2013年4月5日金曜日

6 スカルの世界 -Rの立つ世界- 第三部 その13





 包帯の女のサングラスが、今反射の翠で満ちている。それはクイーンのドームではない、スカルギャリーからのはちきれんばかりに漏れる光だった。

「待ったわ、私はずっとこれを待っていた。」

 ギャリーのボディが圧倒する光に圧し負けて左右に展開、輝くプリズム・エクシア・グリッターよりさらに光量を増し、その皮膚に0と1の光が羅列する一人の青年の影、明らかにリュウと呼ばれる男ではないその青年に包帯の女は、アスファルトに倒れる娘を放置して、半ば衝動的にギャリーへ上った。

「おふくろ・・・・なぜだ」

 包帯の女は最後にサイクロンのメモリをプリズムから抜き取って、ドライバーとともに息子に手渡した。

「それより来人、さあ、これをお使いなさい。」

「なぜ俺は、もっと一人になれないんだ」

 ドライバーを丹田の位置に配すると自動的にベルトが巻かれ腰に定着、

「なにを言っているの来人」

 息子が奇妙なのは目線を合わせないところからも明らかだ。だが包帯の女の狂喜はそれに気づこうとしなかった。

『サイクロン』

『アクセル』

 右半身が草原を捲く大気の翠、左半身がその大気と激しく摩耗する紅、仮面ライダーサイクロンアクセル。

「リュウの肉体を使って、今や貴方は両方のメモリーと限りなく100%の適合率になる。そしてあのプリズムを装着する事で、」

 言われるままCAは、設置された十字架を引き抜いて、斜めに背負う形で固定、そのまま軸だった部位を背から抜くと、

『プリズム』

 ちょうど直刀状の得物になる。『プリズムセイバー』。CAがその刃を掌で一度撫で、その動きを目で追い、表裏を返して眺め、徐に隣の女の腹に突き入れた。

「なに、を」

 機械的に引き抜くと鮮血が飛び、CAの右半身を染めた。剣を背に収めた掌で顔面の血を拭って眺めると、掌が母親の血が滴る程塗れていた。女は、震えながら辛うじてCAの身体にしがみついた。

「メモリに封じられている必要が無くなった。だから、運び役のアンタもお役御免という訳さ。喜べよ。息子の巣立ちの日だ。」

 その時であった、

『ジョーカぁぁ!マキシマムドライブ』

「ライダーチョップっ」

 耳に響く周波の高い破壊音、ギャリー周辺の光の膜が、一瞬で天頂まで縦に亀裂が走って、全周囲が一気に砕けた。亀裂の起点に立つのは仮面ライダージョーカー、その能力は人体の急所を見切り、物質の急所を見切り、そして勝敗の要衝を見切る。

「来たな。さっきのようにはいかん。」

 包帯の女を振り払って、ギャリー上からかなぐり落とすCA、

「てめえ!」

 落ちてきたのを人間と認め、慌てて落下を受け止めるジョーカー、黒幕の1人である事に顔を覗き込んで初めて驚く事になる。

 うぉぉぉぉぉぉぉ、

 CAが雄叫びをあげる、両の手をその身のセントラルパーテーションにあてがい、今、輝きの中でその幅を推し拡げていく、即ちその身が中央のクリスタル状の『クリスタルサーバー』を挟んで右に翠、左に紅、そしてその両複眼が海に鉛を沈めたそれのようなコバルトへ。『サイクロンアクセルエクストリーム』。

「まさか・・・・、自分の力だけで、」

 包帯の女はその神々しいまでの光に、手を差し伸ばした。

「形が変わった、でもやる事は変わらねえ。」

 2人をアスファルトへ寝かせ、賺さずスタッグを飛ばすジョーカー、

『ゾーン マキシマムドライブ』

 CAXに向かって、上角直線の軌道を爆進するスタッグ、セイバーで反応できているCAX、直前、コバルトの視界から突如消失するスタッグ、振り下ろされたセイバーが空を切った、

「瞬間移動であろうと今のオレは見切る、」

 ジョーカーは立ち上がり、利き腕の人差し指と親指をイジった。

「相棒、言う通りにしたぜ。」

 ジョーカーの態度に危機感を覚えたCAXの頬に風がそよいだ、吹いてくる右方向を咄嗟に振り返りセイバーを切り返す、ギャリー右側面、その全てが蜃気楼のように揺れている、それはCAXが初めて見る事になる次元のカーテン、徐々に黒い影が迫ってくる、カーテンを潜ったそれを見たCAXは、驚愕せざるえなかった、

「ギャリー!?」

 車上でもんどりうった、
 ほぼ同質量の衝突だった、
 左車線の無からパワースライドで図太い後輪をスカルギャリーに叩きつける、
 スカルギャリー、そのまま歩道を横滑りし探偵事務所壁面へ激突、めり込んだ、
 スカルギャリーは総6輪のカットスリック、だがそれは総8輪のブロック、ボディ周りも空力重視と剛性重視の相違があり、何より後方に伸びる14連エグゾーストとリボルハンガーとが違う。

「来たか、リボルギャリー、」

 ジョーカー、翔太郎の世界において使用されるギャリーが今、そのボディを左右に展開、沸き立った砂埃をかき消していく、

「あれは、・・・・・、そう、あの子が・・・」

 半死の包帯の女が降り立つ少年を見て愕然とする、

「そうか来たか兄弟。」

 頭を振ったCAの目撃した少年の手には、先の翔太郎のスタッグフォンと、ゾーンメモリが握られていた。

「相棒。おまえが言うもう1本のメモリは今この敵の女が握っている。かなり重体だ。」

 少年の出で立ちは、やや小さめのストライプのシャツに体格を隠す程ダブついた脚まで届く翠のパーカー、指先の出たグローブ、ぎこちない表情、本気で周囲を見ていない目つき、だが迎えたジョーカーはその男を指して相棒とまで呼び、作動しないダブルドライバーと2本のメモリを手渡した。

「翔太郎、しばらくあの男を食い止めてくれたまえ、ボクがここでこうして立つ限り、あの男はボクを死にものぐるいで消しにかかるだろう。」

「頼むぜ、フィリップ。」

 魔少年と言われるフィリップが今、翔太郎の世界から次元の壁を越えて、スカルの世界の風を肌で感じた。




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