2011年7月10日日曜日

5 カブトの世界 -クロックアップ- その7







 電波塔が側近にあるやや窪んだ、緑で彩られた大地がある。緑の人工芝、10数メートルの高さに掛けられ四方を囲むネット。


「旋風っっっっスーパーぁぁぁぁキック!!」


「オノレェェェェ」


 銀のブーツが斜め上から喉元に入る。

 全裸で芝を転げ回る男が伏した状態から眼鏡のズレを直し、再び立ち上がるも足はもたつき、そして泡が全身から吹き上げこの世から消えていく己が身に吠えた。


「鳴滝と言ったな。おまえがすべての元凶か!」


 銀と黒で彩られたライダー、『スーパー1』が指し示す鳴滝は、どういうわけか嘲笑した。


「おまえたち、ライダーは全てそうだ。元凶を、一人見定め、それを倒せば全て、片付くと思っている。どうしようもない短絡さだ。世の中はそれほど、単純ではない。」


 消えかかりそうな喉元から干涸らびた声を絞り出す鳴滝は笑顔のままだった。


「では、キサマがこの世界に連れてきたというのは嘘なのか!」


「当たり前だの、クラッカーぁ、ハハハハハハ」


 世代直撃なギャグで嘲笑する鳴滝はしかし無空にその身を喪失していった。


「なんだったんだ、あの男は・・・。」


 スーパー1は、男が消失して残った跡に用心しながら近寄って、唯一残った眼鏡と草臥れた帽子を拾い上げる。


「返してもらおうか。仮面ライダースーパー1。」


 背後よりの声、それはまるで、


「バカな、今死んだはず、」


 スーパー1の視界に入ったのはまず腕、己が手より帽子と眼鏡を取り上げる腕だった。次にスーパー1の眼前に拡がる暗闇、それを臭いトレンチコートと認識するのにスーパー1は剥ぎ取るまで2秒を要した。


「動揺が見えるぞ。仮面ライダースーパー1。」


 既に鳴滝は、そう鳴滝が既にスーパー1から距離を置いて全裸で立ち尽くしていた。


「死んだと見せかけたのか!」


 悠然と帽子と眼鏡をかけ直す鳴滝。いや全裸ではない。腰にベルト、あのディケイドライバーと同型のベルトが巻かれている。


「いや、死んだのは本当に私だ。ここにこうしているのも本当の私だがなぁ!」


 胸を張り嘲笑する鳴滝。親指と人差し指でカードを持ち、目線をやや上目遣いで相手を睨む、


「変身」


 かけ声と共にカードをスムーズに裏返し、賺さずカードをまっすぐドライバーを差し込む。もちろんバックルはあらかじめ開き、差し込んだ段階で回転させる。


『KAMEN RIDE DARK DECADE』


 鳴滝に纏わり着くその姿はやはりディケイド、いや、あのマゼンダのカラーがことごとく黒く塗りつぶされ、スリットラインがイエロー地に黒という姿が現れる。ドライバーは『ダークディケイド』の音声を発した。


「もう一度倒すまでだ、チェェンジエレキハンド!」


 スーパー1、グローブの銀が青に変わる。


「そう、そのファイブハンドの力が欲しいのだよ。」


『KAMEN RIDE SAIGA ZERONOS IKUSA』


 ダークディケイドの眼前に出現する3体のライダー。そして一斉にダークディケイドのブッカーを含めて5門の砲口がスーパー1に向けられる。

 ダークディケイドは1枚のカード、ディケイドと全く同じロゴのカードを振りかざした。


『FINAL ATTACK RIDE DARK dededeDECADEee!』


「右脚の怪我は、覚えているか?」


 5門の砲撃が一斉射された。

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