2013年7月9日火曜日

6 スカルの世界 -Rの立つ世界- 第四部 その5





「いくわ!」

 ルナが両腕をあり得ない長さでゴムのように伸ばして怪物の首元に巻き付けた。

「りゃぁぁぁぁ」

 その2本の綱のように張った腕を、ジョーカーの頭を飛び越えて乗るのはファング、高速で綱渡りしていく、

「続くぞ、翔太郎、」

「おうよ、」

 続いて駆け上がるジョーカーとスカル、
 上空ではヒートがメタルを抱えて飛翔、頭上まで達して、メタルを落とす、

「うぉりゃたぁぁぁ!」

 落下の勢いと全腕力を込めたロッドの先端から火が噴く、その突端が怪物の眉間に刺さり、着地したメタルは二度、三度同じ眉間への攻撃を繰り返す、

 ホッッッォォォォ

 ビル風のような咆吼をあげる怪物がその唯一飛び出した巨大な掌でメタルを弾き上げる、
 さらに眼光で攻撃しようとメタルに狙いをつける怪物のその顎にあたる位置へ、ファングとスカルが跳躍して切り込みダブルライダーキック、怯んで像が歪む怪物、

「そうか、力合わせられるかい、」

 その後方、ルナの腕からまるでスカルの影のような形でメタルへと跳躍するのはジョーカー、メタルの高度を超え、蹴撃の構えで降下、

「おいマッチョ、足合わせろ!」

「おおともさ!」

 メタル、ジョーカーに足を向け反り上がる形で直立、頭は風の怪物に向け、ジョーカーのキック力を両足に受け突撃、それはさながら金属の弾丸、
 貫通、風穴をあけるメタル、
 風の巨体がビル風の呻きをあげ大きく仰け反る、

「総攻撃だ」

 不動だったサイクロンの左右に着地するのは先のジョーカーとヒート、そして駆け寄ってくるルナとトリガー。ヒートとルナの両肩に手を置くサイクロン、トリガーはマグナムをジョーカーの肩を支えに構える、
 巨大な三日月が風に舞って飛ぶ、炎の渦が果てしなく直線に撃たれる、そしてトリガーマグナムが敵の急所へミリ単位の精度で放たれる、

 ホフォォォォォ

 ついには倒壊する怪物、連鎖して倒壊しガラスと瓦礫の芥子粒になるビル群、路面が一気に網目が走り、未だ開発途上の空き地に亀裂が走る、

「やったか」

 ジョーカーがマキシマムを仕掛けようとする、だがサイクロンが肩を掴んだ、

「待て、翔太郎、まだだ」

 怪物によって倒壊したビル群が、いずこからともなく風が呼び込まれ粉塵となって周辺を渦巻き、ついには怪物に吸引されていく、メタルの空けた穴も、全弾発射の抉れた痕もみるみる内に修復していく。それどころか1本だった腕が6本無作為に生える、生えた腕が同時に撓る、撓った先端が一瞬視界から消える、風の音が唸る、周辺全てに衝撃波となって伝わる、これが、風の怪物最大の攻撃、
 メタルが金切り声で裂かれる、ヒートが女の声を出してしまう、ルナが野太い声で叫ぶ、トリガーはあくまで無言だった、

「翔太郎だけでも」

 サイクロンが衝撃波の正体を瞬時に見抜いて、唖然とするジョーカーに向かい合わせの形で立ちはだかる、

「フィリップどけ!」

 だがジョーガーの動きではそのかまいたちにもサイクロンの挙動にも間に合わない。
 爆風が2人を襲う、
 メタルも、ヒートも、ルナもトリガーも悶えながら光へと拡散、あれだけいた仲間がたった半瞬で消え去った。
 そう、2人を残して。

「おまえたちは、まだ、生きてるんだろ?」

 ジョーカーを庇ったサイクロンのさらに前面、白きライダーのその腕の牙が、半分に折れた。

「ファング」

「これだけは忘れるなフィリップ、アンタ意外と家族に愛されてるぜ。」

 そして光となって消えた。



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