タイトルの通り、2009年テレビ朝日系列放映「仮面ライダーディケイド」を私的にリ・イマジネーションしようというブログです。 同番組、並びスタッフ、石ノ森プロ、東映、バンダイとは一切関係ありません。
2013年2月2日土曜日
6 スカルの世界 -Lのいない世界- 第二部 その1
ハッハッハッハッハ
街でもっとも巨大な建造物は『風都タワー』であるが、個人所有でもっとも広大なのは『園咲』の屋敷だ。正門から2キロ歩いてたどり着く洋館の、その5メートルの高さの扉を開けるとすぐに昇り階段が前方に伸びるホール、その階段の途中に起立する一匹の化け物、肩幅を超えるクラウンを頭に頂く闇夜のような漆黒の『テラードーパント』がホール全体を通る高笑いを上げた。
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ
テラーの眼下に5人の男女、内4人は統一された黒のパット内蔵ジャケットを着込んで、それぞれ屈強な肉体を包んでいる。だがそのことごとくがテラーの足元から伸びるヘドロのような影に差された途端阿鼻叫喚の断末魔をあげ、汗を吹き、眼を血走らせ、体液をばらまき、震えが止まらず、得体の知れない言葉を羅列しながら、最後は白目を剥いて卒倒した。死因は厳密には心不全である。
「来人の為に揃えた4人なら、もう少し耐え切れると思ったのだけど、」
やや後ろに位置し影から辛うじて逃れているもう1人は、全身を包帯と黒いコートで隠しているものの、女の体型である事は明白だ。サングラスと長いカツラ、つばが魔女のように広いハット、手袋、ブーツ全てが黒で染められ、肌が全く外気に触れていない。
「どうしたフミネ、頼りの尖兵は全て死に絶えたぞ。それでよく私の前に再び立てたものだ。」
ホールの端から端に通るテラーの男声は、まるで透明人間であろうとするかのような女を下の名前で呼んだ。
「ごろつき、樵夫、傭兵、女囚、死の恐怖に耐性があると思っていたけど、死に近い程死を怖れるのね。いいわ。」
覆面の女が取り出すのはあのWのトリガーマグナムのリペイント。Wのそれと同じくメモリを一本差し込んで傾いた銃身前部を跳ね上げる。
『タブー マキシマムドライブ』
続けて4連、敵テラーに対してではない、その銃口を向けたのは、未だ恐怖の闇が全ての毛穴からドクドクと染みこんでいく4つの死体。
マキシマムの光が灯った死体は、不思議な事に眉間が動き、目蓋の裏の眼球が左右にぶれ、開き、4人の男女の眼に光が戻る。
チゥッウッセッィ、グッジョブ、開発反対、地獄にしては殺風景なところね、
立ち上がる4体の男女は、もはや足を闇に漬けても動じず、眼光はむしろ迸る程に凛としている。
「タブーでネクロオーバーにしたか。そのメモリを手にする為にフミネ、おまえは、家族を犠牲にしたというのか!」
「アナタは家族が欲しかったんじゃない、重荷にしか思っていなかった!」
共に嗄れているが、ホールの隅まで通る男と女の対峙。その間に割って入るようにワラワラと数十人の黒スーツで整えた者達が現れ出でる。それぞれメモリを首筋に刺す。
『マスカレイド』
スーツはそのまま肉体だけが液状の膜に覆われ、黒い覆面に後頭部から頭上を回って唇まで大型動物の根本である脊椎が張り付いている。『ドーパント』の中でも人体が持つ潜在能力を引き出す力が弱い代わりに毒素が人体の復元力を越える事の無いそれがマスカレイド。黒い仮面の男達に囲まれ、包帯の女ら5人を囲む。
クネクネっ!
フミネを除く戦闘集団4人は銃、ロッド、ムチ、女に至っては格闘でマスカレイドに対抗し、ホール全体がドーパント対ネクロオーバーの乱闘の場と化す。
だが二人、階上にいるテラーと正面扉近くに立つ包帯の女は呆然と立つのみ。
包帯女の背後の扉が突如開く、そこにもさらに数十のマスカレイドが、振り返りその長い黒髪が乱れる包帯の女、
マスカレイドの挟み撃ち、しかし、そのさらに背後、庭園から強烈な光が放たれた。
『ゾーン マキシマムドライブ』
一斉である。
一斉にマスカレイド全ての上半身が差別無く寸断されて消失し、下半身もまた消え去る。消えた肉体は、その者の背後、園咲の美しい庭園を血塗れにして断裂した死骸が散乱した。
ゾーンメモリは空間を制する。空間内にある物体の座標を自在に変化させる。物体の一部、上半身と下半身を別の場所へ配置する事も可能だ。
「来たわね、来人」
包帯の女がそう呼んだ者は腰に巻くドライバーも同じ『仮面ライダーW』。右半身がややエメラルドがかった緑と同じだが、左半身がメタリックな光彩を放つ紅だった。
「おふくろ、やつのメモリ、テラーを奪えば、本当にオレの肉体を取り戻す事ができるのか。」
その声には、少年の幼さが一切感じられず野心が満ちあふれていた。もう一人のWとも言える仮面の男は、テラーを指差した。
「おまえか来人。その肉体は借り物か。誰の肉体を乗っ取った?おまえが、この私に敵うと思っているのか!」
テラーが眼前のライダーを叱り飛ばした。
もう一人のWの周りに、黒いジャケットで統一された4人の男女が居並ぶ。
「たとえ貴様でも遠慮はしない」差した指を親指と曲げ換え真下を力強く差す。「さあ、地獄を楽しみな。」
「生意気な!お仕置きを受けたまえ!」
再びテラーの足元から影が居並ぶ5人を差す。だが平然と弾倉を交換する男、平然と髪をかき上げる女、首を回して鳴らす男、首を奇っ怪にクネらせる性別不問、そしてもう一人のWも全く意に介さず、メモリを1本取り出し、腰の『マキシマムスロット』へ差す。
『キー マキシマムドライブ』
腕を一閃し、瑪瑙色の斬撃を放つもう一人のW、テラーへ直撃、
「ん!?」
テラー全身が輝き、液状化して全ての形状が崩れ、液体が腰のベルト1点に集約して、1本のメモリ、テラーのメモリが排出され、ただ窶れた初老の男が現れる。老人は唖然と口を開けてただもう一人のWを見ていた。
「園咲リュウベエ。年貢の納め時だ。」
バックルの左から紅いメモリを取り出し、腰裏から取り出した大剣『エンジンブレード』にさながら中折れ後装式散弾銃のように差す。
『アクセル マキシマムドライブ』
だがそれで終わらない、さらに右側から翠のメモリを腰の『マキシマムスロット』へ差す。
『サイクロン マキシマムドライブマキシマムドライブマキシマムドライブマキシマムドライブ・・・・』
延々とリピートされる発動音、全身を紅い濃密な渦を纏って呻きを上げるもう一人のWが刀剣をホール床に突き刺し自身は跳躍、
「待ちなさい来人!」
跳躍頂点に達したその者は肉体で十字架を描く、上昇気流が渦巻いてモーメントを加速、その体勢のまま、一介の老人に錐揉みで足を向けさらに加速降下していく、
ぉぉぉぉぉぉ、
衝突する肉体、同時に老人の肉体が渦を巻いて肉片からさらに塵になり風のまま四散、老人の立ち尽くす階段もその先の壁ももろとも吹き飛んで、園咲の家の裏庭と星空とイルミネーションを輝かせる巨大な風車が見えた。
着地したもう一人のWが再び親指を力強く下へ差し示すと、紅の渦が爆発的にかき消える。
「この風都の支配者は、今日よりオレが成り代わる!」
大笑をあげるもう一人のW、ホールに狂気が震撼した。
「来人、なぜそんな事を!」
包帯の女がまるでヒステリーのようにもう一人のWに近づいていく。
「どうしたおふくろ、」二つのマキシマムよりメモリを引き抜く。「未練が残っていたという事か?」
除装された仮面より顕れる男の目つきはまるで狼のようだった。やや巻き毛、深紅のジャケットをした、細身の、まだ幼さの残る青年だった。
「そうじゃない」
!
声も無く突如苦しみ倒れる紅の青年、倒れなお震えが止まらず、転がった紅いメモリを握りしめ、目を充血させる。それを尻目に翠のメモリの方を拾って凝視する包帯の女。
「違うわ。ツインマキシマムは威力が絶大だけど、このリュウが保たない。最後のメモリーが揃うまで、迂闊に気取るのはおやめなさい。いいわね。来人。」
包帯の女は、ただじっと翠の『サイクロンメモリ』に語りかけていた。
「そのガイアメモリが、フミネ、おまえの息子のなれの果てか。」
月光を背に立つ皺一つない白の上下、白のソフトフェルト、
「荘吉、来たわね」
日本名を持つにはあまりにギャップあるその身長と脚の長さ、『ナルミ荘吉』という男の名を、この街の住人は知っている。
「あら、いい男」
屈強なあごひげの男が裏声で思わず叫んだ。
荘吉は完全にフミネ以外の者を無視してソフトフェルトに隠れた眼光を向ける。
「タブーの女の死に顔は、美しかった。」
白のソフトフェルトを脱ぐ荘吉、その目つきは野獣を繋いでいる。
「プロフェッサー、今やるのか?やらないのか?」
SMGを抱えた切れ長の目の男は、タバコ焼けした喉を振るわせた。
「おまえたち、メモリーをお使い、」
ジャケットの4人が一斉に右手に持つそれは、それぞれ特徴的な色をしたWと全く同じ規格のガイアメモリ。
「恐怖の帝王にも使わなかったのに、こんなヤサ男に使えってか。」
すきっ歯がどこか憎めないターバンのロッド持ちのガタイに比べれば、人類の大半はヤサ男にされるだろう。むしろ隣のヒゲがそれとどっこいの体格である方がレアだ。
「フミネ、おまえとおまえの息子は、園咲リュウベエを倒した後何をするつもりだ?」
荘吉は帽子を持った手をゆっくり伸ばし包帯の女を差した。
「アタシらガン無視?なんかムカつく。」
ジャッケト集団の中にあって紅一点のパンツルックが、そのストレートの黒髪を片手でかき上げる。
「荘吉、私はこの」包帯の女はサイクロンを振りかざす。「息子の肉体を取り戻す。タブー、テラー、そして残りのクレイドールを手に入れて。いずれこの風都の、真の帝王となる、貴方が見殺しにしたこの来人の肉体をね。おまえたち何をしている!」
メモリを持った4人が、
『ルナ』
『トリガー』
『メタル』
『ヒート』
それぞれ額、掌、後頭部、胸元に出現した生体コネクタに差す、それぞれの肉体に吸い込まれるメモリ、4つの肉体が4色に光輝き、人体とは異質な形状へ変化させていく。一体は金色に輝くクラゲのよう、一体は片腕が銃器、一体は光沢と鈍さが交差する金属の塊のよう、一体は朧気に揺れる炎、この街の住人はそのバケモノを『ドーパント』と呼んでいる。
だが、荘吉は1体だけでも恐怖すべき理解不能の敵を4体眼前に見据えなお動じていない。
「帝王だと・・・・・、外を見てみろ、おまえの息子が何をしたのか、あの時と変わり無い、街を泣かせるだけの存在だ。」
荘吉の腰にはいつのまにかWのドライバーに似て非なるモノが巻かれている、スロットが一つしかないそれこそが『ロストドライバー』。左手には帽子、そして右手には指先2本で摘んだメモリ、
『スカル』
私、聞いてない、とどこかで聞いたような台詞をまくし立てる『ルナドーパント』、
「変身」
荘吉、スイッチを押したメモリをドライバーに軽く装填、撫でるようにスロットを倒し、右腕を軽く振り流す、
銃を構える『トリガードーパント』、
バックルより拡散する黒い欠片、それが荘吉に纏わり着き、漆黒のスーツと化す、
ロッドを半回転肩から脇に抱える『メタルドーパント』、
「タブーの女の依頼だ。おまえ達母子を止める。」
最後に荘吉の頭を包む骸の仮面の額に稲妻の刻印が記される、その刻印を敢えて白い帽子で隠す。
吐息を漏らし小指を立てた先に炎が灯る『ヒートドーパント』、
骸の戦士は、徐に人差し指で包帯の女を差す、
「さあ、」
そして掌を上向けに返す、
「おまえの罪を数えろ。」
ナルミ荘吉のもう一つの姿、風都で知らぬ者のいない『仮面ライダースカル』が、4体のドーパントと対峙した。
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