2013年4月5日金曜日

6 スカルの世界 -Rの立つ世界- 第三部 その8





 私は、何とか脚の痺れを我慢して立ち上がった。
 なんでか、カッコツケル君が今黒い姿になってアキちゃんを連れ去った敵と戦いを始めた。カッコイイ氏がさっき倒されるのは見た。そこから離れる形で3人の色違いのライダーが戦って、

「危ない」

 今包帯の透明女が失神しているカッコイイ氏に近づいているのに、カッコイイ君は気づいてない。

「無様ね荘吉、あんな子を庇って。あの時、松井誠一郎を殺した時の、痺れるほどの非情な貴方はどこへいったの?私が取り付く島のない程のトゲトゲしかったあの時の貴方を見て、私は貴方の傍にいるのが頼もしくもあったけど、恐ろしくもなった。でも残念だわ。あの鋭利な刃物のような貴方でいて欲しかったのに。こんな無様な姿になって。今楽にしてあげる。」

 透明の女が銃を取り出した。そしてメモリを1つ差し込んだ。

『テラー マキシマムドライブ』

 私は眼を覆った。女は、カッコイイ氏に無造作に銃を撃ち放った。微動だにしなかったカッコイイ氏がか細い呻きを上げて身悶えしはじめた。なんて酷い事をする女だ。酷い女はそのままカッコイイ氏に何も言う事もなく背を向けた。

「ひどい」

 私は足を引きずってカッコイイ氏に歩み寄った。苦しいのに無理矢理唇を噛んで、それでも汗が噴いて震えるのだけはどうしようもなく止められないみたい。

「透明女、そこを動くな!」

 カッコツケル君が女を止めている間、とりあえずここ何日か着替えてない服の袖で汗だけは拭った。

「俺はいい・・・フミネを止めろ・・・・」

 魘されているように私に言ってくる、私のような無力な人間にどうすることもできないじゃない、

「私に、なにができるんですか」

「自分が欲しいなら」

 私の肩に震えた手を乗せようとして、滑って力無く垂れる。たぶん本人も意識して指したわけじゃないと思う、でも私はその指の先にあの海東大樹の持っていた銃、これから長く付き合っていく事になる『ディエンドライバー』が転がっているのが見えた。たぶん私が探偵事務所に置いていたものが、あの大きなガイコツ車が飛び出してきた時、いっしょに投げ出されたんだと思う。

「でも私は、」

 いつも士クンやあのカッコツケル君に守ってもらってきた、

「自分が決断しろ、」

 自分が苦しいのに、白目を剥いて苦しんでいるのに、私に、笑いかけてくれている。私は無我夢中で、ドライバーを拾った。

『ゾーン マキシマムドライブ』

 あの女が、赤いライダーに羽交い締めされたカッコツケル君に狙いを定めてさっきの銃を構えている、私は両腕で構えて、当たらないように祈りながら目を瞑って撃った、銃声なんてメじゃないくらい耳から背骨に響く震動がした、目をあけると土埃が入って痛くてまともに周りが見られなくなった、カッコツケル君がいなくなってる、あの包帯の女が銃を落としたのはなんとか見えた。

「何?この後におよんで」

「私に撃たせないでください!」

 銃を放したかった、でも放したら、たぶん私殺される、夢中で撃った、

「未知にも程がある、その銃もいったい」

 埃が収まって、私は目を真っ赤に腫らしながらなんとか開けた、

「私に撃たせないでって!」

 私は闇雲に銃を撃ち放った、でもその弾はあの女に届く前に弾かれた、どこからともなくウネウネとしたトイレでしか見ないような色艶の気持ち悪い腕が伸びて、先っぽに掌があって小指立てて弾の全てを弾いた、弾いてもう1本の腕が女を巻き付けて宙を浮かせて引っ張っていく、引っ張ったのはやっぱりカッコツケル君と色違いのライダーだ、その行く先はあのガイコツ車、ライダーの足元には私の知らない男とアキちゃんが寝そべっている。私は何度も何度も撃った。でもその蔓みたいな腕に当てても、そのトイレ色な体や顔面に当てても相手のライダーはビクともしない。

「あいつ、今顔撃ったわ、私の顔撃ったわ、あのアマ乙女の命を、ぶっ殺す!!」

 と完全に無理矢理喉締めてる裏声でトイレ色のライダーが喚いている。

「そんな事より、この場で来人の再生をする、これを差しなさい。」

 女は、トイレライダーにメモリを1本渡した、

『クイーン マキシマムドライブ』

 トイレが腰にメモリを差すと、ビカビカ光って全身から朧気な膜をドームの形に拡げていく、その亀の甲羅のような透明な膜は女とライダーどころか二人の立つガイコツ車のボディも全て包んでいく。アキちゃんも中だ。

「どうして、私は」

 いっぱいディエンドライバーを撃ち込んだ。でもその全てが虚しく光の壁に弾かれていく。撃ち疲れて、爪の間に油臭い黒ズミが溜まっているのに気づいて、止めた。

「私には、無理です。」

 息の乱れが全然収まらなかった。
 ドームは光輝いて、中はもう見えない。




0 件のコメント: