2011年7月10日日曜日

5 カブトの世界 -クロックアップ- その3














「ライダーキィック!」


 1号は跳躍した。容赦なく照付ける太陽を背にその姿が隠れる。


『1、2、3』


 だが独特の長い一角を額から生やすライダーは天より降下する1号に背を向け大気だけを感じていた。


「ライダーキック」


『RIDER KICK』


 振り返る、

 振り返り様回し蹴りの構えに、

 そのモーションが対手の蹴り足を同時に躱す、

 交差する両者の蹴撃、

 撥ね除けられる1号、


「ライダーキックを破る者がいるとは・・・」


 起き上がれないライダー1号。

 全身を赤い光沢に包まれたライダーは振り返らない。その指先をただ天に翳すのみ。翳した指の影が1号の複眼に差す。


「お婆ちゃんが言っていた。守るべきモノがある者が最強なのだ。」


「この世界は、オレの守るべき世界ではないという事か、」


 同じように複眼のある対手のマスクからは、表情が読み取れない。


「名はなんと言うんだ、おまえの。」


 1号の吐息はもはや擦れていた。


「カブト。マスク・ド・ライダーシステムの名前だ。」


 赤い体色が、光沢のムラで濃くそして淡く変化していた。

 カブトを名乗った男は無限に広がる荒野で足を進めた。


「どこへ行く・・・」


 1号は、その直後事切れた。


「俺は、天の道を行く。」


 カブトの眼前には、その荒野でただ一つの、あるいはこの世界でただ一つの建造物が陽炎のように揺れていた。


「オノレディケイト、電波塔か。」


 その声にカブトは気づかず歩んでいく。なぜなら、その声の人物は次元のカーテンの先にいるのだから。

 鳴滝はカブトを眺めやり、ヨレた帽子を正し、そして動かない1号をカーテンに呑み込んだ。

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