2011年7月10日日曜日

5 カブトの世界 -クロックアップ- その35







「オレが旅に引きずり回した・・・・・・、オレが作ったというのか最強の敵を・・・」


 ディケイドの喉から顔面、並び両掌から物質変換が蝕んでいく。


「ツ、カ、サ…………」


 目元に精気が無い。ディケイドにはその猛々しい呼吸が耳障りだ。

 アマダムから朧気のように光が放たれ、アルティメットクウガの体中に入った裂け目のようなラインもまた光り出す、そして腕先のピックもまたマゼンダに輝いた。

 マゼンダ?

 それはアマダムとは全く違った光だった。

 爆破、


「ツカ」


 吹き飛ぶアルティメットクウガ、打ちのめされるディケイド、クウガの右前腕がマゼンダのエネルギーで暴発し、砕け散る。砕け散った欠片と共に数十あったライドカードもちぎれ飛ぶ。クウガはマゼンダのエネルギーが未だ蓄積されて身悶えし、ディケイドは顔面の直撃以上の衝撃で放心した。


「オレたちの、旅が・・・・・・」


 いままで積み重ねてきたなにもかもを、積み重ねてきた2人で破り捨ててしまった、旅をした業?次元を越えて世界を変えてきたそれがツケだというのか?

 だがその士の間隙もほんの一瞬に過ぎない。

 たった1枚満足な状態のカードを手に取るディケイド。“COMPLETE”のロゴが入り、今やディケイドを含む10のシンボルが輝く使途不明だったあのカード。


「海東、そこにいる事は分かっている。」


 私の記憶を返して!いったいどうして!どうして!

 取り出せ、こいつの頭から。

 おのれディケイド、またオレを殺す気かぁぁ!

 次の世界の奴を用意しろ。

 朦朧とするディケイドはしかししゃがみ込みながら叫んだ、


 オォォォォォォォ


 ディケイドの視線はクウガがマゼンダのエネルギーを振り払って高く舞い上がる軌跡を追っている。


「やあ、士。後でちゃんと報酬は貰うよ。」


 無空より出現する場違いな程屈託の無い声、シアンカラーに身を染めたディエンドがインビジブルを解いて、夏海に程近い、ディケイドの背後より卑屈に笑いながら、自身のバックルを外す。バックルはほぼ長方形、その表面積の大部分を占めるディスプレイはタッチパネル、ボディはそこから両サイドに伸びシアンと黒のストライプ。これこそこの世で唯一のアイテム『ケータッチ』。


「よこせ!」


 士の短く威圧的な口調に、苦笑で誤魔化して投擲するディエンド。

 既にクウガは跳躍頂点から、蹴撃の態勢、下角65度で降下している。

 片手で掴んだディケイド、COMPLETEカードをケータッチの中に差し込むと、画面にカードの模様が浮かぶ、ボディのシアンもマゼンダに変わる。浮かんだ9つのライダーのシンボルを順になぞるディケイド。


『KUUGA AGITO RYUKI FAIZ BLADE HIBIKI KABUTO DENO KIBA』


 地響きがする、大気も揺れる、はるか上空クウガの躍動がこの段階で既に伝わってくる、砂塵が舞い立ち渦となる、ディケイドを周囲から隠す、


『FINAL KAMEN RIDE DECADE』


 直撃、

 砂塵の渦の中に突撃するクウガ、

 混濁した大気が爆音と共に周辺の人々に吹き付ける、


「ツサカクン!」


 視界の取れないままその長い黒髪が靡き、衝撃波紋が地面を伝って陥没していくのに驚いて栄次郎に必死に縋り付く夏海だった。


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