2011年7月10日日曜日

5 カブトの世界 -クロックアップ- その30







 カブトの両脇に抱えられた二人の男女で最後であった。全てが遅滞するカブトだけの世界。塔の上でディケイドと対戦していた二人を、バイクから降りようと犬のように片足を上げている栄次郎の横へ、他の人間と纏めて放り投げた。


『CLOCK OVER』


 正常に流れ出す世界。轟音と共に倒壊する電波塔、人間サイズのパイプが断続して降り注ぎ、パイプの落下が土砂と瓦礫、アスファルトを宙に舞わせて、その1つが門谷士の額に傷を入れた。


「他人から面倒をかけられるのは御免だ。分かっているのか!」


 カブトに気づいた士は、光夏海の頭を抱きかかえながら起き上がる。


「煩いっ」


 威勢の良さはカブトを安心させるに十分だっだ。対面を振り返るカブト。


「ごめんよ、君を倒せば、比奈ちゃんのお兄さんを助けられるんだ。君もまんざら悪くない訳じゃないみたいだし、遠慮なくイクよ。」


 そこに立つ一振りの片刃刀剣を握るライダーがいる。漆黒のボディに頭は赤のラインが入り、肩から肺を覆う形で腕の先まで黄色いライン、脇から足先まで緑のラインが入るライダー、ベルトに3つのメダルを装着する『仮面ライダーオーズ』が『メダジャリバー』片手にカブトの眼前に立つ。


「そんな言い訳程度の偽善を纏わなければ、おまえは世の中全てを見下せないのか?」


 鉄骨がカブトの頭上に落下、


『CLOCK UP』


「言い訳?君は何を、消え、」


 鉄骨が地面に落下して轟音と砂塵を発する、既にオーズの視界から消えているカブト、

 だが、オーズはタカの目を持っている。タカの目はカブトの同時性を破綻した動作を最後まで見切っていた。

 弾かれるメダジャリバー、

 掴むのはカブト、

 だがオーズ装着者の脳が判断する前に既にカブトは間合いに入り、腕が動く前に、肘一つ浮かせて片刃刀剣をもぎ取る。


『CLOCK OVER』


「ふんっ」


 振りかぶるメダジャリバー、

 至近でカブトを捉えるオーズ、至近から奪われた自身の得物で斬りつけられ後方へ跳ばされるオーズ、辛うじて踏ん張り立ちの姿勢を保つオーズ、


「くそ、アンク、メダル、奴の動きを抑え込むコンボで、・・・・・アンクいないんだったっ!」


『1、2、3』


「お婆ちゃんが言っていた。良い人間と、自分を良い人間と言う奴は天と地ほども違う。ライダーキック!」


『RIDER KICK』


 炸裂する右回し蹴り、

 トラの両腕を立てて頭をガードするのが手一杯のオーズ、折れるトラの爪、弾かれるガード、胴が割れる、顔面に皴、オーズ、勢い後ろへヨロヨロと下がる、

 そのオーズの後背より次元のカーテンが出現、オーズを呑み込み、この世界から消し去った。鳴滝は役に立たないライダーをイレギュラーとしてすぐに消す。


「アラタに、似ている。」


 カブトは対手が消えた事を認めて、自分の右の脛を眺める。深々と鋭角的に切り込みが入って、軽く出血すらしていた。


「奴に怪我を負わせた覚えはないがな。それとも対手の方が手強いのか?」


 カブトが首を上げる。

 そこに映った光景は、ディケイドが一本のロープのようなものに絡め取られた姿であった。実はそれが金属のロッドであると聞かされれば、カブトはさぞや驚いた事だろう。ディケイドと対峙する、今は金と銀でボディを彩った『仮面ライダーW』に。


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