2013年7月9日火曜日

6 スカルの世界 -Rの立つ世界- 第四部 その2




 フィリップがギャリーを回して風都タワー直下にたどり着いた時、既に翔太郎はCAが墜落した瓦礫の山を散策していた。

「今のところ収穫はこれだけだ、相棒。」

 翔太郎がフィリップに向けて投擲したのは、1本のメモリ。フィリップが調子を見ると、

『クレイドール』

 と正常に機能している。

「驚きだ。あのエネルギーの衝突の中、この世界のメモリは、ボクらのより恐ろしく頑丈に出来ている、」

 翔太郎の脳裏に、おぼろげに直感が働き始めた。頬に当たる風の強さもやたら気にかかった。

「他のメモリで生きてるものがあるのか、」

 フィリップが自分の顎を撫でた。
 彼は、エターナルの直撃を食らった、
 半ば自身のマキシマムごとその身に受けたはず、
 彼はデータ人間、マキシマムを食らうという事はその身がデータの飽和を迎えるという事だ、
 エターナルが彼が絶命する前にその機能を停止してしまったとしたら、
 彼が吸収したメモリは甚大だ、
 もし喪失しつつあった彼に、マキシマムのエネルギーが逆に彼の生命力を醸成したとしたら、

「たとえば、」

 フィリップの声は珍しく上ずっていた。

「「サイクロン」」

「その通り!!」

 爆発、
 瓦礫の中から光が一瞬飛び、次いで巨大な破片が2人を爆風と共に襲う、劈く耳に圧倒量のボリュームで爆音が響き、それに紛れて人の奇声が錯覚でなく聞こえてくる、

「お前達は失敗したぁ!!」

 そこに未だ輝きを失わず、一糸まとわぬ出で立ちで立つ男の姿が、傷も無く、むしろ産まれたてのような活きた細胞で満ちた肉体、

「生きてたか」

「園咲来人」

 爆風収まってなおその眩しさに目を覆う探偵2人、

『サイクロン』

「お前達がオレを倒す為に使ったエネルギーは全て、プリズムに残っていたエネルギーと共に全て、そう全てデータ人間であるこのオレの体内に吸収されたぁ、このエネルギー、そして適応率100%のメモリを直差しする力で、オレは、人間を捨てるぞぉっっ」

 刺すのは後頭部、下垂体に直接刺さる角度、
 同時に肉体がデータ処理され変貌していく、翠の染みが行き渡り、渦の中に見え隠れする眼、渦が拡大して瓦礫という瓦礫が上空に舞い上がり、まるでその者に寄り集まるよう、渦は高く高くタワーよりも高く立ち上り、ついにはタワーすら粉々にしてその身に舞い付けてゆく、

「デケえ」

 帽子を抑える翔太郎、

「50メートル以上はある、」



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