2013年2月2日土曜日

6 スカルの世界 -Lのいない世界- 第二部 その6





「お父ちゃぁん!」

 助けて、とまでは言ってはいけない事を知っている娘だっだ。
 そのアキコの腕を捻って盾にする包帯の女。

「あの大坂の女に産ませた子?私を止めたいなら、この子を犠牲になさい。私の来人や、あの貴方の相棒のように。」

 対面し、ただ銃口を向けるスカル、その硬質のマスクに表情というものは無い。

「おまえに、その子はやらせん。」

 一発、
 スカルの放った弾丸が、アキコの頬を掠め、包帯の女の肩を掠める。
 アキコの頬から血が流れ、目に大粒の涙が潤んだ。

「お父ちゃん撃つんや!どうせ私お父ちゃんの本当の子や無いもん、だから、私平気やもん!!」

 少女の肉体は見て分かる程震えていた。

「養女?まさか、この子が、そうなのね、荘吉、貴方娘としてこの子を傍に置いていたのね、これで全てが揃った、」

 包帯の女はそんな少女を強引に引っぱりながらジリジリと間合いを空ける。スカルはジリジリと間合いを詰める。

「この子は私のものよ、来るな荘吉!」

『スカル マキシマムドライブ』

「オレは、もう決断を鈍らせない。」

 スカルマグナムへ再度メモリを装填、充実する銃口の光、そのドーパント一体を葬り去る光弾が、アキコに向かって放たれた、

「なにすんだぁ!」

『ルナ メタルぅぅ!』

『メタルぅぅ マキシマムドライブ』

 その時、横合いからその紫の影の光弾を、無数の円環が自在に追尾して擦ってはUターンして再度突進を繰り返し、砕けては円環が分裂して突進、増殖する円環が少しずつ紫弾の軌道を逸らし、ついにはアキコと包帯の女が免れる位置で爆破、砕けない弾丸を横合いから逸らした、二人の長い黒髪が至近の爆風に靡く、
 飛びそうな帽子を抑え思わず人質から手を離す包帯の女、アキコは逃げるというより爆熱に仰け反って地面に倒れる、

『ルナ ジョーカーぁ!』

 そうしてW、左半身を黒く染めて右腕を伸ばし、スカルマグナムのバレルを上から抑え込み、スカルに詰める形で腕を縮める。

「どけ小僧」

「なにやってんだぁんた、娘を巻き込むのか!」

「決断するという事はそういう事だ」

「おやっさんがそんな事すんじゃねぇ!!」

 だがそんな二人を震動が襲う、

「ぉぉぁあぇあ!」

 それはギャリー、そしてメタルの咆吼、メタルドーパントが転倒したギャリーを再度起き上がらせた。大上段から振り下ろされる前輪を回避する二人のライダー、スカルは自らのスタッグフォンを取り出す、

「ムダよ荘吉、私が作ったもの、マスターコードは私が握っている、」

 包帯の女もまた同型のフォンを片手に握っている、メタルがヒートを抱えて動き出すギャリーに飛び乗った、ギャリーはスピンターンで包帯の女の円周の軌道で背後へ、包帯の女が再びアキコに手を伸ばす、

『ルナ メタルぅ!』

 右ボディを銀に染め、メタルの剛腕でスカルを絡め取りながら、出現したシャフトをあり得ない軟質な動きに10数メートル伸ばし、まるで撓るムチのごとく包帯女の側近地面を打ち、アキコに触れさせないW。

「未知数のライダー、いいわ、来人が回復してからその恐ろしさを味わせてあげる。」

 ギャリーの側面に捉まる包帯の女、ギャリーは二人のライダーにエグゾーストを向け逃走、

「待て」

 スカルがLMをようやく振り払って、マグナムを連射、だがギャリーの装甲はことごとく弾き返し傷一つない、

「うぉりゃ」

 LMがシャフトを伸ばしエグゾーストの一本に巻き付けようとする、

「うぉりゃぁ!」

 だがギャリーの頂に立ち、ロッドを振るうメタルドーパントがシャフト先端を弾き返した。

「くそっ」

 もはやスカルギャリーを捕らえる術を失い、立ち尽くして睨むしか二人のライダーにはできなかった。
 黙って変身を解く両者は共にメモリをバックルから抜くスタイルだった。

「馬鹿野郎」

 静かな挙動でシャープな拳が翔太郎の不意を襲った、

「おやっさん・・・」

 殴りつけられ、よろめき、それでも隣の壮年の顔をマジマジと眺める翔太郎。顔、その足先から白いスーツ、全縁の帽子、そしてあの最後に殴られた頬の感触までもが全て同じ。

「何を逃したか分かっているのか」

 脚の震えを留める事しかできない翔太郎は、喉を鳴らした。

「たとえ、どんな野郎だとしても、誰かを犠牲にするような、そんなやり方、オレの知ってるハードボイルドなら、絶対しねえ!」

 あの時と違って多少の口答えできたのは、歳月が経ったからに過ぎない。

「オレに誰かを重ねるな、小僧!」

 雨がいつのまにか二人の肩と崩壊した園咲の庭を濡らしていた。荘吉は青年に背を向け、翔太郎はその男の背を見るしかなかった。

「アンタ、お父ちゃんに盾突いたらあかんで、お父ちゃんはな、間違った事言うた事無いねんから!」

 心無しか翔太郎の耳に、髪が濡れ雫が滴る少女の声が震えて聞こえた。唖然として見上げる翔太郎に、視線を合わせず手だけを差し伸べ下唇を噛むアキコだった。





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