2013年4月5日金曜日

6 スカルの世界 -Rの立つ世界- 第三部 その10





 クイーンの天球がスカルギャリーを覆った内側、ギャリーはボディカウルを左右に展開している。台車の上では既に再変身したCAがその片腕で倒れる姉、アキコの頬を、ルナ、包帯の女が囲む中で撫で続けている。そのアキコには、いくつも配線が繋がれ、ギャリーに設置された『プリズム・エクシア・グリッダー』に接続され、翠のロゴの羅列がアキコの体躯から配線を伝って蓄積されていく。

「サルベージはもうすぐ終わる。そうだな、肉体の年齢は30、身体的な絶頂期に設定する。それでいいか、おふくろ。」

 そうしてアキコの光がすべてプリズムの内に吸い上げられ、スロットの一つが光彩を放った。

「映像通りの理想の貴方におなりなさい。精製が完了した、来人。」

『クレイドール マキシマムドライブ』

 包帯の女はプリズムのスロットへ立て続けにメモリを差し込んでいく。

『タブー マキシマムドライブ』

『テラー マキシマムドライブ』

「ルナ、この子をギャリーの外へ。」

「私オンナ触んのはもうまっぴらだわ!」

「貴方の命は私が。」

「・・・、その代わり外の女、私のスキにするわっ」

 支離滅裂に言いながら、腕だけを蛇がうねるように伸ばして、ルナは未だ気絶するアキコに巻き付け抱えた。

「私の方がおっぱい大きいわ、私の方が、おっぱい大きいわ!」

 ギャリーから飛び降り、アキコを乱暴に地に投げ置いたルナは、自ら張った壁を透過して外へ。

「ジェンダーの怨みは深くそしてバカバカしい。リュウ、貴方もこの街への深い怨みを晴らす時が来たわ。」

「さあ、悪魔の儀式の始まりだ。」

 高揚するCAのバックルから2本同時にメモリを引き抜く包帯の女、CAはたちまち除装され中から青ざめた青年の顔が露呈する。そんな立つのもやっとの男を目に止めず、最後に空いたスロットへメモリを差す包帯の女だった。

『サイクロン マキシマムドライブ』

 全てのメモリを差し込んだプリズムの十字架が七色の光を放って、降車しながら見つめる包帯の女のサングラスに反射する。

『マキシマムドライブ マキシマムドライブ マシキマムドライブ・・・』

 青年一人残してボディカウルが閉じ、スカルギャリーのフロントガラスから2条の光が放たれ、クイーンの壁に乱反射して天球内外が文字列の光彩で満ちた。

「ようやく、これであの男から奪われたものを取り戻す事ができる。」

 女の声が上ずっていた。




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