2013年2月2日土曜日

6 スカルの世界 -Lのいない世界- 第二部 その5





 メタルを前方、ヒートを後方に、絶妙のタイミングで同時攻撃を迎えなければならなくなったHJ、

「ジョワッッ」

 メタルの振り下ろすロッドに、背を向けるHJ、

『ヒート メタルぅ!』

 左半身を鋼に変えるWの背にロッド軸が出現、メタルのロッドを受け止める形になる、

「うっぜぇぇぇ」

 そして正面から受け止める形になったヒートの膝打ちを十字ブロック、左前腕で相手を抑えながら、背の得物をメタルを弾きつつ抜いて、リーチを伸ばしヒートへ横薙ぎ、その勢いのまま両者から間合いを開けるHM。

「ナニモンだこいつら、」

 得物のメタルシャフトを時計回り1度、反時計回りに半円だけ振って眺めるHMの視界には、悠然と2対1の状況にゆとりを見せ居並ぶ2体のドーパントがいる。今HM向かって左にメタル、そのいぶし銀のボディにもたれ掛かるように右にヒートが立つ。

「てめえは引っ込んでろ!」

 そのメタルの咆吼が合図となってHMと2体のドーパントが間合いを詰める、ドーパントは同時にHMの左右へ回り込む、HMがメタルのロッドを弾いた反動でヒートを威嚇し一旦退かせた上でシャフトを旋回させ再びメタルへ打ち込みにいく、しかしメタルもまたロッドのモーメントを保存しつつ打ち込みをかけ、互いの得物が交差し弾き返され互いの姿勢が崩れる、そのHMの死角からヒートが再び摺り足をかけてくる、その急激な体感温度の上昇から背後の敵チャージに気づいてたまらず跳躍し逃れようとするHM、

「さっきは3人に囲まれて凌いだのに、」

 翔太郎が囲まれた敵にHMを多用するのは、メタルシャフトという武具の属性が反動を利用する事にある。HMのパワーで打ち込んだ反動がそのままモーメントに変換され別の敵へ打ち込む力とレスポンスを産む。パワーがあればあるほどシャフトの速力も増す形になる為、本来ならレスポンスで凌駕するCJやCMに匹敵する速力を、一対多の状況でHMに発揮させる事ができる。

『敵の連携は先程とは段違いだ。』

 だからこそ敵の包囲を崩し各個に相手取る為、HMは跳んだ。

「上げて」

「飛べ!」

 それを追って跳躍するヒート、ただ跳躍するのではない、メタルの掌に片足を乗せ、メタルが押し上げ、そして自身の脚から噴煙を吐き、もはやそれは飛翔、圧倒的な速度でHMの頭上を越える、

「『なに?!』」

 振り下ろされる踵、後頭部に食らう、地に叩きつけられるHM、メタルに首を掴まれ持ち上げられ、その得物の鉄の爪で肉体を引き裂かれる、同素材同士の摩耗が火花を生む、片腕だけのメタルの膂力で50メートル先の大木に投げ飛ばされるHM、

「バイバイ」

 傷だらけのHMにヒートが追い打ちの火球を放つ、
 爆発、

「『をぁぁ!!』」

 近接爆破を食らって天地逆に宙へ舞い上がるHM、そのまま落下して背を強く打ち地に転がる。

「こいつらツエエ」

 立ち上がろうとして思わず片足が滑り膝をつくHM。その視線の先に映るのは2体のドーパント。だがその2体は、HMを視ていない、別のライダー、厳密に言えばそれと対峙し、今まさに揮発的に消失したドーパントを凝視していた。

「ケンが、どうして!?」

「ケンなんだぞ、あの、許せネエ!」

 それはWにとって意外な程ドーパント達の反応だった。そしてそこに千載一遇のチャンスを見た。

『ヒート トリガーぁ!』

 左半身を冷徹な蒼へ変え、トリガーマグナムへメモリを差し込み、バレルを大口径へ、

『トリガーぁ! マキシマムドライブ』

 ヒートサイドの腕で構える、口砲に閃光が蓄積する、

「『トリガー エクスプローション!!』」

 轟く火芒、反動で両足を引きずり地に跡をつけるHT、

「どけレイカ」

 メタルがその急激な熱輻射に気づく、

「どくのはアンタよ」

 だがメタルを制して前面に踊り出たのはヒートの女、その全長を越える火の塊がヒートを呑み込む、呑み込むと同時に圧倒的熱量がヒートを圧搾し過熱、背後のメタルも吹き飛ばされそうなヒートを背を構えて支える、

「うりゃぁっ!!」

 ヒート、なんと圧搾する熱量を圧し返し火芒をかき消した。だが息荒く、全身から煙を吹いている。思わず片膝を折った。

「ブレイクしねえ、凌ぎやがった、ヒートの女、」

『Wのもっとも強力な攻撃を同じヒートの属性で堪えた?』

 むしろ攻撃したHTが棒立ちする。

「おめえまで死んでもらっちゃ、オレが困んだよ!」

 ヒートの背後にいたメタル、HTを睨みつけつつヒートを肩で担いでジリジリと後退していく。
 目で追うだけのHT、まだ脚にダメージがある。

「それより、」

 その時点でようやくスカルを振り返るWだっだ。




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