2011年7月10日日曜日

5 カブトの世界 -クロックアップ- その20









 電波塔直下で対峙するライダー。

 周辺の路面は液状化し、その割れた皴からは逞しく雑草が生い茂っている。


『ATTACK RIDE RADAR HAND』


 ダークディケイドに金のグローブが装着される。金のグローブには、ミサイルが備えられ、その手の甲には円形の線画ディスプレイがある。


「電波塔に近づく程に空間が歪んでいる。」


 腕を天に伸ばしてミサイルを打ち出すDD。その視線は眼前の男に注がれている。


「これが時空渦の痕跡か。クロックアップ。」


『CLOCK UP』


 カッパーメタリックのライダーがDDから突如姿を消す。


「この空間でクロックアップとは愚かな。」


 DDもまた消える。超速の残像もなく、透明の喪失感もない、まるで隣の部屋に入るように数歩で消え去るDD。

 DDの視界は廃墟の路上から、河川敷へと一変。


『RIDER BEAT』


「アバランチスラッシュ!」


 得物の短刀を振りかぶる銅のライダー、だがしかし破砕するのはアスファルトの瓦礫、


「無駄だ。別の世界に入ってしまえば、一切の物理現象は伝達しない。時空の支配者である私には、クロックアップなど児戯に等しい。」


 自画自賛のDDが嘲笑する声を、銅のライダーが聞いたのは、得物を打ち付け、半歩後ろに下がったところが、DDと同じ世界だったからだ。


「くそ、逐一景色が変わる。」


 頭を振る銅のライダー。


「仮面ライダー『ケタロス』、時空渦の影響で乱れたこの場所、なまじ倍速で動けばどうなるか、めまぐるしく世界が入れ替わる空間酔いにもはや立つ場所も分からんはずだ。」


 再び横一歩踏み出して消えるDD。

 ケタロスと呼ばれたライダー。右を向けば廃墟が見え、左を向けば砂丘が広がり、背後を振り返れば廃校のグランド。立ち眩みするケタロス、もはや微動だにせず、得物で頭を守る形で構える。


『FINAL ATTACK RIDE』


 どこからともなく音が響いてくる。

 どこからともなく手刀が飛び出してくる、


「捕まえたぞ!」


 だがケタロス、右後背から迫った銀の腕を捕まえ、絡みついて拘束、得物を振り上げボディに一撃賭ける、


『DARK』


「チェンジ、パワーハンド!」


 銀のグローブが突如赤に変わる、

 アバランチスラッシュを受け止められる、 そして逆に首に腕を絡みつけ逆に拘束されるケタロス、


「何者だこいつ!」


 ケタロスはそこで気づいた。自らをがんじがらめにするライダーはDDではない、銀のマスクに微妙に釣り上がった紅い広角の眼を持つそれは『スーパー1』。


『dededeDECADEee!』


 蹴り足が突如出現、

 どこに?

 ケタロスの腹部を割いて、体内から飛び出てくるダークディケイド、


「おまえの名前が!もっともダサぃぃぃぃぃ」


 爆破、

 DDが蹴撃の態勢から遠く離れ着地した直後爆破するケタロス、絡みついたスーパー1もろとも、爆風となってDDを仰ぐ。


「これで、準備は整った。」


 爆心に歩み寄ったDDは、土に埋もれる1枚のカードを手にする。先のケタロスの顔が描かれているカードを。


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