2013年7月9日火曜日

6 スカルの世界 -Rの立つ世界- 第四部 その6





「なんでだ、オレ達の全力だった。それを一瞬でオレ達の方が・・・・・」

「奴は風都の風を吸収して立ち上がった。奴は風都に守られている。」

 フィリップは言って後悔した。翔太郎は愛すべき風都が敵に荷担していると知ってどれほど落ち込む事だろうか。その漆黒の仮面からフィリップは表情を読み取る事ができなかった。

「そうだよな、」

 その時フィリップの想定を、凌駕するただの凡人、

「なに?」

「そうだよフィリップ、風都ってのは、街の住人になら誰にも良い風をくれるんだ。たとえ街を泣かせる住人だったとしてもな。」

 この姿が見られるからこそ、この大いなる凡人の傍にいるのだ。

「だからこそ、」

 その2人に骸のライダーが言い放つ。男の胸から腹にかけて溝のようになった綺麗な傷な刻まれていた。その背後にはディエンドがいる。

「だからこそ、街を泣かせる奴を許さない探偵が要るんだ、この街にはな。来るぞ。」

 風の怪物が先の最強の攻撃波を再び放とうと12本に増えた腕を振り上げる。

『KAMEN RIDE KANTOUZYUUITIONI』

 かまいたちが放たれる寸前、3人のライダー達の前に、11人の影が肉の壁となって立ちはだかる、スクラムを組んで先のライダーを一瞬で消し去った攻撃を大量の血飛沫をあげながらも耐え、裂けた皮膚が即座に回復していく。

「ディエンド、切り札はまだ持っているね?」

 サイクロンが言う。

「もちろん」

 とまた応えるディエンドが取り出したのは3枚、

『FINAL FOAM RIDE sususuSCULL』

「オレか。」

「痛くしないから。」

 背中にむけてドライバーを放つディエンド、スカルが手足を窮屈に曲げ、背から腰を小さく丸める、巨大な頭蓋となって宙を浮かぶスカル、

『FINAL ATTACK RIDE sususuSCULLuu!』

 ドライバーから舞い上がるカードの奔流に乗ってスカルが高く高く打ち上がる、

『FINAL ATTACK RIDE dadadaWyuyuyu!』

 さらにドライバーに装填すると、サイクロンとジョーカーが天高くスカルを追随、追いつき追い越し蹴撃の体勢からサイクロンは右足、ジョーカーは左足をそれぞれスカルに接着、降下、

 FuuuuuuuuuOoooooooooo

 対して圧倒数の腕を生やす風の怪物、この風都の怪物の眼が異様に光り、全ての腕が、3人のライダーめがけて集約する風都の風全てをさらに集中させる、果てしなく直線の細い渦となる、

「耐えろ」

「おやっさんもな」

「風都がヤツを味方している。このままでは。」

「男なら耐えろ!」

 スカルの頭蓋が斬圧で切り刻まれ、だがなお押し切られる事なく宙で静止、

「がんばって仮面ライダー、」

 威嚇するも微動だにせず攻撃を3ライダーに集約する風都の怪物、仮面をつけながらも弱音を吐いた、ディエンドの頬は仮面で覆われ、その微風の変化に気づかなかった、

『がんばれ』

『がんばるでやんす』

「フィリップ、風だ、耳鳴りがする」

『鈍らせんな、がんばれ』

「これは?・・・・風に乗って、ボク等がブレイクしたメモリの記憶・・・?」

 信号や街灯に電力を送る小型風車が逆回りする、

『貴方達の気持ちは本当に嬉しかった、負けないで』

『がんばって、大好きな翔ちゃん』

「ああ、その声だフィリップ、」

「マネーやアロマノカリスまで聞こえる、」

 海に立てられたビルの緊急蓄電用の大型風車も逆回りし始める、

「がんばって、仮面ライダーなら、がんばって。」

 ディエンドも祈った。

「フィリップ、風だ、風都の風がっ!」

「ボク達に力をっ!」

 ついには科学法則を無視した風の集約が、怪物の反対方向から起こる、衝突する同じ風都の風と風、均衡が崩れる、頭蓋が紫炎を放って落下、2人のライダーの威力も相まって徐々に加速する、敵の急所である眼球を狙い、風都の風を相殺した、強靱な魂が貫いていく、

 Fooooooooooooooouuuuuuuuuuuuuuuu

 貫通する眼、
 紫炎の骸が眼球を風船のごとく破裂させ、中から生身の男の肉体が露呈し、爆圧のまま推し込められる、その四肢の先からは0と1の羅列が漏れ出し、肉体の形骸が徐々に崩壊していく。

「これが、死か・・・・・・・」

 肉体もその無邪気な安堵も全てエメラルドの文字列となって拡散。
 余剰の熱量が大気を爆炎で染める、3人のライダーの影を覆い隠す、ディエンドはあまりの爆風に仮面の顔を手で守った、
 風が一気に収まる、
 熱が一気に引き、再び海岸一帯へ微風を呼び込んでいく、

「雲1つ無い、風都では珍しい青空だ。」

 着地する両者の脚、
 そこは偶然にも半壊した探偵事務所前の路上。骸のライダーはまず帽子を脱いで胸に置き、天を仰いだ。

「フィリップ、奴は、」

『ああ、園咲来人はボクと同じデータ人間の肉体だった。メモリブレイクは即ち彼の、』

 右の明滅は、心無しか暗い、

「ああ、地球の記憶に還ったんだな。」

 左の明滅は、ただスカルと同じ天を仰いだ。

「私はまだまだ、様になってないよね、あの2人みたいになれるだろうか。」

 駆けつけたディエンドは、強い日差しに長い影を作るライダー達の背中を眺めていた。




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