2013年4月5日金曜日

6 スカルの世界 -Rの立つ世界- 第三部 その14





 デスバニッシュ炸裂、
 そこは探偵事務所向かいの15階層マンション屋上、探偵事務所とほぼ同じ方向から風都タワーの大風車の回転が見えている。そのさらに直上から仮面ライダーベルデが仮面ライダールナを脳天逆さ落とし、コンクリートを蜘蛛の巣状に突き刺した。

「ありがとう。」

 既に同じ屋上にディエンド-夏海は立って突風を感じた。風都と言うだけあって高度が上がる程に風力は凄まじいものになる。ディエンドに指を立て合図を送ったベルデはそのまま無言で次元のカーテンへ。

「終わりとは思えないけど」

 吹きすさぶ風の中、ゆっくりと間合いを詰めるディエンド、立てた銃口にすら緊張感がある。ルナは依然逆さで頭をコンクリートに突き刺したまま硬直している。人間の腕のストロークまで歩みを一旦止め、そこから銃口で突く。もしこれが門谷士ならば、問答無用で数発撃ち込んでいたろう。だがディエンド-夏海にはそこまで無抵抗の者に踏ん切れる程の度胸も想像性も無かった。全くである、感触がない、まるでそこにあるルナの肉体が存在しないかのように銃口が空を切る、まるで幻のように、

「幻を見せられるという事は、本物を見せない事もできるのよ~」

「!」

 ただ闇雲に後ろだと思って振り返るとあの仮面ライダールナがタコ踊りをして自在に手足を伸ばしてバカにしている、ディエンドには少なくともそう見える、
 乱射乱射乱射、

「クネクネェ~腰が踊るよヌルヌルゥ~」

 骨格が無いかのように自在に肉体を歪曲させ、時には自ら肉体に穴を空けて弾丸を素通しさせるルナが肉薄、

「こないでキモい」

 怯んだところへ腕1本を触手として伸ばしディエンドライバーを叩き落とす、そのまま片腕に絡んで両足を叩きつける形で圧し倒す、ルナが数本の触手からディエンドを引き込んで飛びつき、人体に戻って相手を重さで前転させて圧し倒し、腕を跨ぎ、十字固めに極める。ディエンド-夏海初のダメージはオカマからの腕挫十字固であった。

「ワタシ、実は女にはキビしいの。」

「銃・・・・」

 完全に極められ、落としたディエンドライバーまで手が届かない、ディエンドの全ての攻撃と召喚はディエンドライバーに集約する、ルナは知ってか知らずかディエンドの全てを封じた事になる、喉の圧迫がディエンドの神経を寸断にかかる、失神してしまえば、そこでこのオカマ触手野郎のやりたい放題だ。

「ガキ、オレの顔汚した罰は受けてもらうぞ」

 とここに来てルナの声色が野郎のそれになった、関西訛りがある、経歴は指詰め注意のルナだった。

「頭は、」

 ディエンドが首を圧し絞められながら呻いた、

「なんじゃ」

「頭は、どうやっても、変形しないようね、」

 たどたどしく、しかし声にはっきり気の強さが感じられる、

「なんじゃそりゃ」

 ディエンド、腰裏に空いた手を回した、取り出すのは、先のカブトの世界でディエンドライバーと共に拾っていた、鉄甲状の白い、瞬間電圧5万ボルトの、『イクサナックル』、

「武器はまだあるんです!」

 ナックルの狙う先、それはルナの顔面、一撃で失神させうる2つの孔が光を帯びる、

「なんじゃそりゃって言うとん、や!」

 だがそのルナの左脚が伸びる、触手が腕を叩きつけ、ナックルが宙高く上がった。もし、対手がルナでなかったら間違いなく詰みだったろう。野太い半笑いが、いつもの裏返った冷笑に変わるルナ。

「う」

 悶絶寸前の吐息をあげるディエンド、高く舞い上がったナックルは、やや前のめりの重心に振り回される形で宙をクルクルと回る、

「その首を引き裂いて、あ、げ、る」

「もう・・・・」

 周囲の景色が薄ぼんやりとしていくディエンドの視界、動きのあるナックルの回転だけが多少区別できる、そのナックルの動きが止まった、宙で止まった、ディエンドの肉体から力が失せぐったりとする、

「なんですって!」

 宙で止まった、いや何かが宙にあるナックルを掴んだ、

「おまえのようなヤツを在らしめた過ち、私が正すっ!」

 掴んだ腕は白い陶磁器のようなスーツを纏っていた、声は女性、細くとも強い芯の声、『仮面ライダーイクサ』が自らのナックルを手に、ルナの頭側近に立っている。

「オカマの何が悪いの!」

 ルナが気づいた時にはもう既に遅い、顔面に直付されたナックルの一撃が轟く、思わずディエンドから手を放すルナ、ルナの後頭部のコンクリートは蜘蛛の巣のように割れている、さらに一撃、ルナは必死に触手を伸ばしてイクサに絡みつこうとする、さらに一撃、メモリのエネルギーが飽和してブレイク、ルナが生身の野獣のような男の姿を晒す、だが男はさらに生身のまま固め技を極めようともがく、さらに一撃、さらに一撃、さらに一撃、

「ありがとう。」

 ディエンドは首元を正しながら、立ち上がる。既に野獣のような屈強な男は四肢に力無く失神し、そしてイクサもまた立ち上がり、ナックルをベルトのバックルへと収めた。

「貴方を見て、女でも戦える事を知りました。」

 ディエンドとイクサが掌を合わせ、互いに頷いた。イクサは薄ぼんやりした大気の中へ溶けるように消えた。




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