2013年3月3日日曜日

6 スカルの世界 -Rの立つ世界- 第三部 その5





「あちらのダブルドライバーは、来人のそれと同じくキーへの対策も講じて変身が解けない。マキシマムへの保護もやはり施されている。いったいなんなのあの存在は。」

 上を向いているのか下を向いているのかもさっきまで分からなかった。
 世界が真っ赤で、手の甲で拭って赤が取れた。

「失神してんぜこの娘、」

 私の事じゃなかった、全身を流し台の色に光るライダーが、黒いコートと長い黒髪の女、同じ姿の金色や赤のライダーに向かって、喚いている。ライダーはあのカッコツケル君の変身した姿にもそっくりで、あのベルトまで同じ。コートの女の顔は包帯がグルグル巻かれて、なんだか透明人間みたい。

「ワカナ・・・・、なんて酷い、それもこれも全て私達家族を踏み台にしたあの男のせい、でも安心なさい、あの男は既に来人が消し去った、」

 死んでいたと思った、私は目を背けて喉元まで胃の内容物が出てくるのを我慢した、目頭が酸っぱくなった、もう人が死ぬところ、けっこう慣れちゃったと思ってたけど、さっきまでしゃべってた子は、脳の中の想像がいっぱいいっぱい出て、目をもっと酸っぱくした。

「安心しなさい。貴方はこのくらいの傷では死なない、」

『ジーン マキシマムドライブ』

 黒いコートの女がメモリとかいうものを銃の中に収めてアキちゃんに撃ち込んだ、ムゴイ、と一瞬思った私の目が間違えていたのはすぐ分かった。

「イタイ・・・・イタイよお父ちゃん・・・」

 むしろそれを見ている事の方がさっきより気持ちが悪かった。さっきまでボロボロだったアキちゃんの肌がすべすべに戻って、アキちゃんが拭った血の痕から真新しい肌が出てくる、エメラルドに光る0と1の数字の羅列がアキちゃんの体を流れて、立ち上がって困惑するアキちゃん、さっきまでの気持ちの悪さがその光を見ているとなんだか安らいだ、お母さんの中にいるような暖かい光だった。

「貴方のDNAに直接クレイドールのメモリーを封印しておいた。テラー、タブー、クレイドール、全てのメモリーをサイクロンと共にマキシマムで発動した時、貴方の弟は完全な肉体を取り戻し、そして検索を越える地球の記憶との一体化を果たし、地球そのものになる。」

 アキちゃんは全てに怯えて、唇を振るわせて後退った。

「いやや、アンタなんかうちの母親ちゃう!うちは、うちの家族は、お父ちゃんだけや!」

「荘吉に私は2つの依頼をした。1つは貴方を安全なところへ匿う事、もう1つは園咲リュウベエから来人を取り戻す事。あの男は貴方を預かる事は承知したのに、来人は取り返すどころか、見殺しにした。私が辛うじてサイクロンメモリーの中にサルベージしなければ、来人は永遠に失われるところだった。貴方の家族を見殺しにしようとした男よ。そんな男に騙されてはダメ。」

「ウチは、ナルミアキコやっ!」

 もう向かい合って立つのもイヤなんだと思う。アキちゃんは、振り返って今頼りにするしかないカッコツケル君の元へ逃げようとする。でもそんなアキちゃんの背中を指差す真っ赤なライダーがいた。

「ヒート、駄々っ子をお仕置きしておあげなさい。」

 あのカッコツケル君を真っ赤に炙ったような姿のライダーがその指先に炎をつけて弄んでいる。

「足の一本焼き潰していい?」

 そう言って指先の炎を下手から投げる女声のライダー、逃げ惑うアキちゃんの左足に当たって、燃えて黒こげになって体を支え切れず倒れる、私はでもその時アキちゃんに流れるエメラルドの光が、すぐさま足を元通りにしていく様も分かった。一番困惑しているアキちゃんの顔も分かった。

「貴方は来人が可哀想だと思わないの?家族なのよ。」

「逃げられない、逃げられへんなら、」

 アキちゃんはまたあの包帯の女や同じ姿のライダー達を振り返り立ち上がった、

「ウチはお父ちゃんの子や、お父ちゃんの事信じてる、お父ちゃんがアンタラを倒す言うんやったら、ウチもお父ちゃんといっしょにアンタラを倒したるんや!!」

「最近の子供は生意気だね、この私の前でヤケになるなんて」

 また指先から炎を発する赤いライダー、
 アキちゃんの髪が後ろに引っ張られるようにたなびいた、アキちゃんはそれでも眼を細めながら逃げない、大気が熱を帯びて突風になる、突風を追う形で炎がアキちゃんの顔に向かって飛んでいく、アキちゃんの耳にまとわりつくように、頭と同じ大きさくらいのエメラルドの珠が左右2つ浮かぶ、エメラルドの珠が向かってくる炎を受け止めかき消す、もう1つの珠が炎の軌跡を真逆に辿る、赤いライダーが自分の放った火で眼が眩んだせいでお腹にまともに食らった、エメラルドの光が帯電したように全身を掛け巡って赤いライダーがもんどりうって苦しみ出した、

「クレイドールとのシンクロ率が高い、細胞を活性し回復させ、過剰になれば神経を痛めつける能力、死んだ細胞のネクロオーバーには、生き返った細胞は癌に等しい。地獄の苦しみを味わう事になるわ。でもね、」

 包帯の女が背後にいるもう2人のライダーに指図する、キンキラなライダーが昔見たペッタン人形みたいに両手を異様に伸ばしてアキちゃんの喉を絞めようとする、なんかキモい、でもアキちゃんの珠がそれを祓い除ける、キンキラなライダーがしつこく絡みつきながら、今度は足を伸ばして仲間の流し台ライダーの腹に巻き付いてそのまま天高く放り投げる、

「いってらっっしゃぁぁぁぁ」

「ていやさぁ!」

 放り上げられ、さらにキンキラの足裏を踏み台にして飛んだ流し台がアキちゃんの真上から落下して棒を突き出してる、アキちゃんはキンキラに手一杯になって、見上げた時にはもう棒が首筋を強く伐っていた、

「不死身だろうと、一撃で意識を断ち切る事はできる、どれほど優秀なメモリーと高いシンクロ率があろうと、しょせん生身のシロート。闘士のスキルには敵わない。」

 アキちゃんは一打で失神し、流し台の太い腕に抱えられた。ギンギラはそのまま肩に背負って包帯女の元へ。

『スカル マキシマムドライブ』

『キー マキシマムドライブ』

 包帯女が見たのは、少し離れたところで戦う、あのカッコツケル君達の方。

「来たわね、荘吉。でももうこちらのモノよ。」



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