タイトルの通り、2009年テレビ朝日系列放映「仮面ライダーディケイド」を私的にリ・イマジネーションしようというブログです。 同番組、並びスタッフ、石ノ森プロ、東映、バンダイとは一切関係ありません。
2013年1月3日木曜日
6 スカルの世界 -Lのいない世界- 第一部 その5
金属の焼ける臭いには既に自覚すら無い深海マジュであった。もはやハード的な問題は全処理を完了し、最終デバッグをかけてチップが完成する。黒縁の度のキツいメガネに『G4SYSTEM』というディスプレイのロゴが反射される。ピン二つで止めた黒髪を下ろすと、腰のあたりまで毛先がくる、首の細い女だった。
窓のカーテンが踊り、夜風が腰掛ける白衣までも揺らす。マジュはその時微香を感じた。あまりにも爽やか過ぎて毛穴に刺すような刺激を与える程の香りだった。
「本当にいつも窓から来るのね。大樹。完成したわ。『G4チップ』、これで私のESPシステムと併せれば究極の超人が誕生する。」
メガネを外したマジュの漆黒の瞳は爛々とした。その内側にどれほどの漆黒が溢れているのだろうか。そんなマジュの瞳をディスプレイの反射越しに見つめる海東は、キャップ帽子を既に逆向けにし、マジュの細い首元に腕を回してもたれ掛かるように抱きしめる。
「君のおかげで破損したG4チップを修復できた。本当に感謝している。」
「貴方が、あの八代淘子からこれを持ってきてくれたのは、私にとって幸運だったわ。」海東の掌に自らの手を重ねるマジュ。「私貴方のおかげで大変な栄誉を手に入れる事ができる、いえ、貴方のおがげで高慢で粘着質な自分から変われそうな気がする。今までの自分は、なにかがすり減っていた。」
そんなマジュの顔を黙って見つめ、下顎に手を添えてこちらへ向かせる海東。それが二人の合図であり、マジュはいつも通りその野心的な眼差しを閉じ待った。海東の手は顎から両肩に添えられ、そろそろ口元の臭いがしてくる頃合い。しかし今回は違った。
「お宝は確かに頂いた。」
既に窓際に立ち、SDアダプタからチップを抜き取る海東大樹。徐に帽子の前後を正した。
「大樹!貴方の為にこんなにまでした私を裏切るつもり!」
海東は嫌味な程の爽やかな笑顔を向ける。笑顔は、カーテンの揺れに見え隠れする。
「僕は泥棒がサガなのさ。人から盗む。君の心を盗んでお宝を得た。ただそれだけの事。僕は高慢な女は嫌いじゃない、粘着な女も面倒見てあげたくなる、だが高慢で粘着なのは、ヘドが出る。」
せめてそう言う事にした海東、颯爽窓を飛び越えた。立ち上がってマジュが窓から身を乗り出した時、既にどこにも姿は見えなかった。マジュは倒れ込み、ただ呆然とした。マジュの漆黒の瞳に、ディスプレイ上に表示された『第4世代型対未確認生命体強化外骨格及び強化外筋システム』の完成図面が映っていた。
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