シゲル……!
タックルの光がほのかに萎んでいく。
それは首に絡めた両腕の違和感からであった。恐怖に駆られ力の限り右腕を引くタックル、鮮血が斜めに走る、タックルの右前腕はクウガの肉体に癒着し埋もれていくようにその形状を喪失していく。
アネサン・・・・・・・・・・、
目に光がなく、等身大の黒フィギュアのように棒立ちのクウガ、だがバックルだけが黒々と輝く、千切れて先の無いクウガの腕先をタックルの腹に押しつける、タックルの背中が盛り上がって掌を象っていく。
「ァァァァァァァァァっっ!!」
甲高い悲鳴が上がり、膨大な血量がタックルの背中から飛び散って、電波の残り火で即座に乾燥し、染みだけ残す。半分抉れた腹部からジリジリと肉の焼ける煙が立ち上る。
アネサン…………
再生した右腕でタックルの頭を自らの胸へ押しつける。もはや意識の無いタックルが白目を剥いてクウガの漆黒の胸にその体を埋めていく。クウガの肉体容積が比例して肥大化していき、頭、肩、手足の各部が鋭角的に伸びていく。
「誕生!アルティメットクウガぁぁぁ!」
DDが諸手を挙げて狂喜する。いやそれは恐怖の裏返しかもしれない。
その暗い異形の姿は、人類が猿から進化してはじめて火を持った瞬間から見えるようになった恐怖の影。闇夜で相手を照らしたすぐ背後に先に行く程鋭角的に伸びた影、その得体の知れない、触れる事すらできない影は、火を得て闇を克服した類人猿に、恐怖から逃れる事ができない事を植え付けた。その姿を黒く染めた異形が、吹雪きつつある白銀の世界にポツンと立ち尽くしていた。
『ATTACK RIDE CLOCKUP』
『FINAL FOAM RIDE itititICHGO!』
その漆墨のクウガの眼前に立つのはほぼ同じ姿の『仮面ライダー1号』が3体。その即背に高笑いするDDが立つ。
「最初からだ。本来選ばれた者でない君にベルトを渡し、他の2つのアマダムを破壊させ、重心砕きの性質を持たせた。そしてこの瞬間しかない。キサマが進化直後のもっとも隙を産む瞬間にな。いくぞ!」
ダークディケイド、バックルの左右を引く、腰のブッカーを開いてカードを一枚取り出し、ドライバー中央に差し、バックルを閉じる。
『FINAL ATTACK RIDE itititICHGOooo!』
色味の薄い1号が跳ぶ、深緑マスクの1号が跳ぶ、肩から両腕に伸びた2本線の1号が跳ぶ、3体並列に宙を一回転、イヤになるほど遅滞する動作のクウガに向けて蹴撃の態勢で降下、
「封印されろ、私の切り札よ!」
0 件のコメント:
コメントを投稿