2011年7月10日日曜日

5 カブトの世界 -クロックアップ- その18







 鳥のさえずりさえ聞き取れない圧迫する程スローな流れで、身動きが取れないカブト。

 ヘラクスに絡め取られ、前方からドレイクの必殺弾が発射され、正対する後方よりも同じものが巨大なしゃぼんのように悠然と迫ってくる。

 地面の影が前後に伸びていく中、拘束がややゆるんできた。ヘラクスが十字固めの手を放した。


「死ぬがいい!」


 ヘラクス、仰向けのカブトへまず肘一発、続け様腰から斧状の、カブトと同型のクナイガンを叩きつけ、自らは跳躍、前後の光弾から退避。


「お婆ちゃんが言っていた。」


 アックスのダメージから寝ながらにして、ゼクターへ手を伸ばす。


『1、2、3』


「二兎を追う者は二兎とも取れ。」


 飛来、

 カブト側近に空を割ってジョウントする黄金剣、パーフェクトゼクター。

 柄を握って立ち上がる紅のボディ。

 一閃、

 高速で接近する光弾を寸でで下から縦位置文字、真っ二つに裂くと破裂する光弾、

 次いで自ら黄金剣を地面に差すカブト、


「ライダー、キック」


『RIDER KICK』


 逆サイドから近接する光弾に、柄を握りながらのスピンキック、

 爆砕する光弾、ドレイクへと振り返る五体満足のカブト。


「往生際が悪い。」


『1、2、3』


 そのカブトへ既に3発目のシューティングを構えるドレイク。


「遅い。」


 だがカブト、パーフェクトゼクターの唾を畳み、柄を折り込む。パーフェクトゼクターガンフォーム。


『KABUTO POWER』


 黄金剣の刃先から発射される光芒、

 ドレイクゼクター先端で膨れあがる光弾、

 その光弾を突き破ってくる光芒、

 破裂する光弾、

 ドレイクはその合力した爆発を至近で受け吹き飛んだ。


「ぐぁ」


 頭から落ち、砂を巻き上げながら地面を転がり、さらにはドレイクゼクターが逃げるように宙を舞い除装されるスーツ、生身で泥塗れになりぐったり動かない装着者。


「アナベル!」


 絶句するヘラクス、


「撃つ直前に視界が取れなくなる事、それが欠点だ。」


 カブト、黄金剣を頭上に掲げる。するとドレイクゼクターが自ら寄り添って剣の刀身に留まる。


「アナベルの名誉は、私が守る!」


『RIDER BEAT』


 ヘラクスのゼクターより、得物のクナイガンの幅広の刃へエネルギーが迸る。突進する女の叫声。


「おまえの欠点は、使いこなしていない事だ。奪って間もないのだろうな。本来の持ち主から。」


『DRAKE POWER』


 パーフェクトゼクターより迸る奔流、ドレイクゼクターの二枚の羽根の先に轟く。


「だまれぁぁぁぁ」


 すれ違う、


『CLOCK OVER』


 微動だにしない二人に、一塵の風が流れる。

 カブトが剣を一振り祓う、

 ヘラクスが前のめりで倒れる、


「おまえ、電波塔へ、行く、のか・・・」


 倒れ様ゼクターが離れ、素顔を晒す女の顔が土に付く。


「・・・・・・」


 カブトは、もはや倒れる二人の事など視界には無い。

 ただ遙か先の電波塔があるのみ。


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