2013年2月2日土曜日

6 スカルの世界 -Lのいない世界- 第二部 その3





「こっちもいい男、あっちもいい男、いい男祭りだわ!」

 左側面からクラゲの化け物のようなルナドーパントが牽制、その触手のような腕が物理現象ではありえないアメイジングなストロークで伸び顔面を打ちにいく。スカルはそれを上体をスウェーさせるだけで躱していく。
 無言のスナイパー、トリガードーパントが逆の右から足元を狙う、その正確な射撃がスカルの足捌きを抑止する。スカルはその敵だけは眼で追って、擦る程度なら着弾させてもフットワークを止めない。

「ウォリァタぁ!」

 スカルより二回りある体躯のメタルドーパント、前面にあってスカルともっとも組み合う。スカル、一度はロッドを掻い潜って拳を一撃加えたものの、途端左右からの攻撃に晒され3倍するダメージを負う。

「うっとおしいオッサン!」

 後方にあって必殺の美脚で極めたいヒートドーパントは先も寸でで躱されイキリ立つ。スカルは大気の感触だけでその急接を察知して躱した。

「しつこい」

 スカル、1度はこの4者の連携を解いた。翔太郎と全く同じクワガタムシ型の『ガジェット』フォンに『ギジメモリ』を装填してトリガーの眼元へ体当たりさせ、メタルのボディへブローを放って拳の跡を胸元へ付け、ヒートの振りかぶる脚を肩パットで弾き、そしてルナの伸びる触手を一跳躍で躱して外の庭へ逃れた。そうして戻ってきたスタッグフォンを手にアキコの電話を取った。
 だが敵は上手で、ヒートが奥の手の火球弾を放ってトリガーとの十字砲火を形成、メタルに肉薄を許し、再び四面包囲の形でジリジリ体力を削られていく。

「もたつき過ぎよ!」

 ヒールを鳴らして玄関へ体を傾けた包帯の女は、聞いた覚えのある駆動音にいきり立った。

 駆け抜けるギャリー、
 直前まで全速力、
 前輪のブレーキを強め、
 スピンターンで制動、

「堅いわ、スゴク堅いぁ!!」

 車体に横殴りされ、吹っ飛ぶルナ。

「うぉわ」

 後輪に巻き込まれ、ロッドを突き立てながらも倒れ潰されるメタル。

「来たか、スカルギャリー!」

 待っていたスカルは、ヒートとトリガーの対空迎撃を敢えて食らいながらも跳躍、スタッグフォンで呼んでおいた『スカルギャリー』、頭蓋骨を思わせる巨大バギーの5本後ろに流す巨大エグゾーストの上へ立った。車体の丸みがトリガーからもヒートからもその身を遮蔽する。その上でスカルは自らの得物『スカルマグナム』を出現させる。

「うっとうしいオッサン!」

 ヒートとトリガーに向けてマグナムを乱射するスカル。上を取られたトリガーは即座に撤退、ヒートは同じく跳躍しようとして迎撃され地に倒れた。

「中から開いた!?」

 足元が震動、僅か姿勢を崩したスカル、それはスカルにとっても意外なギャリーの震動だった。

「スゲー、見渡す限りのドーパントだぜ。おやっさんどこだ?おい、園咲若菜、離せ!」

「ワカナちゃう!なんべん言うたらわかんねん!」

 それはギャリーが左右にボディを開いた震動、開いたギャリーの前半部は車両1台を入れるメンテナンススペースの台座、そのフリースペースに立つのは二人、翔太郎と依然腕に噛みつくアキコ。

「スカルギャリー、あの子達は誰?」

 困惑する包帯の女を含む敵、

「おまえは来るなと言ったはずだ、アキコ。」

 もっとも困惑しているのは、翔太郎頭上にあって二人を見下ろすスカルだった。

「お父ちゃん!加勢に来たでぇ!」

 いい加減な事を言うアキコだった。

「・・・・・スカルだ。ホントこっちの世界のおやっさんなんだな、」鼻下の汗を2本指で拭う翔太郎。「見せてやるぜ、今のオレを。」

 翔太郎、ダブルドライバーを取り出し、腰に据える、巻かれるドライバー、

『サイクロン』

 フィリップが次元を越えた先から左腕でメモリを作動させる姿は、スカルや包帯の女には見えない。

『ジョーカーぁ』

 見えるのは右手で掲げたメモリを作動させる翔太郎の動きのみ。

「ダブルドライバー?私以外にも作った者がいるという事、ジョーカー?そんなガイアメモリー地球の記憶に存在しない。いったい何者?」

 包帯の女は知るが故に驚愕した。

「『変身』」

 フィリップがバックルに垂直、右に差す、
 翔太郎の元に転送されるサイクロン、
 続いて翔太郎が垂直、左に差す、
 腕を交差してバックルを開く、バックルがW字の形状になる、

『サイクロン ジョーカーぁ!』

 両手を拡げる翔太郎、ファンファーレと共に細かい破片のような光が翔太郎の肉体を包む。

「まさか」包帯の女はその意味の成すところを理解した。

「はんぶんこ怪人や!」巻き起こる乱気流に髪を逆立てながらもギャリー外装の銀パイプを掴む。

「『さあ』」おもむろに黒い左腕で包帯の女を指差す。「『おまえの罪を数えろっ!』」

 右半身が翠に輝き、左半身が漆黒に光る、マフラーを靡かせる独特の大きな複眼を持つそれが『仮面ライダーWサイクロンジョーカー』。

「なんだあいつは」

 この世にいるドライバー持ちは自分を含めて二人しかいないと思っていた荘吉もまた困惑し、トリガーからの弾丸をジョーカーの素手で掴むライダーに見入った。

『あれはトリガー、そしてあれはヒート?まさかボク達のガイアメモリのドーパントに出会うとは思わなかった。ゾクゾクするねぇ。』

 CJ背後より、

「何この紛らわしいガキ!」

 ヒートが踵落としの体勢から放物を描いて落下してくる、

「感心してる場合かよ!」

 ギャリーより飛び降り様、ヒート腹部に跳躍力を伴ったカウンターの左、弾き返り転倒するヒート、その動きを抑止しようとトリガーが弾幕を張る、着地様食らうCJ、だが食らうのはそれまで、弾幕が止む、スカルがトリガーを牽制している、

『ヒート ジョーカーぁ!』

 立ち上がり再び向かってくるヒートに、敢えて待ちながら右腕を炎に焦がすHJ。

「おらぁ!」

 互いに殴り合い、推し勝つ、そのまま2度3度ヒートの顔面へ拳を連打。

「私がついに頓挫したフォームチェンジを、いったい何者なの、財団?それともミュージアム?いやこの世界で私よりガイアメモリーを知っている者などいない、ルナ!加勢よりリュウが先よ!!」

 包帯の女は今失神から触手を体ごと振って回復するルナを手招きする。

「あら、イイ男に絡みつけるのネっ」

 男声の怪物が、10数メートルもの物理的にあり得ない伸びの触手を、なお倒れる屋敷のホールで『リュウ』なる青年を巻き付け惹き付けると同時に跳躍、月光の煌めきから木の陰に一瞬で飛び消えた。

「逃がさ」

 揺れる足元、

「おと、ちゃぉぁっ」

 命からがら這い上がってヘタり込む金属の床が右斜めに隆起し思わず父の名を叫びながら滑り、もはや地面と直角する床を落下するアキコ、

「うぉりゃぁたぁぁぁ!」

 スカルギャリーの片輪が宙を浮く、いや持ち上がる、持ち上げるのは轢き潰され、地面へ埋もれたメタル、雄叫びを上げて復活だった。

「おやっさんが危ねえ」

 ギャリーの90度転倒に地面へ落下したスカル、メタルが迫り、それを視界に入れたHJ、左チョップのキレがクリティカルにヒートをたじろかせたのを見るや、右拳を発火、右フックの状態でメタルに突進、そのままアックスを首へ、メタルをはね除けるHJはスカルに向き返った。

「助けてやるぜおやっさん」

「どけ」

 だが身を呈して飛び込んだWなど見もしないで手で祓い、包帯の女へ駆けるスカル。

「おやぁ……」

『背後から来るぞ翔太郎!』

 スカルの背中を呆然と見つめるHJに、脳震盪を起こす事もなく復活したメタルが鉄の爪を振りかぶる。

「首鍛えてんなこいつ」

 右脚のステップで辛うじて躱すも爪跡が一線左胸に入る、だが怯む事無く左を入れて顎を掠めるHJ、

「ぐぉぉぉ」

 メタルの肘がHJボディへ、
 顎を揺すられながらまるで姿勢を崩さないメタルがHJを吹き飛ばす、

「クソ生意気なガキっ」

 吹き飛んだHJの先に踵をキメにくるヒート、

『あいつはメタル、翔太郎、やはりこの世界は中々興味深い。』

「言ってるな相棒!」

 メタルとヒートに前後挟撃されるWだった。




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