカブト。
刹那、ディケイドの後方から爆音が轟く。アルティメットが刺さったコンクリートの柱に激突した。
「感覚が、ない!?」
振り替えると当然カブトがいる。
「いわんこっちゃない。らしくない。」
カブトは倒れ片足を押さえ呻いている。踵から腿の半ばまでが光沢を帯びた金属質に変換してしまっている。
手を差し出すディケイドの手を振り払い、もはや肉体ではない右足を支え棒のように不器用に立ち上がるカブト。
「知っているのか?」
一生残る深傷を負ったカブトは息切れが収まらない。
「奴はオレが決着をつける。そこにいろ。」
言って振り返った途端だった、
パイロキネシス、
顔面で悶絶するディケイドが膝を屈した。
そのディケイドの視界には、既に音も無く懐近く立つクウガのアマダムが見える。
クウガは首を掴もうとして横に空振り、
「ユウスケ!」
ディケイド、反射的にアマダムを打つ、
「!」
表情なくただ後退りするクウガ、この時アルティメットクウガの全てが停滞する、
「オレが、」
ディケイドのワンツー、
「戦ってやると、」
間合いが空いたのを見計らって、
「言っている!」
一足入れて蹴り、
クウガはさらに後退、その足が水音を立てる、
「変わった」
ディケイドもまたその変化した風景、静寂な湖面に立ち、互いの波紋が交差する。葉緑素の臭みがし、羽虫が微睡んだ大気に溶け込んで挙動が無い。そう羽虫すら気づかなかった。
「いない」
ディケイドが目を離したのは瞬きする間も無い。そのコンマ何秒にクウガを見失い、音も無く水面の軌跡が回り込んでディケイド後背へ伸びるのみ。
振り返った刹那、
「くそ」
顔面を躱したつもりでも勢いだけで足が宙へ浮いている。飛ばされて湖面に大響音を立てる。羽虫や鳥が一斉に羽ばたき静寂がかき消される。クウガのヒッティングから戻すまでがあまりに疾く自然体のままの不動にしか見えない。
ゲホ、
水面に身を落とす、よく見ればマスクの半分が銀の光沢に溢れた別の物質と化している。銀の部分がボロボロと崩れ、士の素顔が露出、同時にマスク内に浸水して慌てて起き上がるディケイド。
「足が!?」
ディケイドの踏む水音がかき消される、音を立てる水がクリスタル状の物体に硬質化、クウガは仁王立ちのまま、足から湖面全ての水を物質変換させた。さらにクウガ、ディケイド周りのクリスタルだけ残して全てを右前腕に吸収、4メートルはあろうかという透明なランスを振りかぶる、ディケイドは動けない、
「ユウスケ!!」
叩きつけられるディケイド、
クウガはランスを360度遠心力の限り叩きつけ、ディケイドの胸装甲を砕き、士の大胸筋が血まみれに露出する。ランスもまた砕け散った。
「………ツカサ…………」
額からも血が一筋流れる士の耳には、クウガの呼吸がそう聞こえてならない。だが明らかに幻聴ではない奇声がディケイドに降りかかってくる。
「ディィィィィィケイィィィィィドゥゥゥゥ、いくつもの世界と私を破壊してきた罪、償って貰うぞ!」
いつのまにか元の電波塔倒壊跡に倒れるディケイド、クウガはその瓦礫の上を踏みしめゆっくりと間合いを詰めてくる、クウガの先のカブトはどういうわけか先に倒したWの中折れ帽が肩を貸し、背後には夏海が栄次郎の胸に縋って震えている、そして鳴滝=DDは崩れかかった電波塔施設の上に立ち狂喜に悶えている。
「ユウスケ・・・、夏海を泣かせて平気なのか、あいつが目を背ける事なんて、無いぞ、」
ごくごく擦れた小さな呻きを上げる士、
クウガの4本の角が、光沢に煌めく。
「まず貴様のトリックスターを破壊する、そして貴様の存在を消し、貴様の臭みがついた世界を清掃してやる、その為のアルティメットクウガ、重心バスターを。ディケイド、貴様はもう手も足も出ないはず、光線は全てアマダムが吸引し、触れれば物質変換だ、その為に私はライダー3体使って物理的な技のキレで対しやっとゲットしたのだぁ、貴様では、キサマではできまぁぁぁぁ」
絶叫するDD、
クウガはいつのまにか制止している、
ディケイドは晒された片目でクウガだけを凝視して立ち上がる。
「オレの命、ここで終わる、かもしれない、だが鳴滝、おまえじゃない。」
バックルを両腕を使って開く、バックルが90度回転して、カードリーダーが表れる、ブッカーを装着した状態から見ないでカードを1枚、装填、腕を交差させるようにバックルを元に戻す、
『FINAL FOAM RIDE kukukuKUUGA』
変形するのは精気のないクウガ、頭が後方にトイギミックに倒れ、背中に甲羅が発生、四肢が整頓して鋏角と4つの足、甲羅が割れて翼と化し飛翔、
「はぁ!」
『FINAL ATTACK RIDE kukukuKUUGAaa!!』
宙を周回するクウガゴウラムに飛び乗るディケイド、ブッカーをソードモードに構え起つ。
「バカァなぁぁ」
一直線に突撃するディケイドアサルト、
三つの鋭角の刃がダークディケイドを刺突、掬い上げ、はるか直上へ突き飛ばす、宙返りし、ディケイドが落とされる形で着地、宙でゴウラムが変形してクウガに戻り並び立つ。
「そんなぁぁぁぁぁぁぁ」
落下してくるのはドライバー、ディケイドのそれではなくDD、落下の衝撃で砕け、小さな澄んだ透明な珠が転がる、鳴滝もまた帽子とメガネだけの全裸で紙ペラのようにクルクルと落下し俯せで腹打ちバウンドして埋まる。
「そんな・・・バカな・・・・、また私を殺すのか・・・・・ディケイド・・・・!」
倒れる鳴滝は、転がるトリックスターに手を必死に手を伸ばした。喉の限り叫び、目が血走り、毛細血管の隅々まで行き渡らせて赤面させて手を伸ばした。だが、触れようかしまいかという刹那、その眼前で破裂するトリックスター。
一気に血の気が失せると同時に、その露出する毛穴という毛穴から泡が吹きだした鳴滝は、帽子とメガネだけを残して大気に溶けていった。
「奴は、何がしたかったんだ・・・・」
ディケイドは、一瞬期待した。つい先の体験も引きずっていた。だが生半可な自信を、現実は笑う。
クウガに振り返るディケイド、
「士、そのうっとおしい彼は、心を完全に閉ざしたよ。」
クウガの視線を落とした複眼に未だ精気はない、アマダムも光の反射すらなかった。既に腕が動いて首を掴みにきている。
「ヤバぃ」
咄嗟にブッカーで構える、
反射でクウガがその刃を握る、
握った先から物質変換、
手を放してしまうディケイド、
「知らないよ士。」
みるみる内に腕と一体化した二つ叉のピックに変化するクウガの右腕、腕はそのままピックが伸び、ディケイドの首を挟む。
「んっ」
喉を押さえつけられ、抗って両腕でピックを掴む。武器も全てのカードも失ったディケイドの指先が、徐々に物質変換に蝕まれていく。
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