2011年7月10日日曜日

5 カブトの世界 -クロックアップ- その12







 荒廃しセンターラインも途切れ途切れに液状化した3車線高速道。


「仮面ライダー、ブラック!」


「カメンライダーセイレーン!」


「漢は黙って斬鬼!」


「あんまりキャラが違うけど、今の君を倒す為だったら、このくらいの措置は必要だろう。」


 ディエンドは3人のライダーを召喚し、自らも照準を、路上センターラインを跨いで立つライダーへと定めた。

 ただ一人、紅のボディ、顔の半分の面積を占める赤い複眼、額には短く金の2つの角、


 ぉぉぉぉぉぉぉ!


 それは紛う事無き赤いボディの、全身にやや金縁の増えたクウガである。が、目に光が無い。


「ライダーッパンチ!」


 ブラックの飛び込むような攻撃、

 クウガ、合わせ拳を突き出す、ブラックの顔面に入る、絡みつくように胸板に入るブラックの拳、

 弾き返されるブラックの肉体、宙にある事が災いする。

 不動のクウガ、その姿になんの感情も見えない。だがダメージがないわけではない。胸元に拳の形がくっきりと残っている。だがそれでも感情が見えない。


「やはり人格がそのベルトの重心にもみ消されたようだね。良かったよ。うっとおしかったんだ。ある意味士よりもね。」


「勝たなくちゃいけないんだ!」


 既にセイレーン、細い四肢を軽やかに動かしクウガとの間合いを詰め、ウィングスラッシャーを慣性に乗せている、その先端は音速に匹敵する両刃のラッシュ。

 クウガ、蹌踉けながらも無言で受け止め続ける、

 軽やかなステップでサイドからバックから多角的に攻撃を持続するセイレーン、

 重心を揺すぶられ、足下のおぼつかないクウガ、


「音撃斬!」


 野太い叫びで『烈雷』を突き込んでくる斬鬼、


「ライジングフォームの変態は、レアなお宝だよねえ。」


 だがしかし全身硬質化し紫のボディに変化するクウガは、胸に食い込んだ烈雷を金切り音を響かせて引き抜き、剣状に物質変化、現象にたじろぐ斬鬼から得物を奪い取る、


「甘いわっ」


 その背後から足を払おうとするファム、

 振り返り様青くボディを染めたクウガ、剣をさらにロッドに換えてセイレーンの軽快な動きに併せて一度薙ぎ、後背から縋り付こうとする斬鬼の鳩尾を見もしないで突き刺す。


「教えてやろう。君や士がいくつもの力を併せ持ったとしても、それぞれ力を持った者をいくつも召喚できるボクの敵じゃない。」


 乱射、ことごとくクウガのボディにヒット、それはやや距離を置いて傍観していたディエンドからの銃撃、

 たじろぐクウガ、ボディを緑に変えるも、側近のセイレーンからロッドを弾かれ腹打ち、項垂れるも無理矢理背後から斬鬼が羽交い締めに拘束、


「ライダーぁキッック!」


 そこへブラックが戦線復帰、拘束されたクウガ胸元へ蹴り足を向けて跳躍降下していく。


 ヴヴヴヴヴヴ


「あれがアメイジングマイティ。」


 クウガが吠え、ボディが黒く変色していく。


「足が、足がぁぁぁ!」


 だがその背後で羽交い締めする斬鬼もまた奇妙に変貌していく。まずクウガと密着した腕から胸が石化していき、上半身からあっという間に下半身がアスファルトと密着、最後に断末魔を叫ぶ顔がくすぶった色になって黙り込む。もはや口を聞く事など無い物質変換が完了する。


「うぉぉぉ!」


 そこへブラックの足がクウガのボディに入る。

 不動のままのクウガ、むしろ背面の石像が粉々に砕け散る。


「放せ!」


 そして不動のままクウガは、インパクトしたブラックの足首を掴んでいる。ブラックの足裏は、クウガのボディと癒着して違うモノへと変化していっている。


「ナニモンなんだ、おまえ」


 狼狽えるセイレーンはそれでもスラッシャーを繰り出す。

 クウガ、胸から生えた石の棍棒のようになったブラックを胸元から折ってセイレーンに叩きつける。


「うっ」


 と咄嗟に頭を庇うセイレーン。叩きつけられる石の塊は液状化してセイレーン全身に浴びせられ、

続いてセイレーン全身に纏わり付き、喘ぐセイレーンはついに身動きの効かない程硬質の物体に拘束される事になる。


 一撃するクウガ、

 首が前から後ろへ流れていく、


「ついに覚醒が始まったか。」


 焦ってドライバーを連射するディエンド。 目元を庇う形で身構えるクウガ、やや後退。


「触れた瞬間物質変換するなら、触れさせないまでさ。」


 ディエンドが間断なく光弾をクウガへ浴びせ続ける。

 クウガ、目元から手を放さず反対の腕を伸ばす。


 発火、


「何!?」


 それはディエンド顔面至近、

 突如起こるパイロキネシス、

 手元の空気を急激に物質変化させ息を吹くように飛ばす、

 もんどり打って後頭部から倒れるディエンド、


「もはやボクの事を覚えてもいないだろう、さっきの異世界の住人達のように、殺したまえ。」


 頭を振って、上を眺めると、2本の角を生やした影がディエンドを見下していた。

 やがて影から手が伸びてくる。ディエンドの首を掴もうと。

 しかしその手が止まった。


「ヴヴヴヴ・・・・う、ぉ!!」


 黒のクウガ、突如頭を抱え苦しみ出す。

 跳躍90メートル。

 一瞬で上空の点となってクウガは逃げ出した。


「やれやれ、根性が無いなぁ彼は。士と違った意味でうっとおしい。」


 起き上がるディエンド。

 しかし声のする方向はディエンドからではない。それでいてディエンド、海東大樹の声だった。


「身代わりを用意したのにね。」


 そして無空より現れる、インビシブルを解いて現れるもう一人のディエンド。それはイリュージョンでは決してない。

 先程起き上がったディエンドの像が惚ける。霞んで入れ替わり現れる緑のボディ。コピーベントが今解除された。


「仮面ライダー、ベルデっ!」


「やりたかったんだね。ハイハイご苦労さん。」


 そしてベルデ自体も消失、残るはディエンドだけになった。


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